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14:ルール

「それに、広場ってここから微妙に離れているでしょ?報告があっても、すぐに駆け付けられないわけよ。駆け付けても、いつももぬけの殻。パフォーマンスが短いからすぐにどこかに行ってしまうのよね。見つかったら報告が上がっていた分すべて納めさせるってうちのギルマスが言っていたっけ」


 どうやら、ただならぬ意気込みのよう。私が無許可でやって問題を増やすよりも、少し様子見して、いろいろ許可をもらう方がいいかもしれないな。

 でも、どうして、わざわざ税金のかかる申請をしているんだろう。ついでに聞いておこうか。


「申請している人っているんですか?」

「もちろんですよ!この国の税金のためというのも一つありますが、ギルドランクが上がりやすいというのも一つにあります。ランクが上がると、最初の日にご説明した通り、ランクが上がるにつれて優遇されるものが増える。それを目指して頑張る。というのもあります」


 そんなことを言っていた気がする。

 ランクが上がれば、いろいろと優遇されるって。でも何を優遇されるんだろう。


「最初のときも思ったんですけど、優遇されるって、例えばどんなのがあるんですか?」

「そうですね……。一番は仕入れのことじゃないですかね。もちろん、ランクは信用という意味もあるので、ランクが高ければ、いいものが優先的に仕入れることができる。という面が商人にはありますね。芸者さんは、広場の優先順位ですかね。もちろん、早いもの順ですけど、ギルドもお人好しでやっているわけではないので、申請書を同時に出されてしまうと、ランクの高い方を、絶対とは言いませんが、優先することがあります」


 なるほどね。それなら、ランクを上げておくことに越したことはないか。


「もちろん、無申請でやってももらっても構いませんが、お金にならないし、功績もつかないんで、いいことはなにもないかと。あっ、そうだ。思い出した。あと、広場の許可書がない場合、憲兵隊に事情聴取されることもあるんです」

「えっ?そうなんですか!?」


 これに関しては初耳だ。まぁ、この世界で聞くもの見るものすべてが初めてのことが多いんだけど……。


「憲兵隊に事情聴取されて、無許可だということが分かると、稼いだお金は全部没収という形になるので、重ねて覚えておいてください」


 そう考えたら、あれだな。放浪雑技団、だったっけ?やりたい放題だな。


「だから、放浪雑技団は、この街で芸を披露することは意味ないと思うんですが、あのしつこさはなんなんでしょう。本当に」


 ルーイさんは、私のことをほったらかしにして、自分の資料を見ながら淡々と一人でしゃべり続けていく。

 放浪雑技団はどうやらギルドからすれば、悩みの種というところか。私が解決できるなら、やってしまいたいけど、まぁ、難しいだろうな。私が広場を独占するようにパフォーマンスができるなら、放浪雑技団は追い出せるんだろうけど。


「あっ、ごめんなさい。つい熱が入っちゃって……で、ミネコさんのご用事でしたよね。どんなことですか?」


 ハッとしたように我に返って「私に何でも聞いて!」と言わんばかりの瞳で私を見るルーイさん。そして、私の用件を聞こうとする。


「あっ、えっと。さっきの雑技団の話が絡んでくるんですけど、広場で芸者として活動したいなぁって思っていたんですよ」


 そういうと、ルーイさんは、思い出したように手をポンと打った。

 まぁ、あれだけ登録者がいると、ルーイさんが全員を覚えているわけがないか。


「もちろん、ギルドに届けていただければ、調整のうえ許可は出します。それが商いだっていう人も少なからずいるので。ただ、こちらで広場の使用は管理します。いろんな人が使うとなると、トラブルのもとになるので。ですが、芸者を商いにしている人は、ほかのお店にアルバイトに出ていると聞いていますが、その点は大丈夫ですか?」


 ここでも芸者は一攫千金といったところなんだろうか。正直、私も、元の世界だとそんな感じだったしな。まぁ、何とかなるとは思っている。

 それに、私には秘密があるしね。大丈夫だろう。


「はい、大丈夫です。おいしいバイトは見つけてあるので」

「バイト?ですか……。まぁ、どのようなお仕事をするにしろ、芸者だけでは生きていくのは難しいということだけ先に申し上げますね。とりあえず、申請書をお渡ししますので、もう少しお待ちください」


 そう言いながら立ち上がって申請書を取りに行くルーイさんの後ろ姿を見ながら、今後の生活をどうしていくのかを想像する。


 ……やっぱり、理想は、歌って踊って、やりたいことをやってお金を稼ぎたいよね。もちろん、元の世界でもいろいろバイトをしながら生活をしている。

 もちろん、甘くないことも知っている。でも、やりたいと決めたことだから、ボロボロになるまでやり遂げたい。どんな形であろうとも。

 


「それじゃあ、これが申請書です。必要事項を書いて、また私に持ってきていただければ手続きはしますので」


 渡された紙には、『名前』『職業』『披露する芸』の3項目だけだった。

 これだけなら、私のできる幅はものすごく広いはず。

 だって、『歌・舞』とだけ書けば、いろんなジャンルを歌って踊ることができる。

 それに、元の世界だって、いろんなジャンルを踊って歌って、アイドル活動をしていた。問題はないはずだ。あとは、どれくらいの音楽が知れ渡っているか。

 その問題さえクリアしてしまえば、芸者として生きていくことができるだろう。

 そんなことを思いながら、私は、アイテム袋に申請書を入れて立ち上がる。

 すると、ルーイさんは「書いていかないんですか?」といった目で私を見る。


「ありがとうございます。ルーイさん。とりあえず、芸者としてまだまだ準備があるので、街を回りながら揃えます。そのために、ちょっと今日は。揃い次第、提出に来ますから」

「そうですか。わかりました。お待ちしております」


 私がルーイさんにお礼を言ってからギルドを出た後、少しお高めな服を売っていそうなところを街の片っ端から探す。

 この世界に連れてこられた時の真っ白のライブ衣装でもいいんだけど、それだけだと、破れたり汚れたりした時に替えが利かない。そうすることを防ぐためにも、同じようなライブ衣装が欲しいというのが本音。


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