第一章 時を超えし者達 第9話
ドルテに攫われたリサを救出するべく、四人は居場所を掴む為の時間と休息が必要だった。
そんな中、クリスタリカでは不穏なやり取りが繰り広げられ………それぞれの思惑が交差する。
最北端の国ガーネフィスト。ドルテの急襲があったその夜、カーン邸宅の応接間にて……
「見つけた……」
数時間目を瞑り、集中していたカーンが静かに呟いた。バリウス、サラ、サッドは緊張した様にカーンに注目する。
カーン「どうやら、クリスタリカシティの中央に聳え
立つ『セントラルタワー』じゃな」
セントラルタワー。現クリスタリカシティの中枢部であり、地表500mを超える巨大なタワービルである。
下層階から中層階までは人々の生活に密接したショッピングモールやアミューズメント施設が充実しており、クリスタリカの観光スポットとして解放されているが、上層階と地下施設は政治に関わる施設となっており、厳重に警備されている。
もちろん上層階と地下施設は一般人の立ち入りは厳禁となっており、入る事は出来ない様になっている。
サラ「そんな所に……あの建物には何が……」
サッド「あそこの上の階はマジでヤバいっスよ
偵察に入ろうとしたらつまみ出され
ちまった」
バリウス「政府が秘密裏に何かしてるのか」
サラ「名目上は国民の個人データが保管してある
らしく、それで一般人は入ってはいけ
ない事になってます」
バリウス「なるほど……」
カーン「ワシの探知では上層部ではなく地下にあ
る施設からあの娘の気配がするんじゃ
それに………」
バリウス「……?」
カーン「そこに、ジェネシスもいる……」
バリウス&サラ&サッド「……!!」
サラ「……まさか…ジェネシス様が…」
サッド「ジェネシスって、カルディス王家に仕え
てた側近の大臣じゃねぇか!」
バリウス「ジェネシスはエレメンティストだ…」
カーン「クリスタリカには少人数ではあるがエレ
メンティストが何人か居たのぉ
その中でも、ジェネシスは曲者
じゃ。彼奴、まさか戦闘系に覚醒し
たか…」
バリウス「厄介ですね……」
カーン「ひとまず今日は休みなさい。動くのは明
日の早朝じゃ!」
サラ「分かりました。寝室ありがとうございま
す。使わせて頂きます」
三人がそれぞれ寝室に向かおうとする中……
カーン「バリウス……」
カーンが手招きをする。
バリウス「?」
カーン「お前さん、あの力は取り戻さんのか?」
バリウス「……必要となれば……今はまだ、その時
ではないかと……それにあれは危険
です」
カーン「そうか……それは今ワシが持っとる」
バリウス「……!」
カーン「いつでも言いなさい……」
そう言ってカーンは自身の寝室へと向かった。
バリウス(あの力はカルディス王に預けて封印して貰ったはず………何故カーン老師が……)
───クリスタリカセントラルタワー地下───
ジェネシス「ご苦労だったなぁドルテ」
ドルテ「これで良いんだな」
ジェネシス「はっはっはっ!もちろんだとも!」
ドルテ「何がおかしい!」
ジェネシス「ここまでしておいてもう後戻りは出
来ない事くらい、お前が一番分
かってるはずだ」
ドルテ「いい加減にしろ!
フィリップを殺され、カルディス王
家の血筋の民を攫い、戦友に剣を向
けた!貴様に俺の気持ちの何が分か
る!これで龍族が救われるとは思え
んぞ!」
ジェネシス(また洗脳が薄くなったか……)
ドルテ「貴様、何に精通してる!」
ジェネシス「はっはっはっ!詮索は良くないぞぉ
ドルテ……ん?」
ジェネシスの瞳が薄暗い赤い色に光る……
ドルテ「あぁ!……あ………う………」
ドルテはその場で膝から崩れる様に倒れた。
ジェネシス「お前は俺の駒だ。黙って言う事を
聞いて働けばそれで良いのだよ」
ドルテは薄れゆく意識の中で静かに涙を流しながらカルディス王家への謝罪の念を叫んだ……
ドルテ(お許し……を!………カルディス…王…)
───ガーネフィスト(早朝)───
サラ「剣王、飛べますか?」
バリウス「ああ!剣が戻った。大丈夫だ!」
サッド「待ってろよ!リサちゃん!」
カーン「良いか?くれぐれも無駄な戦闘はしない事じゃ
リサの奪還救出!帰還が最優先じゃ!」
サラ&サッド「了解!」
バリウス「お世話になりました」
カーン「うむうむ」
リサ救出作戦開始、三人はクリスタリカに向けて旅立った………
───第10話に続く───