第8話 初めての錬金
当然のごとく俺は錬金の知識はない。
なので再びご先祖様に教えてもらうことにした。
「――――過去視、発動」
錬金台の前に現れるご先祖様の幻影。
それはまるで俺に見せてくれるように、錬金の手順を丁寧になぞっていく。
その流れるような動きを、俺はジッと観察する。
鮮やかで、無駄のない動きだ。神の目がなかったら動きを追うことすら難しいと思う。
「よし……覚えた」
動きを頭に叩き込んだ俺は、錬金台の前に立って作業を始める。
透明なガラス容器に『水神の水差し』で水を入れ、火をつけて熱する。
水が沸騰したら、あらかじめ粉にしておいた『エルフグラス』を容器の中に入れる。
そしてすぐさま錬金台に魔力を流し込む。
「流す魔力はこれくらいで大丈夫かな?」
レベルアップしたおかげで今の俺の体には魔力が満ちている。
まだ魔法を使う技術はないから魔法を使うことは出来ないが、装置に流し込むくらいなら感覚で出来る。
「……色が変わってきた」
容器内の水が、魔力と薬草に反応して緑色に染まる。
これでも回復効果はあるけど、回復薬とは言えない。
俺はトロールの牙を粉状にすり下ろした物をつまみ、容器に投入する。
モンスターの素材に含まれる特殊な魔力は、回復薬の効果を引き上げる。そう聞いたことがある。
牙の粉が入った瞬間、容器の中の液体は急速に色が変わり、もくもくと煙が発生する。
それでも逃げずに魔力を流し続けると……反応は収まり、回復薬は完成する。
「出来た……」
容器の中に残ったのは赤色の液体。
艶やかに光るその液体には芳醇な魔力を感じた。素人の俺が見てもすごい効果を持ってるのが分かる。
「【鑑定】」
【レッドポーション】
ランク:A
高品質の回復薬。
赤い回復薬は『神の血』とも呼ばれる。
体力回復だけではなく、欠損した部位も治す効果がある。
「……こりゃまたヤバい物を作ってしまったな」
市場に出回っている回復薬は緑色の物がほとんどだ。
ごく稀に黄色の回復薬も流れてくると聞くが、赤色のは聞いたことがない。
もしこれを売ったらとんでもない値がつくんじゃないだろうか。
「ま、当分街に行く予定はないから関係ないけどな」
そう言って俺はレッドポーションを部屋にあった小瓶に移していく。
一回で小瓶五つ分も作ることが出来た。材料はまだあるし、もう少し作るとするか。
「俺はまだやるからソラは寝てていいぞ。もう遅い時間だからな」
テーブルの上にいるソラにそう話しかけるが、ソラはふるふると体を振ってまだ起きるアピールをしてくる。
ちなみに家に入る時、この家の結界の設定は変えた。
最初は『家主アインの血に連なる者』だけが入れたが、今は『俺と友好関係を結んでいる者』も入れる。
そうしないとソラが家に入れないからな。
「この作業もだんだん楽しくなってきたな。どんどん作るぞ」
こうして俺は夜遅くまで回復薬作りに没頭するのだった。
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