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02 少女と悪夢の始まり

「おっはようハル〜!」

「おはようリア。今日は早いね。」

「ふんふふん。今日はついに測定試験だからね!」

 いつも一番後ろの席で、うつらうつらと船を漕いでいる人間と同一人物とは思えない程のしゃっきりとした声で返事をしたのは、愛くるしい花の様な少女、リアだった。

 今日行われる、魔法量測定試験。その概要は、事前に周知されていた。

 魔法量測定とは、正式に言えば「体内魔法濃度測定」である。魔法は大気中の水分を源とする水、大地の恵みを源とする地、日の力を糧とする火、あらゆるもののから発生する微電子を元とする雷、そしてこの空を流れる風の5つの属性に別れている。

「風の伝説となる私の歴史は、今日この日から始まるのさ!」

 基本的に、人は何かの属性に対する適正が、突出して高い。その一方で、他の属性の魔法であっても、多少であれば扱えるというのが一般的だった。つまり、主とする属性はあくまで「得意分野」のようなものなのだ。

 例えば「水」であれば、大気中からの水の魔力を体内に取り入れ、増幅させ、それらを決められた形に沿って体外に押し流す事によって、魔法になる。

 その際の「体内に取り入れる事が出来る量」と「増幅させる量」によって、扱える魔法の量や力の強さは決定付けられる。それが、現代の魔法学で広く普及している考え方であった。

 この、体内に流れる魔法濃度を測定するのが、今日行われる測定試験である。つまり、今年の入学者各人の魔力の強さが、今日の測定によって決定付けられるのである。

 いわば、魔法士の格付け試験。

 その為に私達一年生、総勢六十名余りは、見渡す限り原っぱの訓練場に、午前中から集められていた。

「この測定って半年に1回くらいはやるんでしょ?どうしてそんなに気合いを入れるの?」

「甘いね、ハルは。いい?過去のどの賢聖達も、一回目の魔法量測定で、爪痕を残しているのさ。それに、魔法量はそう簡単には上がらない。だから、伝説を目指す私にとって、今日は負けられない戦いなの!」

 リアの目は、見えない敵を見据えてメラメラと燃えている。

 そういうものなのか。と、周りの学生達を見渡す。確かに、今日の測定を前に同級生達は皆、緊張した面持ちの者や、興奮した様子で夢を語る者が大半であった。

 しかし、静かな興奮で沸き立つ場内の熱気は、ある一言によって、一瞬で凍りつく。

「今年もピンと来る人はいないわね。」

「やめろセシリア。ノアに人の気持ちが分かる薬を調合して貰おうか。」

 一切の物音も立てず、誰もいなかったはずの生徒達の背後、訓練場入り口に突然現れた膨大な魔力の気配。

 集められた誰もが振り返り、そして、そこに立つ二人の人物を見た瞬間に、思考を停止させた。

 一人は、新緑を思わせる長い髪を一つに縛り、牡鹿の様に凛とした佇まいで、ゆっくりと瞬きする少女。

 そして、その隣で無表情で佇むのは、あの夜ハルを串刺しにしようか考えあぐねていた暴君――と、ハルは一方的に思っている――セシリアに他ならなかった。

「セ、セシリア様だ……。」

「隣にいらっしゃるのはオーネット様?初めて見た。」

「性別不詳の魔剣士って噂は本当?」

 騒然とする、訓練場の空気。その空気を割ったのは、測定試験を担当する講師だった。

「こちらへ集まってくださーい。」

 講師は四十歳前後だろうか。試験概要の説明をしているが、大半の生徒は話半分。背後に立つ二人を盗み見ては、ヒソヒソと何かを話し合っている。

 そりゃ、あんなに存在感放たれてたら、誰でも気になるよね。

 かくいうハルも同様で、講師の話が全く頭に入ってこなかった。

「ハルはセシリア派?オーネット派?」

 全く落ち着かない空気にハルが苦笑いしていると、隣で同じ様に背後の二人を盗み見ていたリアが話しかけてきた。

「セシリア派って……?何となく察しがつくけれども。」

「この学園の四賢者は全校生徒の憧れの対象だからね。何なら、賢聖目当てで入学してくる人も少なくないよ。誰を推すかを決めるのが、新入生の最初の仕事とも言われているのだ!」

「なんだそりゃ」

 皆優秀なはずなのに、それでいいのか国内最高峰。

「うーん、セシリア様は絶対に嫌だから……オーネット?様かな?」

「ほうほう。なかなか通ですな。」

「通ってどういう意味!?」

 意味深なリアの言葉が引っかかりつつ、「移動してください」という講師の声に従って、測定機と呼ばれる装置の方に向かう。

「セシリア様が嫌って珍しいよ。実力も見た目も、圧倒的な一番人気なのに。」

「確かに見た目は美人かもしれないけど、あの人ぜったい頭おかしいよ……。」

「――頭がおかしいって、誰の事?」

 声の主は、もちろんリアではない。嫌な予感。それを裏付ける、果物のケーキの様な甘い香り。

「「セシリア様!?」」

 突如背後に現れたセシリアに、リアと同じように、驚きで全身を硬直させる。

「毎回驚かせないと、登場もできないんですか!?」

 当のセシリアは、そんなハルの悪態を一向に意に介すこともなく、無表情のまま――と思いきや、その口元はほんの少しだけ、微笑を浮かべている様にも見えなくもなくもないくもない。しかし、それは決して女神の様な優しい微笑みではなく、どちらかというと捕食者の獣が小動物を弄ぶ様な、獰猛さが見え隠れしている笑みであった。

「ねえオーネット。魔力の無い人間って、存在する?」

 セシリアは、リアとハル――特にハルからは一切目を逸らさず、背後の同行者に問いかける。

 ハルの背後からゆっくりと現れた緑髪の麗君、オーネットと呼ばれた少女は、いつもの遊びに付き合うかの様に、淡々と答えた。

「魔力が無い人間なんて、いる訳がない。存在できないという言い方の方が正しいな。体内の魔力を奪う事で、人の命を奪う闇魔法や毒薬も存在する。」

「そうよね。」

 あっさりとしたセシリアの反応に、オーネットは「なんでそんな事聞いたんだ?」と訝しげな表情をしつつ、ちらりと、茶色の瞳をリアとハルに向けた。

「セシリアの急な行動に巻き込んですまなかったね。測定頑張って。」

「「は、はい!」」

 セシリアの苛虐的な表情とは異なる、オーネットの優しい表情と言葉。そして、中性的な表情。素直なハルの心臓は、ドキッと心拍数をあげた。

 四賢者と一括りに言っても、どっかの悪魔みたいな人ばっかりじゃないんだ。

 考えてみれば、四賢者全員がセシリアの様に極悪非道の人間だけであれば、学生の大半は卒業までに串刺しにされているはず。

 なんて、オーネットの流麗な毛束を眺めながら無礼極まりない事を考えていると、リアが聞いたこともないほど、緊張の迸った声を上げた。

「私、この度入学したリア=ロペスと申します!こちら、友人のハルです!お忙しい所お引き留めしてしまいすみません!それでは!失礼します!」

 私は一瞬、リアが別人になってしまったのかと思った。まるで、機械仕掛けの人形のような返答。リアはハルの手を握ると、足早に他の生徒の集団の方へ歩き出した。その歩き方も、どこかぎこちない。

「ちょっとリア?」

 そんなに慌てて、どうしたのだろうか。

「いま、オーネット様は優しいなって考えてたでしょ?」

 図星だった。

「うん。何かへん?」

「オーネット様を初めて見た人は、みんなそう思うだよ。でも、オーネット様には、気を付けた方がいい。オーネット様の別名は、グラソンの守護神。」

「守護神?それなら尚更素敵じゃない。」

 少なくとも、絶零の魔女なんて呼ばれているどこかの青い悪魔なんかよりは、よっぽどいいと思う。だけどリアは「これだから素人は」と呆れた顔で、首を振った。

「いい?オーネット様は、誰よりも規律を重んじるの。そして、この学園の四賢聖は、絶対的な権力を持つ。制服だって、講義内容だって、どの生徒を入学させ退学にするか。その命すらも。全部、四賢聖の掌の上さ。」

「い、命!?」

 生徒の命を、同じ生徒が奪うだなんて、そんなことが本当にあるだろうか。大袈裟すぎる。そう思いたいけれど、入寮の日に自らの身に起こったことを振り返れば、大袈裟だとも言い難い。

「グラソン魔法学園に限らず、四校は常に大勢の政界人や魔法界の要人、将軍を輩出している。グラソン王国の国政とは切っても切り離せない関係なんだ。だからこそ、色んな情報や思惑が、私たちの知らないところで、知らない間に画策されている。四賢聖はその中でも生徒を守り、育てる役目があるの。」

「だったらやっぱり、オーネット様は安心じゃない?」

「逆だよ。つまり、危険と判断した生徒であれば、例え生徒でも殺される。もちろん、退学や投獄が第一選択だけどね。とにかく、四賢聖は自らの手で生徒に処罰を行う権限を持っているんだよ。」

「だから、オーネット様は……。」

 ようやくリアの話の行き着く先が見えてきたハルは、ぎゅっとリアの手を握った。

「オーネット様は、第三位の実力を持って、規律を重んじる。だからこそ、学園のルールを破るような輩には、四賢聖の中でも最も容赦しない。在籍三年にして、下した処罰は歴代で一番多い。生徒内に潜んでいた革命軍の手先を、容赦なく切り伏せた事でも有名さ。」

 やっぱり、四賢者はやばい人しかいないんじゃないか。みんな、私より二歳くらいしか変わらないのに。

 卒業までの学園生活。とにかく大人しく、目立たないように過ごそう。思ってもみなかった四賢聖の裏側に、ハルは固く誓いを立てるのだった。

 その誓いは、この直後、一瞬で破り去られてしまう事も知らずに。



* * *

 


「魔力濃度測定試験を始めます。」

 ハルを含めた60人余りの1年生は、訓練場の真ん中に設置された、人の肩ほどの高さがある装置の前に集められた。

「これが魔力濃度測定装置〈アルカナ〉です。一つにつき家を五十軒は建てられる金額の代物なので、決して変な事をして壊す事が無いように。」

 切り出した岩を思わせるような装置には、上部に手をかざせる様な円盤が付いており、その中央には何色かの石が嵌め込まれている。

「まずは私がお手本を示します。よく見ていて下さい。」

 教師はそう言って円盤に手をかざすと、自身の名前を名乗り、目を瞑って、呪文を唱えた。

「メディルス」

 円盤に取り付けられていた石のうちの一つ、茶色い石が仄かに光り、やがて増幅しながら、淡い山吹色の光となって放射状に伸びていく。

「この様に呪文を唱えたら、断続的に魔力を流し込んでください。」

 広がった光は、講師を包む様に収束し、数秒ほどで消えた。

「流し込む量は微量で問題ありません。量によって結果が変わる事はありませんので、くれぐれも変な真似はしない様にして下さい。測定の結果は、銅の板に複写されます。」

 講師が指さしたのは、装置の下部。古びた銅板には、教師の名前と「81」という数値が表示されていた。

「私の場合は、8.1%という結果になります。また、先ほどの光の色は主属性です。私の場合は地属性ですね。」

 なるほど。と、頷く。

 私の場合であれば、恐らく水属性を示す青色の光が現れるという事だ。

「この測定に危険は伴いませんが、新入生の各々の能力が初めて公式に定められる場である事から、例年第一位と第二位の賢聖様にも同席いただいています。」

 講師が、私たちの背後に立つセシリアとオーネットの方を見る。

 あれ、でもオーネット様は第三位って言ってなかったっけ。私の抱いた疑問は、この場にいる他の生徒も同様だった様らしい。ハルの斜め前にいたオレンジ頭の短髪の少女が、手を挙げた。

「一点質問です!入学時、第二位はクロエ様と伺っておりましたが、こちらにいらっしゃるのはオーネット様とお見受けします。クロエ様の身に何かあったのでしょうか?」

「ええと、そうですね……オーネット様、クロエ様は一体……。」

 講師も何も聞いていなかったのだろう。戸惑いながら、遠慮がちにオーネットの方へと視線を向ける。講師と四賢聖の間にどのような力関係があるのかを窺い知るには、十分な素振りだった。

「私から回答します。」

 口を開いたのは、意外にもオーネット本人ではなくセシリアだった。

「第二位はクロエ=ウェストコリン、これは事実です。そしてここにいるのは第三位、オーネット=ロンド。クロエは事情があって欠席しているので、代役を頼んだ。それだけの話。それと今後、四賢聖の全ての行動、発言、決定に関しては一切の質問も許しません。気になる事があれば、各々の魔法で解き明かしなさい。」

 セシリアが言い切ると、訓練場は再び静まり帰る。セシリアとオーネットは、痛いほどの緊張感を気にすることもなく、悠々と闊歩するよにうに、訓練場の隅へ歩いて行った。

 いくら四賢聖でも、もう少し言い方というものがあるだろう。そう言ってやりたいくらいであったが、質問をしたオレンジ髪の少女は、どこか頬を高揚とさせている。まるで妄想の世界で、運命の人と初めて目があった瞬間かの様に、両手を胸の前で握って。

 この生徒だけが狂っているのか。ハルは周囲に目を向けるが、大多数の生徒がオレンジ髪の少女と同じ反応であった。どうやら四賢聖という存在は、それほどまでに狂信的な人気があるらしい。

「無駄だよハル。なんでハルがそこまでセシリア様を嫌っているのかは分からないけど、あのお方のカリスマ性は、ここにいる殆どの生徒を虜にしているから。」

「別に毛嫌いしているつもりは無いんだけど……。」

 ただ、人の上に立つ人なら、あんなに角が立つ言い方しなきゃいいのに。

 歩くセシリアの背中に、ハルは他の生徒の視線とは異なる視線を向けるのだった。



* * *


 

 セシリアとオーネットが訓練場の奥にある席に着くと、いよいよ魔力量測定会が始まった。

 一年生は測定器の前に列をなし、全員が緊張した面持ちで、自分の順番を待つ。そして測定を終わった者の殆どは、想像よりも低い結果に落胆していた。

「なんでみんなあんなに落ち込んでいるの?」

「この学園に入学している生徒は、みんな名家の人間か、幼い頃から"神童"と呼ばれてきた人達ばっかりなんだよ。もちろんハルみたいな例外もいるだろうけどね。ちなみに、魔法量濃度の平均ってどれくらいか知ってる?」

「あの先生で8.1%だったから、5%くらい?」

「いい線行ってるね。男女差はあるけど、魔法師の中だと2〜5%が一般的。10%を越える人間なんてごく僅かで、その殆どが、大臣や大将軍クラスとかの"高等魔法士"って言われる様な人。ちなみに賢聖になるには、10%以上の魔法量が条件。つまり、あの装置で"100"を叩き出せば、その瞬間に賢聖入り確定ってワケ。」

「じゃあ、あのセシリア様も?」

「あの人は別格だよ。セシリア様はこの装置で初めて20%越えを叩き出した、500年に一度の逸材。」

「確かに、そう聞くとものすごい人なのかも……。」

 魔法量濃度の平均値という概念を知ったばかりのハルでも、その凄さはよく分かる。現に、入寮初日の夜に体感した、セシリアの発するオーラは、明らかに通常の人間が孕んでいいような雰囲気ではなかった。

「もうすぐハルの番だよ!気合入れてがんば!」

 リアとの話に夢中になっていると、あっという間にハルの順番になっていた。

 魔法量というものは、気合いで何とかなるものなのだろうか。

 私の一つ前の順番の少女は、緑色の光に包まれている所である。

 私の属性は、たぶん水。魔法量は……あの水魔法しか使えないし、良くても4%程度だろう。

 自分の能力に、期待をしている訳ではない。神童と謳われるような人生を送ってきた同級生と比べれば、言うまでもない結果になることは、間違いがなかった。

 ただ、今まで漠然と認識してきた自分の魔力量が初めて数値化されるという機会に、さすがのハルにも、緊張が走る。

 前の少女の測定が終わり、装置の前に歩み出た。

「名前を」

「はい!ハル=リースリングです!」

 目の前に立った装置は、遠くで見たときよりもずっと大きかった。それでも、年季の入った風合いから、途方もないエネルギーを感じる。気圧されまい。覚悟を決めて、岸壁のような威圧感のある壁面の円盤に、手をかざした。

 温かくも、冷たくも無い。後はこのまま、呪文を唱えるだけ。

「メディ……」

 ハルが口を開きかけたその時、覆い被さるようにして、すぐ隣りからぬっと腕が生えた。というより、後ろに立つ人物によって、腕が掴まれた。

「うえ?」

「君の測定は、一番最後にして貰ってもいいかな?」

 ハルの腕をそっと、しかし簡単には抜けられない程の力で掴みながら見下ろすのは、グラソンの守護神――オーネットであった。

 この音もなく現れるパターン、どこかで物凄く既視感があるな!?

 突然の事態に、周囲の生徒が「何があったのか」とざわめき立つ。同時に、次の順番を待つリアが「今度は一体何をやらかしたんだ」と、心配半分呆れ半分の様子でこちらを見る視線を感じた。

「えっと、一番最後……ですか?」

 散々レベルが違うと聞かされていた四賢聖の登場に、聞き間違いではないかと聞き直す。

「そうだ。君がこのタイミングで測定をすると、何だか物凄く悪い予感がしてね。正しくは、悪い結果になるかもしれないっていう予測みたいなものが出ている訳なんだけど……とにかく、順番によって検査の結果が変わる事もないから、一番最後に回ってもらえるかな?」

 予測。それも、魔法の類の一種なのだろうか。

 いまいち、オーネットが話している事の意味が分からない。だがリアの話では、このオーネットという人はかなりやばい人らしい。規律の為なら、容易に人を切り捨てる。そんなリアの助言を思い出した。

「は、はい勿論です!」

「協力感謝する。」

 オーネットは作ったような笑顔を浮かべると、握っていたハルの手を離し、後方の席へと戻って行った。

 何だったんだ、一体。

 言われた通り列の最後尾に回るが、ハルの頭の中は、緊張や疑問で混然としていた。

 それからリア、他の生徒と測定試験は順調に進み、一刻も経たずして、最後尾のハルの順番となった。

 測定が終わった生徒は教室で自己研磨という指示であったが、いかんせん先程のオーネットとのやり取りを見ていた生徒達は、「何か起きるのではないか」と。数十人程がハルの測定を見学すべく、周囲に集まっていた。

 気まずい、それに尽きる。

 好奇の目に晒されながら、注目を浴びるきっかけとなった四賢聖二人の方を振り返るが、二人は「我関せず」といった姿勢で、セシリアは頬杖をつき、オーネットは姿勢を正して、測定の様子を眺めているだけである。

 とても、何かが起きるような状況とは思えない。私が変に注目を浴びる様子を見て、楽しんでいるのだろうか。性格に難のある四賢聖のことだし、だとしたら納得だ。こんなに注目を集めておいて「意外と大したことないやつじゃん」という事になれば、後ろ指をさされ、やがてはクラスでのいじめに発展……うわ!絶対そうだ!陰湿すぎる……!

 悶々と一人で考えながら、装置の前に立つ。

 もちろん装置には、先ほど並んだ時と何の変化も無い。だが、周囲の生徒からの視線や、先程のオーネットとの一件が、「ここに手をかざしてしまうと、これまでの世界の何かが、崩れてしまうのでは?」という、直感的な警鐘をハルに鳴らしていた。

 これはただの測定機。これはただの測定機。

 測ったからといって、何か変わるものでもないし、危険はないって先生も言ってたから……。

 きっと、大丈夫。

 冷や汗で揺れた手を握りしめると、ハルは左手を装置にかざした。

 右手を胸の前で軽く握ると、俯いたまま、目を閉じる。

 悪い予感なんて当たらない。四賢聖だって、間違える事はある。

 私はただ、セモール村で生まれ育っただけの、どこにでもいる子ども。ハル=リースリングなんだから。

 ハルへ好奇心の目を向けていた生徒達も、会話を止め、中央のハルを見る。吹いていた風が止み、訓練場を照らしていた太陽が雲に隠れた。まるで、体感温度が2、3度下がったかの様な空気が流れる。

 静まり返った訓練場で、ハルは呟いた。

「――――メディルス」

 円盤上の青い魔石に、柔らかい光が宿る。その光は、これまでと同じように放射状へと拡散して、ハルを包む――と、思われたのだが、予想外に魔石に宿った光は弱々しく、何度かの点滅を繰り返すと、光を失った。

「…………え?」

 予想外の出来事に、静寂が訓練場を支配した。その場にいる全員が、呆然と立つハルを「何が起きたんだ?」という表情で見つめている。

「失敗……?」

 ハルは、円盤にかざしていた手のひらを眺めて呟く。

 上手く作動できなかったのだろうか。それとも、流し込む魔力の量があまりにも足りなかったのか。

 再度実行してみようと、もう一度ハルが円盤の上に左手を掲げようとすると、講師がそれを引き止めた。

「いえ、正常に測定は行われた様です。ですが、数値が……。」

 講師が指さす先。そこでは、確かに銅の板に数値が点滅していた。


 ーーーーーーーーーー

 hal riesling

       430

 ーーーーーーーーーー


「何、これ……。」

 一瞬、その数字を目にした全員、講師までもが、目の前で起きている状況を理解できずに言葉を忘れた。

 一拍置いて、輪が広がるように、生徒達がざわめき出す。

「430って事は…………43%?」

「セシリア様の倍だなんて、そんな」

「化け物か、何かしら仕掛けがあるに決まってる。絶対におかしい。」

「故障?」

 生徒は口々に、憶測や僻みの混じった意見を口にし、その場の中心でただ狼狽えるハルを、敵意の混ざった視線で見つめていた。

「わたしっ、何が何だか…………」

 その時だった。

 突如、落雷と地震が同時に起きたように、大地を割く重低音が響き渡る。

「きゃっ!?」

 文字通り、地面が逆さにひっくり返ったような振動。同時に、数センチ先の装置すら見えなくなる程の土埃が、ハルの周囲を覆う。

 何が起こったのか分からず、生徒たちの悲鳴が辺りに響いた。

 土埃が落ち着く頃。ようやく生徒たちから視認できたのは、訓練場の装置の前でうずくまる人影。

 それは、片手を捻り上げられながら、うつ伏せに倒れる、ハルの姿だった。

 そして、ハルともう一人。片膝をハルの背中に乗せ、首元に片手剣を押し当てる人物。それは、グラソンの守護神。オーネットであった。

「随分堂々とやってくれたな。」

 肺を圧迫されて息ができない苦しさに、ハルの目に涙が滲む。

 打ち付けたのか、頭からも僅かに血が流れ、左半分の視界が赤くぼやけた。背中に乗せられた足には、かけられる体重が徐々に増し、肋骨の辺りから、擦れるような気持ちの悪い音が響いた。

「ぐ、うっ」

 細かい砂利が、地面に擦りつけられたハルの横顔に、傷を作る。

 このままじゃ、肋が折れるっ……。

 苦痛で顔を歪めるハルの事など、意に介さず。オーネットは、言葉を続けた。

「狙いはなんだ?咎人め。この装置は聖具の類。小細工はできない。どこで何と契約をした。何が目的だ。全て吐け。吐いたら一瞬で殺してやる。吐かないのであれば、苦しんで死ね。」

「何、言ってるんですかっ……とが、びとって……っ」

「そうか。苦しんで死にたいのだな。」

「ちがっ……ぐあぁぁぁぁっ……!!!」

 ハルの言葉の終わりを待たずして、脇腹に感じた初めての感覚。燃え上がるような熱感と、それを大きく上回る激痛。首に当てられていた剣を脇腹に突き刺されたのだと認識するのは、一瞬であった。

「臓器は外した。まだ死ねないぞ。」

「ぎ、いっ」

 服を温かく湿らせているのは、恐らく自分自身の血だろう。心臓の鼓動とともに、滑り気が脇腹を伝って、肩、腹部へと広がって行く。

 戦闘などとは無縁の世界で育ってきたハルにとって、これまで腕を枝の先で切ったり、岩場から滑り落ちて、脚を骨折したりした経験はあった。だが、こんなに激しい傷、それも、剣で突き刺される痛みなどに、当然耐性などは無い。あまりの痛みに、脳に血を上らせ、必死に叫ぶ事しかできなかった。

「ぐううっ、ひ、はひっ……!」

 死ぬの?私、ここで。

 痛みで朦朧とする意識の中。必死に血を吐きながら、呼吸を紡ぐ。そんなハルに、オーネットは冷たい眼差しを向けた。

「痛いか?楽にして欲しいか?ならば吐け。貴様は何が目的だ。咎人と戦ったことはないが、先月戦った盗賊団の長は、両腕両足を落としてやったら吐いたぞ。」

「ぐぅっ……フーッフーッ」

 大量の出血により、ハルの視界が狭窄する。とめどなく溢れる血に、叫ぶ力は消え失せ、意識がぼやけた。

 冷たい、寒い。これが、死の感覚なのだろうか。

 一体、私が何をしたの。

 リア、助けて…………。

 閉じられていく視界の中、青ざめてた表情でこちらゆ見つめる、桃色の髪の少女――リアの姿が目に入った。

 リア、リア…………。

 最後の力を振り絞り、片手をリアの方へと、伸ばしかける。だが、

「ほう、同胞がいるのか。」

 オーネットの言葉に、飛びかけていた意識が、ほんの少しだけ覚醒した。

 ダメだ。今リアに助けを求めたら、リアまで同じ目に遭うことになる。そんな事は、絶対にできない。

 心臓の鼓動の度、襲いくる地獄の様な痛み。その合間で、リアの優しさと、太陽の様にあたたかい香りを思い出す。

「はっはっ……知ら、ない…………。」

 いつ意識を失ってもおかしくない程の激痛と、遠ざかる意識。その中で、無けなしの力を振り絞って、脇腹に刺された剣に触れる。

「咎人なんて、知ら……ない…………。」

 出血が酷くなる事も省みず、剣を握る腕に力を込めた。だが、重傷を負った体では、刀身の刃によって、逆に自らの指に傷が入る程度で、剣を僅かに動かす事すら、叶わなかった。

「誤解するなよ。脇腹を串刺しにしただけで吐くとは、こちらも思っていない。」

「あぐッ!?」

 ぐしゅりと、音がなった。顔に飛ぶ液体。

 背中に乗っていたオーネットの重みが消えると同時に脇腹に刺されていた剣が突然引き抜かれ、ハルの体が わずかに浮き上がり、血飛沫を上げる。

「がはッ………………!!?」

 麻痺しはじめていた痛みが何倍にも増し、視界の色が急速に失われる。

 死。その一文字は、もう避けようのない距離にいた。

「次は片脚を削ごう。右と左、どちらがいい。」

 芋虫のように地面を這うハルの上で、オーネットが剣を構えた。

「回復魔法でどうにかしようと考えているのであれば、無駄だ。私の剣で斬り伏せた傷は、痛みは癒せても修復する事はできない。ノアでもない限りはな。」

 回復魔法。そうだ、回復魔法がある。オーネットの言葉に、数少ないハルが使える魔法の一つ、回復魔法を自身の脇腹の傷にあてる。

 しかし、ハルの放った回復魔法は、傷跡をぼんやりと光らせる程度で、止血や痛みを抑えることはできなかった。

「回復魔法すら使えないのか?無様だな。なぜ貴様が魂を眷属に売ったのか、手に取るようにわかる。」

 どうして。こんな時に、碌に魔法も使えないのか。このままじゃ、本当に私――。

 起き上がる力も、残ってはいなかった。色を失った視界の片隅に、一分の隙もない動作で剣を振り上げる、死神のような、緑の守護神の姿が映る。

 訳も分からないまま、殺されるのか。お父さん、お母さん……お姉ちゃん。本当に、ごめんなさい。

 ハルの頬を、涙が伝う。そして、自らの足が切り落とされることを悟り、目を閉じた。


 しかし、いつまで経っても、恐れていた痛みはやって来ない。それどころか、訪れたのは脚を切り刻む衝撃ではなく、狼狽えたオーネットの声だった。

「くそっ……貴様はやはり……!!!」

 何が起きているのだろうか。何も見えない。聞こえない。真っ暗で、冷たい。

 しかし、異変はハルにも訪れた。

 痛みの感覚が、消えている。それに、目の前に転がっているのは……オーネットの剣?

 気がつくと、血が抜けていく感覚も、声も発せない程の痛みも、その全てが消えていた。

 焦点が合っていく視界には、手の届く距離に、先程までオーネットが握っていた銀色の剣が転がっている。

「全校生徒、講師は直ちに校舎へ避難!講師はクロエ=ウェストコリンとノア=ラフィーネへ連絡を!」

 焦ったような、オーネットの声。

 何が起きたのか。

 何も分からない。分からないけれど、動けるうちに、少しでも遠くへ逃げなくては。

 ハルは、腕に力を入れると、何とか起き上がった。

 大量の血液を失ったせいか、ひどい目眩に襲われる。よろけながら振り返ると、自身が立っていた場所は地面深くまでビビが入っており、置かれている状況の凄惨さを理解する。

 そして同時に、普段感じることのない感覚。まるで、自身の塞がれていた体内のエネルギーが、際限なく湧き出して、全身から溢れ出る感覚。

 この感覚は、魔力。

 それは、普段ハルが魔法を使う際の感覚とは全く異なるものであった。だけど、どこか懐かしい感覚。

「とにかく、まずはオーネットから逃げないと……!」

 ハルは、目の前に立つオーネットを正面から見据えた。

「その眼、やはり……だが、剣がなくとも貴様のような賊は容易く捻ってやろう。」

「あなた達みたいな化け物に勝てるなんて、全く思ってないっ!」

 ジリジリと、お互いの出方を伺う時間が続いた。だが、生徒達が訓練場から避難するのを見届けるや否や、行動に出たのはオーネットであった。

「メテオ・ボルケーノ!!!」

 オーネットが叫ぶと、遥か上空、オーネットの頭上に、人の大きさはあろう火球が無数に出現する。

「冗談でしょ……。」

 通常の魔法戦闘では、奇襲でも無い限り、序盤の戦いでは魔力消費の少ない魔法を使い、特大魔法は奥の手として取っておくのがセオリーだ。それは、無限ではない魔力を最も効率よく使用し、連戦の可能性や思わぬ敵の出現に備えるためという意味もある。

「これが、第三位にとっては軽度の魔法って事……?」

 やっぱり、化け物じゃない。

 諦めたように呆然とその光景を眺めるハルには、もはや抵抗の術などない。しかしそれでも、命を守り、生きて帰ると約束した家族の為に、今まさにハルの元へ落ちんと高速で迫る火球に両手を向けて、水属性の最高級魔法の名を叫ぶ。

 私にそんなすごい力があるのなら、お願い!出てきて!

「レヴィア・ローア!!!」

 すると突如、ハルの手のひらが淡く青色に発光した。神々しいまでの光と共に、身体中に感じていた魔力の流れが、一気に解放される。そして、大量の水が海流のようにうねりながら、一点に集積する。

 大丈夫、戦える。

 そう、ハルが確信した時だった。凝縮された水が、眩いほどの光を発する小さな点に凝縮される。だが、放とうとした瞬間に霧散し、跡形もなく消えた。

「…………え?」

 巨大魔法は、何も残さず忽然と消えてしまった。ハルはただ呆然と、目の前に迫り来る無数の火球を前に、立ち尽くす。

「うそ――――」

 今度こそ、本当に終わりだ。視界が、真っ白に染まる。髪の先が自然発火しそうなほど、火球の熱が最高潮に高まる。

 だが、死を覚悟したハルに反して、爆炎とともに、火球のエネルギーが何かに擦れるような鈍い音が、訓練場に響き渡る。

 死んでいるのであれば、聴覚が残っているはずがない。ましてや、あの全てを焼き尽くす業火の中では、尚の事。

 私、まだ生きてる……?

 恐る恐る目を開く。そこには、地獄の様な光景が広がっていた。

 地面は溶岩のように煮立ち、広範囲が円形に抉られている。唯一無傷なのは、オーネットが立つ場所と、ハルが立つ場所のみ。

 ハルが生きている事に驚きを隠せないのはオーネットも同様の様で、眉間に寄せていた皺を更に深くしながら、再度魔法を放とうと両手を翳す。

 オーネットの攻撃を、何故自分は防げたのだろうか。自分自身でも分からないが、奇跡が何度も続く保証なんて、どこにもない。

 ハルはオーネットに向かって、必死に叫んだ。

「どうして私を殺そうとするんですか!?さっきの数字はきっと故障です!もう一度検査を……!」

「そんな戯言で欺けると思うな。その闇の様な左目が、悪の眷属に魂を売った、何よりもの証。」

 オーネットは聞く耳を持たず、小ぶりな火球を無詠唱で何十発も生み出すと、光線のようにハルに放つ。だが、そのどれもがハルに当たる直前で、目に見えない結界に憚れたように弾かれ、砕けた。

「左目って何ですか!?よく見なさいよ!」

 ハルはオーネットに向かって、両方の目がよく見えるように前髪を持ち上げて怒鳴る。

「私の両目は、お母さん譲りのコーラル色でしょ!魔力強すぎて、視力でも落ちてるんですか四賢聖は!?私が使える魔法なんて、花に水をあげるか、ちょっとした治癒魔法だけなんだから!」

 構わず、再びオーネットが、無数の火球を放つ。蒸すような熱風が、ハルの頬を撫でた。だが、そのどれもがハルの元に届く前に、消失する。

「大体!ちょっと数値が高かったからって、理由も聞かずに殺すなんて、頭おかしいんじゃないですか!?どんなものにでも間違いはあるんだから、せめて装置に故障がないのか、ちゃんと調べてからにしなさいよ!!!」

 散々痛めつけられ、苦しめられ、何度も命の瀬を渡りかけたハルの精神は、とっくに限界を越えていた。

「悪の眷属?意味がわからない!!!」

 やけくそになり、一心不乱に叫ぶハル。その勢いに、オーネットの攻撃が、ほんの一瞬止まる。

 だが、その一瞬すらも見逃すまいとするように。あるいは、そのタイミングを見計らったかのように。

 不意に、ハルの体が、絡め取られた。まるで、氷の花によって、背後から抱きしめられたかのように。胴に回された腕は強く、雪のように白い指が、ハルの顎を撫でる。

「装置に不具合がない事が、今確認できたわ。」

 この人の声を聞く時は、どうしていつも、最悪なんだ。

 感情のない声。誰の声なのかなんて、目の前で輝くレイピアを見れば、聞くまでもなかった。

「見える?あなたが母親譲りと言い張った左目が、しっかりと濃紺に染まっているのを。」

 目の前で、レイピアの鞘が鈍く輝く。鏡面のように磨き上げられたそこに映るのは、透き通った桃色の右目とは対照的に、全ての光を飲み込む濃紺に染まった、左目だった。

「そんな、わたしっ……!」

「眠りなさい――――エヴァノール」

 セシリアの呪文を最後に、ハルの意識が、深い海の底へと落ちていく。酷く胸焼けする様な、甘く、重苦しい香りを感じながら。



 がくりと頭を落とし、完全にハルが意識を失ったのを確認すると、セシリアはハルの体を軽々と抱えあげた。

「随分と苦労したようね。」

 高威力の魔法を連発し、肩で息しているオーネットは、セシリアの皮肉とも取れる発言に、鼻を鳴らす。

「ふん。校舎を消し去るわけにはいかないだろう。」

 オーネットは、瓦礫の山と化した装置に、「買い替えだな」とため息をつくと、巨人が地団駄を踏んだかのように崩壊した訓練場を、魔法で修復していく。

「ノアたちはもう集まっているそうよ。」

「すぐに終わる。」

 数秒の間に訓練場の修復を終えると、オーネットはハルをお姫様の様に抱えたセシリアを、怪訝な表情で睨んだ。あまりに、違和感のあるものだったからだ。

「セシリア、そいつは咎人なんだ。鎖でも繋いで、引き摺って行けばいいだろう。」

「…………そうね。」

「………………。」

 聞いているのか、聞いていないのか。表情を一切変えないまま、ハルを抱えて歩き出すセシリア。オーネットは今日何度目かのため息をつくと、その後ろを続く様に、歩いていった。

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