最強ギルドへ殴り込みをかけたのは、ギルドマスターの◯◯◯◯でした。〜いい加減帰ってこい馬鹿野郎〜
※ノリで書いています、めちゃくちゃです。ご了承下さい
VRMMO、『ATLANTIS』。
その中の、所謂始まりの街、〈ヒガシマチ〉の中央にある、その場所。
3mほどの塀に囲まれた、豪華絢爛とも、地味とも言い難い、上品な雰囲気をまとった城。
その城門の前に、私はいた。
私は胸に手を当てて、すーはーすーはー、と数回大きく息をする。
そして、目の前にある門の扉を押し開ける。
ギィ、と音を立てて開いた木製の門は思ったより重かったが、ぐっと手に力を込めれば簡単に開いた。
門を通ると、私の目の前に半透明の板が浮かび上がる。
――――――――――――――――――――――――
ギルド、【獅子の啄み】の保有地内に入りました。
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「…ふっ、くく……。」
何回見ても面白いギルド名に、思わず笑いがこみ上げる。
まぁ、こんなへんてこりんな名前をしていても、実力は折り紙付き。
ギルドの世界ランク、というものがある。
五位、【闇月夜】。
情報収集を主体としたギルド。その実態はわかっておらず、ただ判明していることは、所属しているメンバー全員忍びのような格好をしていて、その装束の腕の部分には、月をかたどった文様がある、ということだけだ。
四位、【FANFARE】。
ギルドマスターを勇者、サブギルドマスターを聖女と呼ぶこのギルドは、精鋭数名で結成されたギルドだ。自身たちを勇者パーティー、と呼んでいる彼らは、厨二キラキラ集団とも呼ばれている。
三位、【In the sadness that has become dirty……】(意味:汚れちまった悲しみに……)。
なんでかは知らないが、中原中也という方の有名な詩の名前を英訳したギルド名であるギルドだ。
そのままグー●ル翻訳にでも突っ込んだのか、少し意味が違う気がする。
脳筋は多いが、個々の個性が光るギルドだ。
二位、【ヴァンパイア・ブランシュ】。
「吸血鬼」と「白」というある意味真逆のように感じる組み合わせの名前をしているギルド。
所属しているメンバーたちは吸血鬼とそれ以外が半々のような割合で、ギルドマスターも吸血鬼だ。
ここのメンバーはその高い身体能力を生かしてあらゆる武術を使ってくる。そして、その練度が半端ない。絶対に個人戦はしたくないギルドだ。
そして、一位。
【獅子の啄み】。
四頭と呼ばれる幹部四人に、四頭の元に二人ずつ居る八戦将、そして天獅子と呼ばれるギルドマスター。
この十三人が主な戦力のギルド。
一度一位の座を手にしてからは、どのギルドにも一位の座を譲り渡したことのないギルドだ。
十三人の主戦力たちにはそれぞれ二つ名がついていて、その強さを物語っている。
八戦将には、
【過剰治癒者】
【死天狗】
【二人の悪妖精】
【操り糸の奏者】
【白の王】
【絶対守護者】
【毒蜘蛛】
【純粋なる狂探者】。
四頭には、
【怯えの魔女】
【流刃の魔猫】
【生命の簒奪者】
【穢れなき処刑王子】。
そんなふうに二つ名がついている。
そして、ギルドマスターの二つ名は―――
「………。あ。」
そんな事を考えていたら、いつの間にか、目的の扉があった。
そこで数秒立ち止まってから、私は迷いなく扉を開ける。
キイ、という音を立てて開いた扉の向こうに広がるのは、演習場。
通路が薄暗かったこともあり、眩しいくらいに感じる太陽の光が、そこにいる十三人の男女を際立たせている。
「あれぇ? 一人〜?」
侍のような風貌をした猫人族の少女が私を見てそう言う。
「? どういうことだ?
普通、戦争なら総力戦が基本じゃあないか?」
と言ったのは、白い騎士の鎧を身に着けている男性。
「うちも十三人だけ」
「なんだけど」
「「ね〜!」」
ほぼ同じような格好をした一見可愛らしい双子が顔を見合わせながらそう言う。
「あー、お前ら。多分一人だわ。よく見たら、向こうの人数が一人になってやがる。
というか、戦争のカウントダウン始まってるけどお前ら大丈夫かよ…。」
一番奥にいた、白い袴姿の男性がそう声を発する。
彼こそが、世界ランク一位【獅子の啄み】のギルドマスター。
―――二つ名【真なる魔獣】、PN・ARATA。
「……ふーっ。」
目の前の十二人のプレイヤーたちがアラタの問いに答えているのを尻目に、私は深呼吸をする。
これが、今の最強であり、最凶。
私は刀を取り出す。
「ん〜? あのこ、ますたぁに似た格好してるねぇ。」
淡い水色の袴に、薄く桃色に色づいた刀。
そして、顔には目の部分を隠す狐の面。この狐の面にも桃色の桜の意匠が施されている。
そんな出で立ちの自分を見て、あ、確かにアラタに似てる、と思った。
意識して集めたわけではないが、どうやら似てしまったようである。
いやぁ、怖い怖い。
「マスターと、一緒?
…………万死。」
「あーらら。パペッティアちゃんのスイッチはいっちゃった。」
大丈夫なの〜? とからかうように聞いてくる猫人の女性(?)。
「…望むところですよ」
―――3
私は、愛刀を出現させる。
―――2
啄みの面々も、それぞれの構えを取る。
―――1
そんな中、ただ一人、ARATAだけが、ぼーっと、ただただ突っ立っていた。
―――START!!!!
まず特攻を仕掛けてくるのはなかなかにキレているらしい、【操り糸の奏者】。
自身の持つ殺傷能力の高い人形たちを特攻させてくる。
「ちょっとパペッちゃん〜! 魔法が当てにくくなるからやめて頂戴?」
そしてその人形たちの合間合間を縫うように魔法を当ててこようとするのは【過剰治癒者】。
「うんまぁ、特攻しかないよねぇ〜?」
【流刃の魔猫】と呼ばれる女剣士が、とてつもないスピードでこちらに肉薄してくる。
「ふ、ふふ?」
面白い。
―――ザンッ!!
私は、横薙ぎに一太刀、振るう。
それだけで魔法は崩れ去り、人形たちは糸が切れたかのように倒れていく。
女剣士は風圧に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられている。
奥に居た他の面々は白い盾で守られて無事だったようだけども。
これは、【絶対守護者】の仕業だろう。
「じゃあ、今度はこっちから♪」
私は盾を中心に展開された障壁に近づくと、スキルを発動させる。
それによって術式の穴を勘破し、私はその穴を突き、術式を破壊する。
「っと―――忘れてた。」
私は懐からメイスを取り出す。
「いや……それ、服の中に入れれる大きさじゃないだろう…。」
「【状態異常回復(上)】」
「っっっっ〜〜〜〜。」
まぁ、毒を使える人がいるんだったら仕掛けてるよねって話。
ささっとメイスを懐にしまい直した私は、すぐさま剣を振るう。
「だぁかぁらぁ、魔法は使えないって〜。
まず通らないんだから、諦めたほうが得策だよ〜?」
【怯えの魔女】さんがこちらに古代魔法をぶっ放してくる―――が、私はこれまた弱点を勘破し、術式破壊を行う。
―――この間、0.4秒。
そして、その後私はしゃがみ込み、そこから高くジャンプする。
しゃがんだ際、ギリギリ上を通り過ぎた刃に少し怯えつつ、私は当初の目的であった一人の男性のもとに向かう。
「【穢れなき処刑王子】さん、ちょっとお手をお借りしましょうかね。」
私は【穢れなき処刑王子】の持つ武器―――ギロチンを彷彿とさせるような鋭い刃を持つ鎌を拝借する。
まぁ、拝借すると言ってもそんなに簡単に取れるわけじゃあないのだけれども。
今回は、ちょっと【操り糸の奏者】さんの糸をお借りして、鎌を奪取した。
「っ私の、糸を使うんじゃねぇよ!!」
あ、また人形が。
私は武器を鎌に変更し、糸を切り裂くが、それでも人形は再び糸をつなぎ直されて近づいてくる。
「しっつこいなぁああ?」
私は顔を歪め、足に力を込める。
「ばいば〜い。」
次の瞬間、私は【操り糸の奏者】さんの真横を通り過ぎ、首をはねていた。
さっすが四頭。いい武器使ってるぅ!
そして意識を切り替え、元の標的の男性のところに向かう。
「いやあのね、人の武器盗っといて何やってんの?」
「いやぁ、油断してたわけじゃあありませんよ?」
私は短刀で首を狙ってきた【穢れなき処刑王子】さんの攻撃を耐性を低くすることでかわし、お返しとしてスパッと足払いをかけてサクッと首をはねる。
そのせいで彼の武器も消滅するが―――
「仲間殺されて何もしないでみていると思ってるのかにゃ?」
「いんや? さっきも言ったんだけど、油断はしてないよ。」
肉薄してきた猫剣士の刀をメイスで受ける。
そして、魔法を詠唱。
「っっ!」
すぐさま猫剣士は離れるが、もう遅い。
「ぐっ!」
それ、呪いだから。
「じゃ、ばいばーい。」
私は時間が惜しいので首をはねずに次の標的に向かう。
―――と、その前に。
「おぉう」
私はその場で前転し、毒が塗られた短刀を回避する。
「下からと上から同時に、か。
さすが【死天狗】と【生命の簒奪者】。」
でももうダーメ♡
「邪魔すんなよ?」
私は無事に呪いがかかったことを確認し、踏み出そうとする―――
が。
―――ギィン
鈍い、鉄が打ち合う音が響く。
「いなくなったと思ってたかにゃ?」
「うん、てっきりね。」
呪いによって倒れたと思っていた【流刃の魔猫】。
「うちにはこういうことに詳しい専門家が二人もいるんだにゃ〜。」
「あぁ…【怯えの魔女】さんと【純粋なる狂探者】さんか。
解読されるとは思ってたけど、早いなぁ…。」
予定変更、と口の中だけで呟く。
「よそ見してる暇は、無いニャア?」
「知ってる。」
私は襲いかかってくる斬撃をいなす。そして、時折躱す。
―――右、斜め、左、左斜め、下、上、振り下ろし、右、下、左斜、薙ぎ、上、下。
「燕返しッッッ!」
語尾が外れてますよ、と思いつつ、斬撃を避けるために後ろに後転。
そしてそのまま首を狙ってきた【生命の簒奪者】さんと【毒蜘蛛】さんの攻撃を刀で受け、はじく。
そして炎魔法で【毒蜘蛛】さんの糸を燃やす。
「何故!?」
糸を燃やされたことにびっくりしているみたいだけど、炎魔法と言いつつ、闇魔法とも混ぜ合わせたやつだからね。当然だと思うよ。
「忘れんでほしいにゃあ?」
そして又剣戟が再開。
「だ、ぁあーー!!
考えがまとまらんっ!
邪魔! どいて!!」
躱したりするのにリソースを食いすぎて、あんまり考えれない。
なので、スパッと首を切断。
「にゃ!?」
【流刃の魔猫】が崩れ去るのを見てから、私は標的に肉薄する。
「「わぁお、次、僕達〜?」」
「あはは、めんどいから戦わないよ?」
私は彼らの横を通り過ぎる。
「私が戦いたいのは一人だけなんだよね。」
そう、はなから目標なんて唯一人。
「だから全員寝込んでろ。」
私は最初からずっと構築していた呪いの術式を発動させ、目的の人物以外のプレイヤーを動作不能にする。
血の気の多い人と、術式を破りそうな人を殺したんだよね。
「ぐっ…!」
「きゃぁ!? どういう事!?」
「ひぃッッッッ! (……ブルブルブルブルブルブル……」
「全員拘束完了、後はあんただけだね。
―――ARATA。」
「おぉ、ご指名いただけるとはびっくりだ。
うちのメンバー落とすとは、びっくりだぞ。あのギルドにこんな猛者がいたとはな?」
早くも殺気ビンビンな向こう。
あのギルド、とは私が仮入会しているだけのギルドの話だろう。
ここと戦わせてもらうことだけを条件に入ったからね。
「あはは。あんたと戦うためだけにあのギルドに入ったらからね。
私の正しい情報を持ってるやつなんて、多分いないさ。」
「コーエーだなぁ。
んじゃ、失礼して。」
一瞬で、空気が変わる。
「うっわ…。」
先程の殺気なんて屁にも思えるくらいの闘気と殺気が、襲いかかってくる。
そのピリピリ、いやビリビリとした空気感に、唇のはしがどうしてもつり上がってしまう。
「こんにちは。」
「知ってましたよって。」
何の前触れもなく接近してきたアラタの拳を刀ではじく。
そりゃ挑むなら情報収集くらいしてますからね。今までの戦闘スタイルから、そう来るだろうな、と予想はついていましたよ。
「コレを避けるんだ。へぇえ…」
わぁー、スイッチ入れちゃったかなぁ?
めちゃくちゃ濃密な殺気が放たれているよ! もう笑うしかないよね!
「怖い怖い怖い、強すぎません? 殺気。」
私は刀を振り下ろしながらそう言う。
「あれ、そんなに出してた? ごめんごめん。」
その刀を素手で受け止め、平然と話してくるアラタ。
まぁ、それくらいされるだろうなぁ、と思ってましたけど!!
この刀、結構高かったんですけど!! エンチャントもしたんですけど!! …ちょっとショックです!!
「ええ!! めちゃくちゃ!」
こりゃ出し惜しみできないな、と。
私は、刀を瞬時に亜空間に転送し、大槌を刀があったところに出す。
そして、そのまま腰を入れて振る。
「ぐぇっ。やっばぁ…! 腕引いてなかったら使い物にならんくなってたじゃん。」
「それぐらい本能でやるでしょう貴方、はっっっ!!」
一回目の遠心力を利用してもう一振り。
上から下への打撃。
それを飛び退って避けたアラタに向かって、また亜空間から出した(大槌はしまった)刀で下から上に、切り返す。
「はぁ!?
ちょっと、何なの君!!
楽しすぎない!?」
「異常者ですね!!」
私はその切り返しが防がれたのを見て瞬時に後退。
また取り替えた武器―――今度は弓―――の弦を弾く。
そしてそのまま矢と並走、武器を刀に切り替えて薙ぎの一振り。
「いやいやいやっっ!! 楽しすぎるってこれはっっっ!!」
「まじ異常者すぎ」
正直軽く引きますよ。ここまでくると。
どこかから出した刀で薙ぎを防がれたので鍔迫り合いとなったこの戦いで、私はことさら大きな声を出す。
「ええっっと!! 私が言いたいのは一つ!!」
武器を大槌に変えて振り抜く。
それと同時に言いたいことを言い切る!
「はよ実家に帰ってこいやこのクソ兄貴ッッッ!!!!!!」
「「「「「「「「「!?!?!?!?」」」」」」」」」
♢
「………。どういうことだ?」
「ええと……。」
私が怒りに任せてアラタをぶっ飛ばした後、ふぅ、と一息ついて私は自刃。
あの戦いは【獅子の啄み】が勝利したこととなり、今、私たちはセーフティーゾーンに転送された。
そしてそのセーフティーゾーンにて、私は尋問されている。
「…私、そこのARATAさんの妹で、雪と申します…。
そのバカ兄貴が実家に帰ってこないし一人暮らししてるマンションに行ってもずっとゲームしてて話せないしなんならバイトもしてないし風呂とご飯のときくらいしか起きないし…。
でも父も母も忙しくてその時間まで待っていられないし、その時間も不規則すぎてずっと見張ってないといけないし…。
ということで、ゲーム内で会いに行こうってことになりまして…。」
私はここぞとばかりに愚痴を言う。
「リインは?」
「……通知を切ってると思います…。かれこれ1年反応ありませんし。
実家に2年くらい戻ってきてませんし。」
そして、そこまで聞いた12人のジトリとした視線がアラタに注がれる。
そして、何事かを考えていたアラタは、
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………申し訳ございませんでしたァアアア!!」
それはもうきれいな土下座をキメた。
最強ギルドに殴り込みをかけたのは、ギルドマスターの○○○○でした。〜いい加減帰ってこい馬鹿野郎〜