第一章 時を超えし者達 第4話
戦闘の後、バリウスとリサはクリスタリカ郊外にある小屋へと向かった。
そこで語られるクリスタリカの真実……
バリウスはゆっくりと語り始める。
バリウスの道案内でリサは誘導された。
ここはクリスタリカ郊外にある小さな林の中。そこにある小屋のそばに車を停めて、二人はそこの小屋の扉をノックした。
少ししてから内側から扉が開いた。
女性「剣王、おかえりなさいませ……」
そう言ったと同時に疑わしい顔して
女性「剣王、その人は?」
バリウス「とりあえず中に入れてくれ」
バリウスとリサは小屋に入った。
バリウス「リサ……彼女はサラ。オレの仲間だ」
サラ「リサさんって言うのね。よろしく」
リサ「よ、よろしくお願いします」
バリウス「サラ、彼女にお茶を……」
サラ「分かりました」
──サラが入れたお茶を飲みながら話す……
サラ「改めて自己紹介するわ。
私はサラ・ワグナー。よろしく」
リサ「私、リサ……」
リサは一瞬黙ってしまうが、バリウスが軽く促す。リサは少し頷いてから……
リサ「リサ………リサ・カルディスです」
サラ「………!!!!」
バリウス「そういう事だ……」
サラ「なるほど、理解しました」
少し間を置いてバリウスがゆっくりと語る……
バリウス「クリスタリカの真実、さてどこから話
そうか………」
───約200年前────
バリウス「はぁ、はぁ、はぁ……」
クリスタリカ兵①「あそこだ!あそこの通路に逃
げ込んだぞ!」
クリスタリカ兵②「あの方向は王女部屋じゃない
か?」
バリウス「くっ!」
クリスタリカ兵①「?!どこ行った?見失った
ぞ!」
クリスタリカ兵②「探せ!探せ!捕らえろ!」
バリウス「はぁ……撒いたか」
──この時代、クリスタリカ王国には人間と人間の能力を超えた人間の種族〖龍族〗が共存していた。
なぜ龍族と呼ばれるのか……。それは、自然界に存在する火、水、大地、空と、そこに光、そして影となる闇のエレメントが存在する。
各エレメントとしてそれぞれを司るドラゴンが存在し、その力を操れる者達を総称して龍族と呼ばれていた。
龍族には大きく区分すると3タイプ存在しており、ドラゴンが司るエレメントの力と自身のオーラ(剣気)を織り交ぜてその力を駆使して戦う白龍族、ドラゴンの力そのものを媒体に、自身の力を底上げして戦う黒龍族が存在した。
そしてもう一つ、主に光と闇のエレメントドラゴンを召喚し、光と闇の混合体を作り上げ、無属性を司る最強のエレメントである『カイザードラゴン』を召喚出来る種族、エレメンティストが存在した。
エレメンティストは、普段は戦闘をする事が出来ないが、特殊な能力を持っている。戦闘種族のオーラを抜き取って封じ込めたり、人の残留思念を物体に留める事が出来たりと個人差やバラエティーに富んでいる。
エレメンティストは極少数の種族で、カルディス王家の血筋がこのエレメンティストである。
大きな力を有するカルディス王家は命を狙われる事が多かった。力を利用し世界を手中に納めようする者達も少なくなかった為、その護衛として白龍族と協定関係を築き護って貰っていたのだ。
白龍族と黒龍族は永きに渡りいがみ合っていた。この2種類は何故か共存する事が出来ない関係性を持つ。今も謎に包まれた関係性である。
─場面は200年前のクリスタリカ王国に戻る─
バリウス「黒龍族の『王女暗殺計画』を阻止しな
いと………
王女がいなくなるとこの国は…!」
サラ「団長!ここは私達にお任せを!」
バリウス「何を言ってる!そんな事したらお前達
まで城から追われるぞ!」
サラ「ユリウスでしょ?団長……」
バリウス「…!……何故それを……」
サラ「『数人の兵士を殺して王家の間に侵入した
バリウスを捕らえろ』……こんな指令、
あなたではない事くらい、私は分かり
ます。あんなに王女を愛していたあな
たたがらこそ、私は分かります!」
バリウス「サラ……すまない!頼む!」
サラ「お気を付けて!」
バリウス(エリザ、無事でいてくれ!)
王女の部屋の扉を勢いよく開ける……バンッ!
バリウス「そ、そんな…………」
男「遅かったな、兄貴………」
エリザの胸から突き刺された長い剣は、エリザの背中まで貫通し、おびただしい出血が床に滴っていた。
バリウス「うぉああああぁぁぁ!!!!」
バリウスは怒り狂った様に目の前の男に剣を振る。冷静さを欠いた剣は空を切る。バリウスは大声で叫ぶ。
バリウス「ユリウスー!!!!……お前だけは絶対許
さんぞ!!」
ユリウス「兄貴、もう遅いんだよ。そして何も知
らな過ぎたな」
バリウス「なんだと?!」
ユリウス「まぁ、せいぜいクリスタリカみたいな
平和ボケした所で過ごしておけや
腰抜けのバリウスさんよ」
そう言い残して立ち去った。バリウスは追いかけようとするが、エリザの声に気付き駆け寄る。
バリウス「エリザ!……今助ける!」
エリザは首を横に振り、弱々しい手でバリウスの手を握った。
エリザ「バリ……ウス……わ、私は……あなた……を
愛……して…ます」
バリウス「オレもだエリザ!だから喋るな!
今助ける!だから………」
エリザ「私……は………幸せでし……た……
はぁはぁ……はぁはぁ……
……あ、あなたは…………生きて………」
エリザはその言葉を残して息を引き取った。
怒り、憎悪、悲しみが身体中を駆け巡り、自身と王国の無力さで我を忘れていた。
…………そして、バリウスは王国兵士達を殺し始めた。クリスタリカ王国の血の歴史である。
白龍族の生き残りは、この時を境に少数となり今もひっそりと暮らしている。
この事件を知った黒龍族も方々に散り、龍族の存在が無くなった様な時代が訪れた。
────現在────
バリウス「これが真実だ……」
──第5話に続く──