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第9話 衝撃

 姉さんたちが来た次の日の昼頃。

 疲れも癒えた三人を、俺は森の外まで送り届けた。


「ありがとうございますリック。お世話になりましたね」

「これぐらいお安い御用だ。来てくれてありがとう、会えて嬉しかったよ」


 姉さんとそう言葉を交わし、握手する。

 あの国に帰すのは少し不安だけど、姉さんなら大丈夫だろう。


「リンも来てくれてありがとうな。姉さんを頼む」

「はい。お任せください。この命に代えてもお守りいたします」


 力強くそう誓ったリンを見て安心した俺は、最後にソフィアに目を向ける。


「じゃあ街まで二人を頼む」

「え、あ、はい! お任せください!」


 ギクシャクとした返事をするソフィア。

 前に会った時はもっと自然に話せていた気がするんだけど。


「なんだよその話し方は?」

「えっと、リック……じゃなかった、リッカード様は王子なんですよね? 今まで通りの接し方は良くないなと思いまして……」

「なんだそんなことを気にしていたのか」


 意外と律儀な奴だ。


「もう俺は王子じゃない一人の小市民だ、そんなにかしこまらなくていい。折角仲良くなったんだ、むしろそうされたら寂しい」

「そ、そう? じゃあ今まで通りに接しようかな」

「ああ、それでいい」


 最後にそう会話して俺は三人と別れた。

 去っていくその後姿を見守っていると、


「本当に一緒に行かなくてよかったの?」


 後ろの木の陰からヨルが出てきてそう尋ねてくる。

 他の三人は気づいていなかったけど、少し離れたところからこっそりつけて来ていたことに俺は気づいていた。

 俺が気づいていることにヨルも気づいており、振り返ってそっちに目を向けるとのんきに手を振ってきていた。


「ああ、大丈夫だ。今の俺の家族はお前たちだからな」

「……そう。リックがそう言うなら、いい」


 満足そうに薄い笑みを浮かべるヨル。

 俺は控えめに差し出された彼女の手を取って握り、仲良く帰宅するのだった。


◇ ◇ ◇


 姉さんたちとの思わぬ邂逅があってしばらくは、平和な日々を過ごした。

 狩りや採集をして、美味しいものを食べて、寝る。原始的だけどこれ以上の贅沢はないだろう。


 しかしそんな平和な日々も、ある日突然終わりを告げる。


「リックさん! いらっしゃいますか!?」


 突然の家の扉が勢いよく開いたかと思ったら、エルフのリリアが物凄い形相で入ってくる。こんなに急いだ彼女は見たことがない。


「どうしたんだリリア? 何かあったのか?」

「はあ……はあ……そ、そうなんです……はあ、急がないと、大変なことに……」


 肩で息をしながら、なんとか声を出そうとするリリア。

余程急いでいたんだろう。体中汗でびっしょりだ。


 ひとまず落ち着かせるため、椅子に座らせて冷たい水を差し出す。

 リリアはそれをゴキュゴキュと一気に飲み干し、一息つく。


「……ぷは。ありがとうございます。落ち着きました」

「そりゃ良かった。それで何があったんだ?」


 そう尋ねると、リリアは神妙な面持ちで話し始める。


「このパスキアの大森林には他にもエルフの集落が存在します。それぞれの集落のエルフと会うこと自体は少ないですが、友好関係を結んでいます」


 その話は何でもない時に聞いた覚えがある。

 ちなみに会ったことはないし、会いに行く予定もない。向こうもわざわざ人間と会いたくないだろうしな。

 俺と仲良くしてくれるリリア達の方がエルフ達からしたら異端だ。


「それでそのエルフ達がどうしたんだ?」

「実は最近、他の村のエルフがいなくなる事件が何件か起きていたんです。モンスターの仕業かと警戒されていたんですが……それが、人間の手によるものだと分かったんです」

「なんだって……!?」


 エルフは人里では滅多に見ることの出来ない希少種族。

 奴隷商人であれば喉から手が出るほど欲しい存在だ。


 捕まったエルフは娼館か金持ちの家に売られるだろう。

 その後の扱いは……考えるのも恐ろしい。


「今いくつかの村のエルフたちは、力を合わせて仲間の奪還作戦を立てているようです。数日以内にはその作戦を実行に移すみたいです」

「マズいな……エルフを捕らえているなら、相応に腕の立つやつを見張りにつけているはず。下手したら全員捕まっちまうぞ」


 むしろ助けに来ることを見越して罠を張っている可能性もある。

 人間はどこまでも残酷になれる生き物だからな。


「それで? エルフはどこに囚われているんだ?」

「えっと……それは」


 リリアは急に口ごもる。

 なにか言いづらい理由でもあるのか?


「どうした?」

「その、彼らが捕まっている場所は……リックさんの故郷、王都アルガードなんです」


 俺はそれを聞いた瞬間、頭を思い切り殴られたような衝撃を覚えた。

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