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ノンシリーズ ミステリー短編

龍が鳴く頃に

作者: 髙橋朔也

 俺は自分が誰か、まったくわからない。目覚めた時にはすでに、この野っ原にいた。

 名前......。俺に名前はあったのだろうか。思い出せない。広く長く続く野っ原を、懸命に進んだ。

 ある時、急に鳴き声が聞こえた。しかも、かなり大きい声だ。こんな鳴き声の動物など聞いたことはなく、正直怖かった。けれど、好奇心が(まさ)ってしまい結局、鳴き声のした方向に歩き出した。

 鳴き声は近くに聞こえたから、すぐに鳴き声を発した動物は見つかるだろうと思った。だが、なかなか発見には至らない。

 ふと、空が暗くなったなと感じて顔を上げた。すると、目の前に大きな体がある。俺は驚いて後ずさりをした。

「何を驚いているのだ......人間」

「だ、誰だ!」

「我を忘れたと言うのか? フハハハハ!」

「何がおかしい!」

「ハッハッハッ! 貴様は自分のことまで忘れたのか。我を殺しに数日前に訪れた勇者ではないか」

「勇者?」

「我は誇り高き(ドラゴン)族の(おさ)・ゲイル! 貴様は我ゲイルに負けたのだ」

「俺は勇者!? 俺が、お前に負けた?」

「そうだ」

 記憶はまだ思い出せていない。が、わかったことがある。俺は勇者で目の前のドラゴンであるゲイルに敗北を(きっ)した。

「なぜお前は俺を殺さないんだ?」

「その必要はもうないからだ」

 もうない? まったく意味がわからない。いや、待て。少しずつ、少しずつだが記憶が戻ってきている。

 俺は勇者。そう、勇者だ。確か、十七歳の勇者。生まれた時に勇者という称号を与えられた。

 勇者の基準は、魔法攻撃が効くがどうか。人類の中ではごく希に、魔法攻撃も物理攻撃もまったく効かない者が生まれる。そういう人間は例外なく勇者になる。

 俺も例外ではなかったから、そのまま勇者になって鍛えられたり勉強をさせられた。そして初陣(ういじん)が、このドラゴンとの戦いだった。ドラゴンは総じて頭が良いから、戦いに行く前に心しろと言われた。

 なぜ負けた? 俺には魔法攻撃も物理攻撃も効かない。今の体には魔法も掛けられていない。

「俺は何で負けた?」

「まだ記憶が戻らんのか? 人間よ、貴様は敗者なのだ。現実を受け入れるのだ」

「いや、再戦を望む!」

「......良い心構えだ。では、どこからでも攻撃して、我を殺してみよ!」

 舐められている。俺の勇者としての魔法攻撃はピカイチ。歴代でも群を抜いた力だと言われた。過信しているわけじゃあないが、図体だけ大きいだけのこんなドラゴンに、俺が二度も負けるわけはない。こうなりゃ、俺の本領(ほんりょう)発揮(はっき)してやるぜっ!

 まず、魔法陣を展開し詠唱を(とな)える。すると前方に向かって炎の弾丸を繰り出した。

 炎弾(ファイアボール)はゲイルの顔面に直撃し、煙が充満した。

「俺の勝ちだ。前回、お前が俺に勝てたのはマグレも同然なんだよ!」

 俺が勝ち誇りニヤけていた、まさにその時だった。煙が消え去り、その中からゲイルが姿を現した。

「生ぬるい攻撃だな」

「なっ!」

 ゲイルは結界を発動し、俺の攻撃を防いでいた。それより、ゲイルが使用した結界は勇者にしか使えない特別な(ホーリー)結界(バリア)。何で下等生物ごときが発動することが可能なんだ!?

「どうやら、この結界に驚いているようだな」

「それを使うことが出来るのはこの世で俺だけだ! なぜ、それを使えているのだ!」

「これが、前回のお前の敗戦の理由だ。我々ドラゴンは、知性が高い。一度目の前で使われた魔法なら、完全に発動可能になる」

「前回、俺が使った魔法をお前が模倣(コピー)したから俺が負けたのか!」

「それがショックで記憶を失ったのだろう」

 普通は魔法をコピーすることは不可能に近い。魔法陣と詠唱さえ覚えればコピーは出来るが、高等な魔法になるほど魔法陣は複雑になり詠唱のスピードも早くなる。ほんの一瞬で魔法は()()ならコピー出来ない。

 しかし、()()()()()()()()()()()()。魔法陣も詠唱も、一瞬で覚えられたんだ。

 ドラゴンは頭が良いから気をつけろと言われてはいたが、予想以上の知性を()(そな)えている。一刻も早く国にこのことを伝えないと。

「まさか国に帰ろうとしているのか?」

「......ああ、当然だ」

「無駄だ。貴様は国に帰っても化け物としか見られない」

「は?」

「まだ気付いていないのか?」

 俺は自分の姿をよく観察する。それぞれの腕には四本の指。指の間には水かき。下半身は勇者の時と同じ装備に、人間の脚と(こし)。上半身はゲイルと似たようなもので、顔は人間離れしている。ドラゴンに近い。

「嘘......だろ!? ドラゴンになっている!」

「貴様にはピッタリの名前だろ? 人の(はざま)で『()()』」

 俺を人間と呼んだのは、名前のことなのか......。

「アアァァァ━━!」

「理性を失ったか? 面白い。一生ドラゴンとして生きていくんだ────人間」

 本作は私が中一の時に書いた小説です。原稿用紙に書いていて、その原稿用紙が出てきたのでスマホに打ち込んで投稿しました。手は加えています。


 これは処女作ではないです。処女作を投稿したら、恥ずかしくて死ぬってレベルで酷い内容です。多分本作は、処女作から数えて五作目くらいだと思います。

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