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第11話 バラド公

 突然その姿を表した、吸血鬼バラド。

 【鑑定】してみた結果そのレベルは驚異の180。


 最大限の警戒をしながら俺はそいつに質問する。


「おかしいな。あんたは吸血鬼狩り(そいつら)に討たれたと聞いたんだが」

「確かに私の肉体は死んだ。嘆かわしいものだ、油断していたとはいえこのようなカスに殺されたとはな」


 やれやれといった感じでバラドは言う。

 どうやら一度討たれたのは間違いではないようだ。


「だが私は死の間際、人間の体に自分の血液を打ち込んだ。記憶と魂を混ぜた特別な血液をな。私はこの体の中でゆっくりと再生し、そして体の主導権を乗っ取ることに成功した。これぞ吸血鬼の中でも選ばれた者のみが使えるスキル『血の転生』。我ら吸血鬼はそう簡単には討てぬよ」


 くくく、と笑うバラド。

 心底楽しげだ。


「昔の吸血鬼狩り(ヴァンパイアハンター)は体が乗っ取られることを恐れ、リスクを承知で自分の血液に銀を混ぜていたが……最近の吸血鬼狩り(ヴァンパイアハンター)はそれを怠っていたようだな。ぬるい時代だ」

「ふん。そのぬるい吸血鬼狩り(ヴァンパイアハンター)に一度負けたんじゃないか」


 そう挑発をかけてみるが、意外なことにバラドは動じなかった。


「ああ、その通りだ。だがもう二度と不覚は取らない。力を取り戻したのち、吸血鬼狩り(ヴァンパイアハンター)は絶滅させる」


 バラドの尻尾が蛇のように動き、その先端が気絶している吸血鬼狩り(ヴァンパイアハンター)の腹に突き刺さる。


 ごきゅ、ごきゅ、という音とともに吸血鬼狩り(ヴァンパイアハンター)の体は萎んでいき、ミイラのような姿になってしまう。

 こいつ、血を吸っているのか……!?


「ふう、ごちそうさま。女の血のほうが美味しいが、空腹の時は男の血でも美味しく感じるものだ。さて、お話はこれくらいにして……私の妻を返してもらおうか」

「させるかよロリコン吸血鬼。悪いがまた眠ってもらうぞ」


 聖剣を構え、バラドに突っ込む。

 するとバラドは自らの手のひらから血を出し、それを固め剣の形にする。


 お互いの剣がぶつかり、火花が散る。

 バラドの剣は血で出来ているとは思えないほど硬かった。


「ほう……ただの人間にしては恐ろしい力だ。貴様何者だ?」

「俺はただの人間だよ……っと!」


 相手の剣を弾き、胴体に斬りかかる。

 しかしバラドは素早く回避し、反撃してくる。俺はその一撃を見切り聖剣で受け止める。一進一退の攻防が続く。


「ふふ、謙遜するな。人間でここまでやれるものはそうはいない。どうだ? 私の臣下にならないか? 共に愚かな人間を殺し、贅の限りを尽くそうではないか」


 驚くことにバラドは本気で俺を勧誘しているようだった。

 この誘いに乗れば、バラドは本当に俺のことを仲間にしてくれるのだろう。だが、


「ずいぶんつまらない提案だな。俺は今の生活が気に入っているんだ。畑を耕し、美味しい料理を作って、家族と楽しく暮らす今の生活がな。お前との暮らしはつまらなすぎる」

「愚かな……しょせん人間であったか。ならば」


 バラドの羽がぶわっと広がり、体から強烈な魔力が放たれる。

 そして体のあちこちから血が吹き出し、それが空中で刃の形となる。


「死ね」


 降り注ぐ血の刃。

 上下左右あらゆる場所から襲いかかるそれに逃げ場はない。


 しかも緩急をつけながら時折軌道を変えながら突っ込んでくる。


「ふはは! この攻撃を人間の目で全てを捉えることは不可能っ! 串刺しにしたあと、ゆっくり血をいただいてやろう!」


 確かにこの攻撃を見切るのは不可能だ。

 ……普通の人間の目、ならな。


 俺は目に全神経を集中させ、血の刃を見る。

 するとその刃がこの後どの様に動くかが理解できた。


 そう、この目は過去だけじゃない。未来を見ることも出来るんだ。


「ふっ! はっ! ここっ!」


 なるべく刃が通らない道筋ルートを通りバラドに接近する。

 どうしても当たるものだけ聖剣で防ぎ、俺はどんどん前に進む。


「ば、馬鹿な!? 人間ごときが私の攻撃を……っ!?」

「くらいな! これがお前が馬鹿にした人間の力だ!」


 聖剣を振り上げ、思い切り振り下ろす。

 バラドはその一撃を血の剣で防ごうとするが、遅い。聖剣はバラドの右腕に命中し、やすやすとそれを両断した。


「ぬ――――っ!?」


 痛みに顔を歪めるバラド。

 腕の傷口からはしゅうう……と煙が上がっている。どうやら聖剣は吸血鬼によく効くみたいだな。


「よくも私の腕を……許さんっ!」

「許さないのはこっちだ。腕一本で許してもらえると思うなよ?」



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