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第12話 赤い怪物

 レベル180のバラドに対して、俺のレベルは99。

 レベル差が倍近いバラドに正面から勝つのは難しいと感じるだろう。


 だが戦いはレベルだけでは決まらない。

 それはまだレベル6だった時の俺がレベル40のトロールに勝ったことからも分かるだろう。


 レベル差を埋める一番手っ取り早い手段は『強い武器を装備すること』。

 俺は聖剣アロンダイトの他にも、倉庫にあった高ランクの装備を複数装備している。



【怪力の指輪】

ランク:A

腕力が上昇する指輪。

オーガの魂が宿っているとされる。


【地殻の指輪】

ランク:A

防御力が上昇する指輪。

地面を千キロ掘った先にある地層から発見された。


【韋駄天靴】

ランク:A+

素早さが上がる靴。

走る際のスタミナ減少も抑えられる。



 これらに加えて、筋力が上がる薬『鬼哭丸』も服用している。

 レベル差は結構縮まっているはずだ。


 それにバラドはまだ今の体に慣れていないように見える。

 完全に乗っ取ったと言ってたが、急に他人の体になったんだ。上手く動かせなくて当然だ。


「くそ……人間風情が……っ!」


 恨みのこもった目でバラドは俺を睨みつけてくる。

 片腕を切り落とされたことがよほど頭にきたようだ。


「もう容赦せん。貴様の身も心も八つ裂きにしてくれる!」


 バラドの体から血の槍が放たれ、気を失っている三人の吸血鬼狩り(ヴァンパイアハンター)に突き刺さる。

 その槍は三人の血を一瞬で吸い付くしバラドに集めてしまう。


「吸血鬼の力は血によって目覚める。出でよ我が配下、血の眷属たちよ! 今こそ眠りから覚め、我の手足となって戦え!」


 バラドの足元に広がる血溜まり。

 その中からぬうっと赤い化け物たちが姿を現す。


 狼のような姿をしているものや、オーガのような姿をしているものまで、その姿形は様々だ。

 しかしその全てが血を被っているようなおぞましい見た目をしている。


 【鑑定】したところ、そいつらの名前は『赤の怪物(レッドモンスター)』で統一されていた。

 レベルは80~90。それほど強いわけじゃないが、数が多い。全部倒すのは面倒だな。


「だったら本体を叩くまで!」


 ソラとベルに赤の怪物(レッドモンスター)の対処を任せ、俺はバラドに突っ込む。それを防がんと赤の怪物(レッドモンスター)たちが襲いかかってくるが、聖剣でなんなく切り伏せる。


「こんなもので止められると思っているのか?」

「いいや、思ってないさ」


 なぜか余裕の笑みを浮かべるバラド。

 いったい何を考えているんだ?


「私は人間と何度も戦っている。貴様らが何を嫌がるかも熟知しているのだよ」

「何を言って……」


 瞬間、嫌な予感がした俺は振り返る。

 すると赤の怪物(レッドモンスター)の一体が、後ろの方で控えていた少女ヨルのもとに駆けていた。


「私から逃げた花嫁には罰が必要だ。そう思わないか?」

「下衆が……っ!」


 なんとこいつはあろうことか戦えない少女を標的にした。

 吸血鬼になっているから多少の傷を負っても死ぬことはないだろう。だが痛みは感じる。そこは人間と変わらないはずだ。


「待ってろ!」


 急ぎ引き返す。

 ソラとベルを確認するが二人とも赤の怪物(レッドモンスター)の相手に手一杯で援護は期待できなかった。


 俺は全力で駆け抜けるが、それよりも早く赤の怪物(レッドモンスター)が少女のもとにたどりついてしまう。


『ルル……』

「い、いや……!」


 歪な形をした爪が少女の胸元に振り下ろされる。

 しかしその刹那、小さな黒い影が突然飛んできて両者の間に割り込んでくる。


「この方は私の希望! これ以上決して傷つけさせませぬ!」


 そう言ってヨルを庇うように現れたのは、マジックバットのモルドだった。

 モルドは自らの体でその爪を受け止めた。


爪はモルドの体を突き刺し、致命傷を与えるが……その後ろの少女を傷つけることはなかった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] …モルド…あんた…凄い漢や! リック!あの鬱陶しい黒い虫並みにしぶとく嫌らしく 気持ち悪い血吸虫を、絶対叩きのめしてくれー!!!気持ち悪い輪廻の命を絶ちきってやれーーー!!!
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