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第11話 エルフの少女

「殺されるだって?」

「そうなんです! 早くしないと……!」


 そこまで言ってエルフの少女は立ち上がろうとするが、足に力が入らずその場に膝をついてしまう。

 どうやら相当疲れているみたいだな。


「まず一回落ち着こう。俺はリック、あんたは?」

「私の名前はリリアと申します。見ての通りエルフです」


 そう言って彼女、リリアはぴょこぴょこと耳を動かす。


「分かったリリア。話を落ち着いて聞かせてもらえるか?」

「はい……分かりました」


 リリアは辛そうな表情でゆっくりと語り始める。


「昨日のことです。突然大勢のオーガが私の住んでいる村を襲ってきたんです。私たちは当然抵抗しましたが……オーガは強く、私たちは敗北しました」


 涙をぽろぽろと流すリリア。

 よっぽど怖い目にあったんだろうな。


「私の仲間たちは村で一番大きな木の上に建物を作って籠城しています。しかしオーガたちが相手では長くは保たないと思います。だから私は外の人に助けを求めに来たんです!」


 リリアは真剣な表情で俺を見る。


「貴方は森の外から来たんですよね? でしたら外で強い人たちを呼んでいただけないでしょうか? お金は……それほど持っていませんがお支払いします。それでも足りないのであれば……か、体でお支払いいたします、奴隷として売り払っていただいても構いません。ですので、どうか家族と仲間だけは……」


 涙を必死に堪えながらリリアは懇願する。

 なんて強い子なんだ。


 俺は彼女のもとにしゃがみ込むと、その肩に手を置く。


「……残念ながら俺は外から来たわけじゃない。この森に住んでいるんだ」

「へ? この森に?」

「ああ。だから助けを呼びに行くことは出来ない。だけど……」


 不安に揺れる彼女の瞳を見ながら、俺は力強く言い放つ。


「君の仲間は、俺が守る」


◇ ◇ ◇


 俺の一番古い記憶は、母上と過ごした時の会話だ。

 幼い頃の俺は優しい母上のことが好きでよく甘えていた。


「民を救える強く、優しき王になるのですよ」


 それが母上の口癖だった。きっと母上は父上が力に溺れてしまうのが分かっていたんだと思う。だから俺と兄上にそう言っていたんだ。


 ごめんなさい母上。俺はもう王にはなれません。

 でも母上のように優しく立派な人にはなってみせます。


 だからどうか空の上から見守っていてください。


「しっかり掴まってろよ!」


 俺はそう言って森の中を全速力で駆け抜ける。

 背中にリリアを背負いながら。


「ひいぃっ! 速すぎますっ!!」


 背中の上で泣き叫ぶリリア。

 可愛そうだけど我慢してもらうしかない。


「あなた何者なんですか!? 普通の人間はここまで速く走れませんよ!」

「まあ色々あってな」


 神の目を持っていると言っても信じてもらうのは難しいだろうし、なにより俺の身の上を話すには時間が惜しい。今は一刻を争うからな。


「あ、そこの木を曲がってあっちに……」

「大丈夫分かってる。こっちだろ?」

「へ? なんで分かるんですか!?」


 俺の目には神の目が映し出した光の筋がはっきりと見えている。

 この先にエルフの村があるはずだ。俺は気を引き締めてスピードを上げるのだった。

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