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17:救出活動

 声をかけてきたのは、私が唯一しゃべったことのある冒険者の彼女。そして、ようやく名前を思い出した。彼女はウェルメンだ。


「そりゃ、下でざわざわしていたら気になるよ。で、何かあったの?」

「どうも、この宿に寝泊まりする冒険者パーティーがレッドウルフに襲われたらしい。ひとりは命さながらに逃げてきたが、仲間はみんな襲われて身動きが取れないらしい。私でも追い払うのが精いっぱいなのに、集団で襲われたら、いくら何でも無茶よ」

「何体くらいで襲われたの?」

「確認できただけで5体。前後左右から襲われたのと、不意打ちで後方からさらにやられたと」


 5体か。あの体高の魔獣が同時に襲ってきたら恐怖でしかないな。私だったら倒すのをあきらめて


「で、今はどういう状況なの?」

「私も詳しくはわからないけど、どうやら口調は仲間を助けてほしい。ということらしい。あの子が泣きながらだから、よく聞き取れたものじゃないけど、ニュアンス的にはそうらしい。ただ、申し訳ないけど森の中となると、さすがにだれも行きたがらないよ。こんな夜。魔獣が湧き出している森なんて」


 私もそれには同意だ。夜に外に出ないと決めたのは、街の外を魔獣たちがうろついているって聞いたからだ。町の中なら安全なんだろうけど、そうじゃないなら私も行きたくない。ウェルメンには完全同意だ。


「今回ばかりは、運が悪かったわね」


 ウェルメンさんは、もう残念そうな顔で泣きじゃくっている女の子を見ていた。

 私としてもどうにかしてあげたいけど、真っ暗な中、森の中に入るのは怖い。

 それに、レッドウルフを倒したことがあるとはいえ、2体だけ。5体に囲まれている。こうなると、私でも対処できない。


「誰か、レッドウルフを倒したことがあるやつはいるか?俺と臨時パーティを組んで、助けに行きたい」


 声を上げたのは大きな男。体格はいい。山にこもっていそうな男だ。

 そんな男が臨時パーティを組んで助けに行きたいと言う。そんなこと、できるのだろうか。


「異議あり!申し訳ないけど、こんなに夜が更けて、ただでさえ危ない森の中に臨時パーティを組むのはさらに危険を呼ぶわ。私はあなたが誰だか知らないけど、あまりいい提案ではないと思う」


 ウェルメンさんが冷たい言葉を沈黙の中に放った。


「十も承知じゃ。じゃが、喧嘩別れしたとはいえ、昔の仲間がいる。なんとかして助けたいんじゃ」


 なるほど。固執する理由はそこか。それなら、手伝ってあげてもいいかな。


「わかった。それじゃあ、私が行こうか?」


 私がそういうと、ウェルメンさんは、驚愕の表情で私を見た。


「あなた芸者でしょ!?あなたがレッドウルフなんて倒せるわけないじゃない!」

「ウェルメンさんは黙ってて。昼間に2体だけだけど、襲われた分を倒したから。たしかに私は芸者だけど、多少なり魔法は使える。少なからずあなたに協力できると思うわ」


 公にしていなかった話を公にしても、周りの反応は薄い。笑っている人すらいる。それでもかまわない。私は私ができることをしたらいい。


「ありがてぇ。多少でも力を貸してくれ」


 この大男、根はやさしい奴だな。周りと同じで笑うかと思っていたけど。ただ、それほど切迫している状況なのかもしれないね。


「アージャ、お前も頼めるか?お前の力もいるだろう」

「……わかった。その代わり、危険だと感じたら、すぐに逃げさせてもらうからな」


 もちろん、私もそのつもりだ。人の命より、自分の命が大事に決まっている。


「わかっている。嬢ちゃんもそのつもりでいいよな?」

「そのつもりよ。あなた名前は?私はミネコって言うわ」

「助かる。恩に着る。俺はロッカという」

「覚えたわ。あなたはどういう戦い方をするの?」


 ここから話はトントンと進み、大男はロッカ、大きな剣を使うらしい。そして、もう独りはアージャ。この人も大きな剣を使うらしい。まぁ、それは後でわかることなんだけどね。


「あともう一人ほしい。できれば、周りを照らせることができる人がいいんだが……」


 ロッカはそういって周りを見渡すものの、誰も手が上がらない。それもそのはずだろう。私が特異なだけだ。そんなことはわかる。


「それなら、私が行くわ。一応、ホーリーは使えるし。彼女が行くなら、少し闘い方に興味がある。彼女に守ってもらえるなら、ついていくわ」


 私次第ということか。でも、灯りが使える人は本当に欲しい。一応、私もよく考えれば、原始的な方法で周りを照らすことはできる。だけど、同時に2つの魔法が使えるかどうかわからない以上、あまり無茶はしたくない。

 その中でも、バリアとの併用をできることは自分の身をもって分かっている。


「嬢ちゃん、そんなことは可能なのか?」

「やるだけやってみるよ。そのかわり、恨みっこなしだからね、ウェルメンさん」

「あぁ。レッドウルフに氷を当てることはできるわ」

「だってさ。ロッカさん、文句ない?」

「あぁ。それならそれでいい。それじゃあ、キルシュ、場所を教えてくれ」


 人ごみでよく見えなかったけど、この子も魔法使いなのか。いかにも。という恰好をしていて、正直、どういう魔法をつかうのか気になるというのもある。


「嬢ちゃん、報酬はどうする?」


 ロッカさんは何を考えているかわかんないけど、人の命がかかっている以上、そんなことを言っている場合じゃない。


「それはあとにしよう。もたもたしているうちに食い殺されるかもしれないよ」


 別に威嚇するつもりじゃなかったけど、食い殺されると言った瞬間、キルシュちゃんの顔が引きつった。


「ギルドに通さないと報酬はでねぇぞ」

「あんた、お金のために人助けするの?少なくとも私にそんなつもりはないから。ウェルメンさんは?」

「そうね。私も人の命が大事だと思うし、今は報酬なんてどうでもいい。彼女の言う通り、早く助けに行かないと、私たちに行く意味がなくなるわよ」

「あとで文句言っても何もしねぇからな」


 そんなことはわかってるけど、お金より命だ。物事がわかっている状態で、助けに行かずして、訃報を聞くのは胸糞が悪い。

 そう思って私が人ごみをかき分けようとすると、周りがスルスルっと避けるように道を開けてくれた。


「お、お前、何者だよ……」


 そんなこと言われてもね……。私の強気な態度にビビって開けてくれたのかもしれない。まぁ、わかんないよね。

 ウェルメンさんも少しビビり気味で私を見ているし。


「そんなことは後で聞いたらいいから行くよ」


 開けてくれた道を堂々と行くように歩き出すと、さらに私の歩く道が広がる。

 どうやら、強気な私にビビっているみたい。ランクが低いのかな。なんて思いながら、宿から先に出て一人で先に南の森へと向かう。

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