8.アイテム袋
どうやら、普段からひいきにしているお店に連れて行ってくれるようだ。
「こんにちは~。アルテーノさんいます?」
「なんだ、メイランか。もう袋を破ったのか?」
中からは、おそらく60を過ぎたおばあちゃんが出てきた。この人がアルテーノさんってことでいいのかな。
「違うよ。お客さん。ミネコさんっていうんだけど、アイテム袋を買いたいんだって」
「そうかい。それなら、あんたのアイテム袋を先に見せてごらん。どんな形が合うのか見てやろう」
そういって、手を差し出すけど、私から渡せるものなんて何もない。怪しまれずにやり過ごす方法といえばひとつ。田舎から来たといえばそれでやりすごせる。
「すいません。私、田舎から来たもので、アイテム袋の存在すら知らなかったんです。なので、どんな袋があるのかなって思って」
「ほぅ。今時の子にしちゃぁ珍しいね。アイテム袋なんてみんなが持っているものだと思っていたよ。とりあえずついてきな」
ちょっと内心で「流行おくれの娘で悪かったね」なんて思いながらも、おばあさんについていく。
「何に使おうとしているんだい?」
「用途とかあるの?」
「いいや。基本的になんでも入るさ。だけど、冒険者なら、魔獣を冒険者ギルドに売るときは、容量が多いほうがいいだろうし、逆に、商人だと、屋台じゃない限りはそこまで大きくなくていいからね。あんたはどっちなんだい?」
う~ん。正直に言って、まだ何も考え切れていないんだよね。どうやって生きていくか。今はこうしてついてきてもらっているけど、いずれは自立しないといけない。
どちらに転んでもいいように、容量が大きいのを買っておくか。
「正直に言って、田舎から無理やり連れてこられて捨てられようなものなんで、どうしようかなって迷っているところです。なんて、どっちに転んでもいいように、一番大きいのを見せてもらっていいですか?」
私言葉に大きく驚くおばあさん。だけど、小さい袋をもって冒険者です!なんていってもたぶん、しらけてしまうだろう。
「あんた、正気かい?……まぁ、あんたがそういうなら、かまわないけどさ、お金は持ってんのかい?」
お金なら、たっぷりもらった迷惑料が残っている。とりあえず、価格帯と相談だ。買うのはそれからだ。
「ちょっとは手持ちのお金と相談しなきゃだけど、見せてくれることぐらいならいいでしょ?」
「あぁ、わかったよ。ついてきな」
そういっておばあさんは、私を店の奥へと連れていく。ついでにもの見たさもあるのか、メイランちゃんもついてくる。
「正直に言えば、値段や大きさなんてピンからキリまであるさ。まぁ、うちで扱っているものであれば、だいたい金貨10枚でミドルウルフが15匹くらい入る。小魔獣で例えるなら、レッドバードが100匹ほど、ミニチュアウルフなら60匹ほどかな」
えっと、門番の人の話だと、ミニチュアウルフとレッドバードって、ビギナー冒険者の狩りが良く行われるって言っていたっけ。で、ミドルウルフは、中位種って言っていたっけ。
ただ、正直、何が何体入るなんて言われても、実物を見ていない分、あまりピンとこない。ここは住民に聞くほうが速いか。
「例えばだけど、メイランちゃんがさっき貿易ギルドで持っていた袋だとどれくらいなの?」
そう聞くと、キョロキョロと周りを見渡すメイランちゃん。必死に自分が使っていたのと同じくらいのものを探しているのだろうか。
「あった。あれですね。銀貨9枚って書いてある」
「あれかい。あれなら、ミドルウルフが3体、レッドバードで30匹、ミニチュアウルフ15匹が限界だけど」
「そうですね。でも、大事な小麦がたくさん入るんで、お母さんがいつも渡してくれます」
「そうかい。まぁ、お前さんのとこは肉より小麦をよく使っているもんな」
「はい。それに、ウルフの肉は、お父さんが仕入れるので、私はよくわかりません」
なんだか、気が付けば、私はかやの外にされている。私の買い物のはずなんだけどなぁ。なんて思いながらも2人の話を聞いていた。
ただ、なんとなくわかったことといえば、さっきおばあさんが口にした3種類の魔獣は平民でよく食されるものらしい。
そういえば、昨日の晩御飯とかでもレッドバードとかミニチュアウルフは出てきていたと思う。
そう考えれば、食べるのに抵抗はない魔獣ということでいいのかな。
「おっと、悪いね。メイランと話し込んでしまった。で、どうする?アイテム袋は」
「そうですね。とりあえず、さっきメイランちゃんが言っていた銀貨9枚のアイテム袋でいいかな。よくわかんなくなったし、とりあえずね。また小さいなって感じるようだったら買いに来るよ」
正直に言って、どの魔獣がどれくらいのサイズかというのがわからない以上、貿易ギルドで見たメイランちゃんの袋を参考にするのがいいと思っただけ。私も言った通り、小さいなって感じたら、また大きいのを買いに来たらいいだけだし。
「そうかい。それなら銀貨9枚ね」
「それじゃあ、金貨1枚で」
「ありがとうね。それじゃあ銀貨1枚返して、あと、これがアイテム袋ね」
「ありがとうございます。それじゃあメイランちゃん、行こっか」
私は、おばあさんから買ったアイテム袋に自分のお金が入った袋を入れると、おばあさんにお礼を言って私たちは店を出る。
もちろんというべきなのか、お金の入った袋はアイテム袋の中に一瞬で吸い込まれるようにして入っていった。




