第一章 時を超えし者達 第7話
カーン邸宅に到着しリサは『守護石』を授かった。バリウスも修復を依頼していた武器を受け取り心機一転と思いきや……
思わぬ来客に一同騒然とする……
バリウス「ここだな。」
カーン邸宅に到着、扉をノックする。
しばらくして内側から出迎えの声が聞こえた。
──ガチャ──
カーン「おぉ、バリウス久しぶりだのぉ!」
バリウス「ご無沙汰してます」
カーン「ささ、皆もお入りなさい」
天井が高いエントランスから応接間へ、四人は案内された。暖炉の火にリサもホッとしている様子だ。
カーン「さぁ、皆お座りなされ」
バリウス「ありがとうございます」
カーン「彼女だね?」
バリウス「はい、カルディスの生き残りです。
既に気付かれていたのでは?」
カーン「ほっほっほっ!いかにも!」
リサ「あ、あのぉ……」
カーン「何かね?お嬢さん」
リサ「龍族は不老長寿と聞きました。ですが、
老師はちゃんとお歳を召してらっしゃ
る様で……」
カーン「なるほど……
ワシは元々エレメンティスト。
エレメンティストは戦闘は出来んが、
それ以外の能力には長けとる。オーラ
の質が違うんじゃよ。
ワシの能力は錬金術。硬い鉱石や、金
属を簡単に加工出来るが、代償として
錬金術で物体を加工するとオーラが少
しずつ削れ落ちて行くんじゃよ。ほっ
ほっほっ」
リサ「それで……」
カーン「戦闘をする種は、戦闘後にオーラが全回
復するが、ワシは全回復しないん
じゃよ」
バリウス「そんなお身体なのに依頼して申し訳
ありません……」
バリウスは頭を下げた。
カーン「これがないとお前さんは真価を発揮出来
んじゃろ?」
カーンがバリウスに手渡したのは、バリウスが元々持っていた剣と見た目がそっくりな剣だった。
しかし刀身部分の輝きが全く別物で、カーンが手渡した剣の方は更につややかな質感だった。
カーンはリサにもバリウス達の剣と同じ材質の石が付いたネックレスを渡した。
リサ「これは………」
カーン「守護石じゃ」
リサ「しゅごせき?」
カーン「ほっほっほっ………」
龍族が持つ剣や武具はフォースティッククリスタル、別名エナジーストーンと呼ばれる非常に硬い石材で作られる。その硬さはダイヤモンドや伝説の金属アダマンタイト、タングステンをいとも簡単に凌駕する。
この石材の刃を持つ龍族の武具は非常に強い。しかも、龍族のオーラをレンズの様に増幅させる作用もあり、彼等の戦闘において身体への負担が軽減する効果もある。
この作用はエレメンティストにも通じ、身に付けているだけで所有者を守護する効果もある。
カーン「バリウス、今まで持っていたレプリカを預か
ろう」
バリウスは以前まで持っていた剣をカーンに手渡した………その時である。
カーン&バリウス「……!!」
サラ「この気配!」
サッド「間違いねぇ!ドルテだ!」
バリウス「ドルテ……」
カーン「中央広場じゃ!」
───ガーネフィスト中央広場───
「ここは随分と殺風景だな……」
身長190cmを超える大男が降り立った。
街の人々はザワついている。大男は周りを見回し、背中に担いでいた大剣を抜いた。
大男「おいお前ら、街で見掛けない連中を見ただ
ろ?どこに行ったか知ってるヤツがい
るなら言ってみろ!」
大男はゆっくりと一人の街人の方へ歩いて近付く。そこで大剣を向けて言った。
大男「見たんだろ?ん?」
「やめろ!」
第一声はサッドだった。ちょっと引き腰気味だが、止めに入る。
サッド「ドルテ!あんた何やってんだよ!」
ドルテ「見ての通り、お前達の居場所を尋ねてた
んだよ。まさか、偵察のお前が先に来
るなんてな」
サラ「あなた、ちょっと鈍くなったの?」
ドルテの背後にはサラが付く。
ドルテ「フッ、お前ら二人なら俺一人で相手して
やるよ」
ドルテの不敵な笑みと殺気に、サラとサッドは息を飲む。
先手のサッドが切り込む!
サッド「てやぁぁぁ!」
……しかし……
ドルテ「フンッ!」
……ドルテの大剣で弾かれた。
続け様にサッドが切り込む。
サッド「おるあぁ!」
ドルテ「無駄だ」……その瞬間サラが背中に
サラ「はぁ!」
シュバ!……少し血しぶきが飛ぶ。
ドルテの背中に浅くはあるが切り傷が入った。
ドルテ「油断した。まぁ、かすり傷だ」
ドルテのオーラが強く感じ取れた瞬間、大剣の突きがサッドの胸元を襲う!
しかしサッドは辛うじて防いだ。
サッド「ぐっ!………」
────ガシャ~ン!───
突きのあまりの威力にガードしたにも関わらず吹っ飛んでしまった。
サッド(なんて一突きだよ……やべぇ!)
ドルテ「サラ、お前は来ないのか?ん?」
サラ(速い!なんか、昔より強くなってる?)
「すまない……遅くなった!」
サッド&サラ「剣王!!」
バリウス「守護石にオーラを練り込んでもらって
たんだよ」
ドルテ「よぉ、剣王バリウス・ゲイン
久しぶりだなぁ」
バリウス「ドルテ・ラグナス……
お前、随分変わったな」
クリスタリカ王国において二大強剣士が鉢合う。
────第8話に続く───