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9.雑技団

「へぇ。こんな感じなんだ」

「本当に使ったことなかったんですね。私そういう人を初めて見ました」


 まぁ、田舎出身だからね。なんて返して、また街をぶらりと歩いていく。


「あとは何が見たいですか?」

「そうだね……」


 歩きながら考えていると、広場のほうから賑やかな音色が聞こえてきた。音がする方を見ると、20人ほどの集団が見えた。


「これって何?」

「あぁ、最近、街で話題の放浪雑技団ですね。私も、聞いた話でしかないんですけど、いろんな街や国を旅しながら、そこで芸を披露して旅費を稼いで生きているって聞いたことがあります」


 雑技団か。これって街の許可をとっているんだろうか?取っていないようだったら私も真似してみたいんだけど。


 雑技団は、街の広場を広々と使って、笛を吹きながら馬を走らせたり、馬車の屋根に上って周り車をしたり。

 街の人の中には、途中でおひねりという形で銅貨や銀貨を投げている人さえいる。

 しかも、格好を見れば、雑技団というより、ピエロという方がぴったりだな。


 そんなピエロたちは、15分くらいの短いパフォーマンスを見せた後、周りに散らばったおひねりを拾い集め、観客に礼をして去っていく。


「いつもあんな感じなの?」

「さぁ、私にはわかりません。私はずっとお母さんたちのお手伝いをしていたので。いつやっているのかも、いつ街を去るのかも謎の集団です」


 なるほどね。それすらもわからないってことか。明かしているのは、音が鳴るとパフォーマンスするというところだけか。

 それくらいなら私にもできるかな。ただ、やっぱり、音楽は欲しいな。


「ねぇメイランちゃん、このあたりで笛とかギターとか音の出るものって売っていたりする?」


 そう聞くと、メイランちゃんは、初めて聞く単語があるのか、「ぎたー?」と首を傾げた。

 どうやら、この世界でギターの存在はないらしい。それなら、自作すればいいか。何回か分解して組み立てたこともあるし。大体の仕組みはわかっているつもりだし。


「なんでもない。気にしないで。とりあえず、ほかのお店も教えてくれない?」


 ということで、街をだいたい1周くらいして、いろんなところを教えてもらった。

 街の北側には、少し高台になっていて、そこに私を追い出した城があり、さらにその北側には高い山脈が連なっている。

 街自体は、東西に延びていて、南側には貿易ギルドと冒険者ギルドが並んでいるというような状態。

 そして、街の居住スペースとしては、高い壁で覆われている範囲すべて。お金があれば、貿易ギルドを介して、土地を買うこともできるよう。まぁ、今はそこまでは考えてないかな。それより、手持ちのお金をどうにかして増やさないといけないし。


 とりあえず、振り回すようにして街を案内してもらったらだいぶ疲れちゃったな。

 宿に戻って、晩御飯でももらおうかな。


「メイランちゃん、振り回すようにして付き合わせちゃってごめんね」

「いえいえ。私こそ楽しかったです。久々にいろいろ回れたというか、とにかく楽しかったです」


 そういうメイランちゃんの顔はるんるんだ。久しぶりの外出でよほど楽しかったようだ。


「ミネコさん、お客さんなのにごめんなさいね。無理やりメイランを外に連れ出すような真似をして」


 中から出迎えてくれたのはメイランちゃんのお母さん。ちょっと申し訳なさそうにしているけど、私はそんなこと少したりとも気にしていない。


「気にしないでください。私もメイランちゃんにいろいろと教えてもらっているんで」


 正直、教えてくれる子がメイランちゃんみたいな素直な子に案内してもらえて助かったというのも本音だし。


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