立夏の生い立ち ~私たちの流星刀 前日譚 その1~
私の名前は 角田立夏。
立夏という名前は両親がうなぎ屋を経営しているため土用の丑の日、つまり夏の土用の期間の暦に合わせてこの名前を選んだ。 お母さんは中肉中背だが良くお喋りな性格なため常連さんが良く訪れる。
厨房を担当するお父さんは無口だが料理の腕が上手く背も高く大柄な人だ。
どちらかと言えば私は色んな面でお父さんに似ていると言われている。
娘はよく父親に似るということを聞くがまさにその通りだ。
その影響で私は体は大きくても気は弱い方で接客は気が向かなかったけど生活のためという事で割り切っている。その割切りは眼鏡で切り替えている。
基本的にインドア派なので部屋で楽しむ遊びをしていたので近視になり眼鏡を掛けるようになった。
眼鏡を複数揃えてくれたのもお母さんのお陰だ。
「立夏、お店を手伝うときは丸い眼鏡にしなさい」
確かに比較すると枠が丸い方が四角いより穏やかに見えた。
「そうだ、お客様に笑顔は欠かせないから自分の鏡を見て笑顔を作る練習もしなさい」
最初は面倒だと思ったけどおこずかいも増えるという事で頑張って見ることにした。
そして何日が経って可愛らしいお客さんが来た。
刀の鍔を髪飾りにした小柄な女の子とお爺さんが来た。
「おじいちゃん。此処のうなぎ屋さんってそんなに美味しいの?」
「そうじゃ、刀鍛冶は体力がいるから鰻を食べて精をつけることが習慣だったんじゃ。この町も各地に鰻の専門店は一杯あるわい。その中で此処はワシのお気に入りじゃ」
このお爺さん、最初はぶっきらぼうで怖そうな印象だったけど、この子(お孫さん)と話してるときは穏やかにみえるなぁ。立夏はそう感じた。
「ねえ、お姉さんの衣装可愛いねえ。 写真撮っていいかな?」
「えっ? うーんどうしよう…迷ったなあ…」
その時、立夏の母親が割り込んできた。
「いいわよ、お嬢さん。ほら、立夏もスマイル、スマイル」
「う、うん…」
立夏はしぶしぶ笑顔を見せて可愛らしいポーズを取った。
そして数か月が経ち、立夏は高校へと進学した。
クラスが決まり教室へと向かうと以前、彼女の店に来た事がある刀の鍔の女の子が居た。
「あれ? 貴方、何処かで会ったような…」
「あー! お姉さん、うなぎ屋さんのお姉さんだね?」
「ええ、私の名前は角田 立夏… うなぎの角田の娘です…」
「へえ、立夏ちゃんか。私の名前は藤原 刀美。宜しくね!」
性格は対照的だがこれが二人の友人関係のキッカケとなった。
そして以前、撮られた写真は立夏の運命を左右することにもなったのである。
(詳細は本篇を確認)
おわり