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第七話

長編作品の合間に書いてます。

短めの連載予定です。

最後まで読んで頂けると幸いです。




「ぎゃぁぁぁあー!」


シオラはとにかく走った。


よって、今自分がどこにいるかわからなくなっていた。


「ぜぇぜぇぜぇ… はぁ… っはぁぁあ! ここどこっ!?」


つまり迷子になっていた。


彼女はいつの間にか外に出て、林のような所にまで来ていたのだ。


(王宮にこんな所あったんだ… 朝の涼しい風… 気持ちいいなぁ)


息を整えながら、そのまま彷徨うように少し歩いた。


キョロキョロと周りを見渡す。


(誰もいない… 少しだけなら)


そう思い、シオラはそのままの寝転がり、大の字になって天を仰いだ。


メイドとしてあらぬ行為だ。


(あぁ… このままサボりたい… それにしてもいいのか? ご主人とメイドの… 恋… こ、こ、こ… これって… !?)


「禁断の恋っ!!」


「わっ!!」


その驚きの声と共に、ドシンと痛そうな音がした。


木の上から誰かが落ちてきたのだ。


「いったぁ… 」


腰を摩るような仕草で、そこにいたのはエルの友人であるフィンであった。


「え!? フィン様!? 大丈夫ですか!?」


シオラが驚き、心配そうに駆け寄る。


「シオラ? 突然大きな声がして… びっくりしちゃった… いてて… 」


「ご、ごめんなさいっ! 私のせいですよね!? 何だかいつもフィン様には、痛い思いをさせてしまっている気がします。なんてお詫びをしたらいいか… 」


「お詫び… シオラになら全然構わないな。でも… そうか、お詫びか… そうだなぁ」


ニコニコとしながら、その天使のような顔をシオラに向けていた。


(ま、眩しい)


「それにしても、禁断の恋って何?」


(しかと聞かれてた! そりゃそうか… )


「えぇと、してはいけない恋? えへへ」


「あ、うん、意味は知ってるよ?」


シオラは、三秒前の自分に戻りたかった。


「でも… 恋に、してはいけない恋ってないと思う」


「え?」


「だってそうでしょ? 人の気持ちって隠すことはできるけど… 」


フィンの手がゆっくりと伸びてくる。


「その気持ちは止められないでしょ? 誰がどんな人であろうと… ね?」


その手はシオラの頬を優しく包んだ。

顔が近い。


「え?」


そのままフィンの顔が、さらに近づく。

あと少しのところで唇が重なる。


「確かに!!」


シオラがそう声を上げたものだから、フィンはその目をまん丸くして顔を止めた。


「本当その通りですよね! ならっ… ならどうにかなるかも… あ、でもその前に私って、そもそもその感情があるのか? 絆されているだけなんじゃないかしら? どうやって確かめれば… 」


ぶつぶつと言っているシオラを、不思議そうに見つめるフィン。


「あ、えと… シオラ?」


(あれ? 今そういう雰囲気にだったよな?)


恋愛経験未体験の彼女には効かなかった。

気付けさせられなかった。

無意味だった。


(どうしたらいいんだ?)


ここでも悩む者がまた一人増えていた。


気を取り直したフィンが口を開く。


「シオラはどうしてここに? よく来るの?」


「いえ、単に迷いました」


(迷子か。可愛いなぁ)


「あの… 実は、少しエル様と喧嘩してしまい… と言いますか、まぁ、私が勝手に感情を爆発させてしまって… 逃げ出したと言いますか… 」


「え? エルと? 喧嘩?」


「はい… ハレンチ王子と暴言まで吐き捨てて、ここまで逃げてきてしまいました… 頭に血が登ったからと言って、一国の王子にあんなことっ! もうっ流石にまずいですよ… ね… ? ん? フィン様?」


フィンはいつもの柔らかな笑みとは、似ても似つかない笑いを轟かせていた。


「ハレ、ハレンチ王子っ! アハ… アハハハハッ! ウケる! ダメだ… おか、おかしすぎる… 」


「あ… えと… やっぱこれって、反逆罪とになりますかね?」


「ないないないないっ! 絶対ないから大丈夫だよ! むしろ、メイドにハレンチ王子って言われて、反逆罪にしましたって方が恥ずかしいでしょ! あーほんと可笑しい」


「そう… ですか… それならいいんですけど… 」


(そんなにおかしかったかな? ハッ! まさか本当に変態なんじゃっ!)


「はぁ… それにしても、エルの事をエルって縮小して呼ぶの珍しいよね? 王族以外ではいない気がするなぁ」


「え? そうなんですか? でも通じますよね? もしかして、これも失礼に当たります!? でも王族って知らずに今まで仕えてきたので… 今から変えるにも変えれないっていうか… 」


「大丈夫なんじゃない? むしろ… 」


(嬉しそうだったし… )


「ん?」


「あ、ううん。それに不思議な部分を取ったんだね! ソ ‘エル‘ リードの真ん中をとっ… あれ?」


(何か変だな… もしかして… いや、まさかな)


「如何しました? 私はソエルリード様と言う名は、後から聞きましたけど… それにエル様は、エルディア様ですよね? だから… 」


「えっ!? ちょっと待って! シオラ… その名を何故知ってるの?」


「え? 何故って… ご主人様が教えて下さいましたよ? 本当の名を。あぁでも酷いんですよ? エル様ったら、最初はルクスっていう偽りの名を、私に名乗ってたんですから。ふふ、懐かしい… あれ? フィン様? 如何なさいました?」


「待って… え? だってその名は… その名を直接本人から聞いたって事は… まさか。シオラ… 君がエルの ‘ファースト‘ なのか?」


「え… ? その私に向けられた ‘ファースト‘ っていう異名を最近よく聞くのですが、一体何なんですか? 私よくわからな… 」


すると、フィンは驚きと失望でしゃがみ込み、髪の毛をクシャッとしていた。


(やはり… そうだったのか… だからあんなにも… )


「えぇと… フィン様?」


そして、しゃがみながらもゆっくりと顔を上げて、フィンは説明し出した。


「エルが君に与えたその ’ファースト’ とは、その名の通りだけど、意味は様々かな… 最初に受け取るもの、最初に受け継ぐものっていう意味があるよ。他にもあるけど、その中でも一番の意味は… 」


「ちょっと待って下さい! 何を? 何を受け取るんですか? あの日から受け取った物など、何一つないですよ? あ、お金くらいしか… 」


「 ’物’ か… なんて言ったらいいんだろう… それは… えっと… うー… ん、命をかな?」


「命? それってどういう事ですか? 意味が全然… 」


「ん? シオラ、だってあの日… ’ファースト‘ をもらったその夜は、共に過ごしたんじゃないの?」


「え? あの日はすぐに帰って… 屋敷でお世話してましたよ?」


「うん、エルと夜を共にしたってことだよね?」


「え? 夜を… 共に? それって… えぇっ!? 何を仰ってるんですか!? そ、そんな夜をだなんて! 過ごしてませんよ!?」


「え? して… ない? 何も?」


「はい! その… フィン様の仰っているような、こ、行為は行なっておりません! 断じてっ!」


(そうか… ん? でもおかしいな? 本来なら… )


フィンは不思議に思ったが、嬉しさで立ち上がり、その美顔をキラキラとさせてシオラに近づいた。


「てことは、まだ僕も間に合うってことかな?」


その言葉にシオラは苦笑いを浮かべながら、首を傾げた。


(何をだろ?)


「ハッ! 大変! エル様に朝食を用意しなくては! すみませんフィン様! 私そろそろ戻らないと! エル様をお預け状態にしてきたままでした! まずいまずい! ではまた!」


そしてシオラは、その重い足をエルのいる部屋の方へと向けた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そして、腹ぺこで少し機嫌が悪くなっていたエルに、急いで朝食を差し出した。


ほっとかれたことに対しての文句は特に出てこなかったが、それが逆に怖かったシオラ。


(ヤバい… 意識しすぎてヤバい… なんかすんごいカッコよく見えてしまう… いや元々顔はいいんだこの人は… でもこれは… )


そう思いながらも食後の珈琲を注ぎ差し出すと、先程のフィンとの会話を話した。


少し端折りながら。


「妻だ」


「え?」


話を黙って聞いていたエルが、ここでやっと口を開いたのだ。

しかしその一言だけでは、シオラには意味が届かないままだった。


「 ’ファースト‘ には妻という意味もある。もっと詳しく言うと、妻にすべく人に捧げる ’初めて’ という意味だ。それに本当の名を自分から明かした。この俺が自ら血縁以外の女性に、真の名を明かす意味がわかるか?」


「つ… ま? 私が? エル様の? 妻… ? でも名前は… たまたまではなかったんですか? 私が見抜いたからでは?」


「そうだ。たまたまだった。俺もその意味を後から知った。しかしその時には既に心惹かれていた。だから取り消すこともせず、さらには日に日に妻として意識するようになり… な… 何故泣いている!?」


「あぁぁぁぁぁっ! 感情が! 感情が入り乱れてますっ! エル様いつからそんな、どストレートに気持ちを言えるようになられたんですか!? どうしたら良いんですか!? 禁断なんじゃないんですか!? こんなん認めざるを得ないじゃないですかぁぁぁ!」


シオラは両手を目に当て、天に向けて思いっきし泣き喚いた。


「お、おい… その禁断の恋って言うのは、一体何なんだ? それに認めざるって何を… ?」


「でも言ってました! フィン様が! 人を好きになるのに、いけない恋などないって! その気持ちは止めることができないって! だから私… 」


(ん? 感情が乱れて、会話が成り立ってないぞ?)


「だから… 決めました! 身分違いでも関係ないって!」


(あれ?)


「認めます! わた、私はっ… エル様の事が、好きなんだって!」


「え… ? それはっ本当… 」


「だから、相応でなくとも、身分が違くとも… この気持ちは止めませんからね!」


(何で途中から怒られてるんだ? 俺は… )


少しキレ気味で告白したその状況を、うまく飲み込めずにいたエルであったが、すぐに気持ちが溢れた。


(言った… 言ってやったぜ! ん? あれ? でもエル様も好きって事は… それって)


「フガッ… ! エ、エル様!?』


シオラはその心地よい息苦しさに、心臓が爆発するのを堪えた。


エルがシオラを力一杯抱きしめたのだ。


「良かった。ちゃんと伝わってた。また届かず終いかと… この鈍感娘が」


「鈍感… ?」


「そうだ。それに別に禁断でも何でもないぞ?」


「え? だって、メイドとご主人の… しかも殿下ともなると… まさしくそれは禁… 」


「よく考えろ。シオラ・レディカル。ガッツリ貴族だろ?」


(ガッツリ… )


「忘れてました! わたくし貴族でした! オホホホホホホホホ」


「…… はぁ。だから堂々としていればいい。いや、もしシオラが貴族でなかったとしてもだ。お互いが好いていればそれだけで十分なんだ」


「なんか… すごいなぁ… こんな素直なことを言うなんて… あの屋敷にいた頃とはまるで別人だ」


「… そんなに違うか?」


エルが頬を少し染めながら呟く。


「えっ!? あ、も、漏れてました!? あらやだ!」


(ヤバい! 口に出てた!)


すると、エルがシオラを真剣な表情で見つめ直した。


「シオラ、改めて聞く… 」


「え? あ、ど… っ!?」


そしてエルは、その場でひざまづき始めた。


「シオラ・レディカル。私と結婚していただけませんか?」


「はい… 喜んっ、あ、謹んでお受け致します」


シオラがその手を取り、そう返事をすると、エルはこれまでにない笑顔を見せた。


しかし、その喜びも束の間。

シオラはすぐに現実へと戻った。


「でもそうなると、家への仕送りもできなくなってしまいますよね?」


(ん? あれ? ちゃんとわかっているのか? 俺の妻になる意味… )


エルは少し不安に思ったが、話を続けた。


「そこは心配するな」


「え?」


「ん? 俺の妻になるんだよな?」


「はい! 喜んでっ!」


シオラは、ニッコニコの笑顔で応えた。


(良かった… いやっ! そこじゃない!)


「それなら、その意味はちゃんと… 」


すると勢いよく部屋の扉が開いた。


「姉上っ!」


「え!? リオル!? 何故ここにっ!? てか、朝からそんなにはしゃいで大丈夫!?」


「はいっ! お久しぶりです! 会いとうございました! この元気な姿を早く見せたかったのです!」


「えっ!? ど、どういうこと?」


部屋に入って来たのは、愛してやまないシオラの弟であった。


彼は病弱であまり外には出れないような身体であった。


しかし、目の前に居るのは紛れもなく、元気な姿の弟リオルであった。


こんな姿を見るのは、シオラも初めてかもしれない。


リオルと最後に会ったのは、ソエルリードである第一王子の誕生会前日だ。


その時に実家へ帰った以来だった。


その際も、身体は弱々しく床に伏せっていた。


あの趣味の悪いドレスの迫力ある色でさえも、彼にはくすんで見えたのだから。

いや、実際にくすんでいたのかもしれないが。


とにかく今シオラの目の前にいるのは、紛れもなく健康体のリオルであった。


その姿に驚き、嬉しく思ったシオラ。

その反面、ある疑問が湧き上がっていた。


「兄様が紹介して下さったんです! それで、病気の原因も分かり、今は身体に適した治療を行っています。それでみるみるうちに良くなり… 」


「ちょちょっ、ちょっと待って! 兄様!? って誰よ!?」


シオラは手を思いっきし前に出し、会話を一旦制止させた。


「え? エル兄様ですよね? ご婚約中ですから、まだ、予定ではありますが、僕にとっては兄様になるお方… 」


リオルはキョトンとしながら応える。


「いや! 待って! 婚約!? それ、たった今、この場でしたばっ… あれ?」


「え? だってそうお聞きしましたよ?」


シオラは、少しばかりエルを睨む。


(これ、あれだな… ? ’ファースト’ 上の問題だな? そして恐らく… )


そして、すぐにある疑問がまた湧き出て来ていた。


「待ってリオル、その前に彼の事が誰だかわかって言ってる?」


「え? 姉上のご主人様だったお方ですよね?」


(あぁ… やはり)


「まさか… 言ってないんですか?」


そう言いながら、シオラはエルの方を見た。


「ん?」


「ん? じゃないっ!」


エルはとぼけた。


「リオル、よぉーく聞いて! ね! 落ち着いて! 彼は… あなたの言うエル兄様は、この国の第一王子であるソエルリード様よ?」


シオラのその言葉に、リオルは目をまん丸にした。


「え? ソエルリード様ってあの?」


「あの」


シオラがコクっと頷きながらそう言うと、まさかの反応が返ってきた。


「ふふふ、まっさかぁ! だって、姿をほとんど見せないんですよね? あ、でも姉上はファーストダンスをした身… 殿下のそのお顔を見たんですもんね? でもそうなると… エル兄様との婚約は… あれ?」


その言葉に、シオラとエルは顔を見合わせる。


(だからさっきからここにいるエル様に反応しなかったのか… )


「なるほど… エル様? そのお姿で会うのは、今日が初めてですね?」


エルはこめかみを少し掻きながら、目を逸らした。


「え? エル様? このお方もエル様?」


そうリオルが言うと、シオラは応える。


「このお方 ’が’ エル様よ? リオル」


「……… 」


リオルは言葉を失いながら、目の前の王子スタイルのエルを見る。


エルは真っ直ぐな目をして、コクッと頷く。


「え、えぇぇぇぇええっ!! う… そですよね?」


「本当だ」


(ずっとここにいたエル様を、誰だと思ってたのかしら? 今日は結構ちゃんとした格好してると思うけど… )


「リオル、失礼だからちゃんとご挨拶して。エル様申し訳ございません… 闘病生活が長かった為に、他人との接触になれていなくて… 少し世間知らずなところがあるかもしれません… 無礼をお許し下さい」


「ふふ、構わぬ。大切な ’俺の’ 弟だからな」


(すごい… 既にその気になってる… )


「で、ででで殿下っ! ソエ… ルリード殿下… ご挨拶が遅くなり、も、申し訳ございません」


「良い良い。それより身体の具合はどうだ? あれから中々顔を出せてないからな」


(お兄ちゃん風吹かせまくってる… )


「はい! それはもう! かなりのスピードで良くなっています。今なんて、外で走っても良いくらいですよ? でも体力がまだあまりついてないので、遠出とか出来ないのですが… それとですね… 」


「ちょ、ちょっと待って! お二人が前から知り合っていた事もわかりました。それにリオルの具合が何故かとんでもなく良くなっている事もわかりました。そうです、今、わかりました。それは何故ですか? ご説明願います」


「あぁ、舞踏会の為の練習を始めた頃、シオラの家のことを調べたって言ったよな? その時にリオルのことを知り、病状も詳しく聞いた。侍医に聞いたところ、知り合いで詳しい者がいると言うことで紹介してもらったんだ。すると意外にもその病気は闘病をするほどのものではなかったと言う。薬や食事を変えたりして、目に見えて良くなっていった、と言うことだ」


「何で? 何故すぐに教えて下さらなかったのですか?」


「言うのが遅くなってしまいすまない… 」


シオラが少し残念そうな顔をしながらそう言うと、リオルが必死な表情で声を上げた。


「姉上! 僕が内緒にしてってお願いしたんです!」


「え? リオルが?」


「うん… 姉上が僕や家族の為に、頑張ってくれてるのは知ってるし、すごく嬉しい。十分過ぎるくらいだよ。それで僕の病状が良くなれば、そんなに働かなくても済むと思った。だからエル兄様が、良くなるように斡旋してくれた時は、すぐに返事もしたし、とても感謝しました。けど… そうなると、ソエルリード殿下の… エル兄様の元を辞めると思ったから… エル兄様が姉上を好いてるのはすぐにわかったし、そんな兄様の元から、姉上を離れさせたくはなかったから… だから、もう少し元気になるまで、黙って欲しいとお願いしたんだ。ごめん… なさい… 」


そう言うリオルの姿を見て、愛情が込み上げ過ぎて爆発しそうになったシオラ。


リオルの細い身体を、優しくギュッと抱きしめた。


「あぁん! 何て子っ! 何って子なのっ!! いいのよいいの! そういうことだったのね!」


その顔をスリスリしながら愛でる。


力一杯愛でる。


そんな姉弟を見て少し羨ましくもあり、愛おしく微笑むエル。


「姉上… 苦しいよ」


迷惑そうに言いながらも、照れるリオル。


「でも約束、何かあればすぐに私にも言うのよ!?」


「俺でもいいぞ?」


「はいっ!」


「先に私よ? いい?」


「ふふ、わかったよ。それにしても、エル兄様、物凄く美男子ですね!」


「ちょっ! リオル! 直球過ぎるわ!」


「ふっ、まぁな」


(否定しないんかい)


「それよりリオル? ここまで一人で来たわけじゃないでしょ? お母様達は一緒じゃないの?」


「え? ずっと一緒だよ? ほら… 」


リオルが指差す方に、顔を向けたシオラ達。


その先には扉から何故か涙を流しながら覗く、両親の姿があった。


「お! お母様! それにお父様も!? いつからそこに!?」


ずっとだ。

終始見ていたのだ。


(早く言ってよ… )


その後、小一時間ほど泣き止むことのなかった両親達とエルは、仲良さそうに話をしていた。


(そうか、ここも前から顔見知りだったのね… )




そうして、家族を門のところまで送り届けたシオラ達。

二人は部屋に戻りながら、話をしていた。


シオラはある事が気になり、突然切り出した。


「エル様? 話が少し戻りますけど… 幼い頃、私と出会って、心境の変化に潤いが出たって仰いましたよね? なのに、何故大人になってもまだ暴君のままなのですか?」


「暴… 君… 俺はそんな風に見えてるのか?」


「え? 気が付いてないんですか? 皆言ってますよ? 鬼とか悪魔とか冷酷とか… あぁ、あとはえぇと… ん? エル様?」


エルは少し傷ついたように、暗闇を背負っていた。


(あ、まずい言い過ぎた… )


「シオラにも… そう見えているのか? 以前そんなような事を言っていたような… 」


「いえ! 私はもう… 知っちゃいましたから! エル様はもう… もうマシュマロ坊ちゃんにしか見えません! ブフッ… ククク… 」


「おい… バカにしてるのか? そんな風に言うなら、今すぐここでその唇を覆ってもいいんだぞ? ん?」


エルはその手で、シオラの顎を引き寄せた。


シオラはその行動に耐え、冷静さを装ってニコッと笑って言う。


「それは嫌です」


「え? 嫌なのか?」


「人前では、って事です」


「そうか、ならすぐに部屋に戻ろう!」


エルは嬉しそうにそう言うと、その愛しい手をぐいっと引いた。



ここまで読んでいただきありがとうございます。

長編作品も継続で書いてます。

宜しければそちらも読んでいただけると嬉しいです。


また、大変恐れ入りますが、評価等していただけると励みになります。

よろしくお願いします。


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