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遊園地の怪人(アクアツアー)


  都市伝説3 アクアツアーの不気味な生き物


 水面みなもをピチャンと何かがはねた。

「あ!あれは?」思わず、私は口にした。

「どうしたんだい」と、隣にいた友人が、私にと尋ねてきた。

 今、私と友人は、裏野ドリームランドのアクアツアーに参加している最中なのである。

 アクアツアーと言っても、園内に人工的に作られた河のコースを、小さなボートに乗って、グルリと一回りするだけのアトラクションだった。この河は、機械ポンプで人為的に水流をおこしていたので、出発点と終着点が繋がっていても、ボートはきちんと流れて、移動したのだ。

 河の周辺をただ眺めて巡回するだけの余興は、実にのどかで、のんびりしていた。私も、友人と共に、ボートの最後尾に乗って、ぼんやりと、河がキラキラ光っているのを眺めていたのだ。すると、突然、河の遠くの表面で水しぶきが上がったのを目撃したのだった。この河は、人工のものなのだから、大きな魚などは放し飼いにはされていなかったはずである。

「おい。今の、見たかよ」と、私は友人に言った。

「何が?」

「河にヘンなものが泳いでたんだ。河から飛び出して、ちょっとだけ姿が見えた。緑色だったな。ありゃあ、何だ?この河には、魚は泳いでいないはずだぞ」

「ああ。あれか。別に無視してもいいよ」

 友人は、私の話には、なぜか興味なさげであった。

「どうして?河に勝手に入り込んだ魚でも居るのなら、駆除した方がいいぜ。係の人に知らせなくちゃ」

「あいつは、ずっと前から、ここに住んでるんだよ」ここで、友人は、船首の方にいるガイドの搭乗員の目を気にして、声を潜ませた。「あれは、この河の主だ」

「ええ?主だって?」

「そう。このアクアツアーの河は、もともと、この場所にあった沼を改造して作ったものなんだ。その際に、沼にいた生き物は全部、別の川や湖に移したはずだったが、主だけは引っ越しさせられなかった。で、そのまま、居座り続けてるんだよ。まあ、そこが、主たるところなんだろうな」

「何で、お前が、そんな事を知ってるんだよ」

「この裏野ドリームランドの中では、かなり有名な噂だぜ。お前以外にも、これまでだって、チラッと主の姿を見た奴は、いっぱい居る」

「遊園地の従業員は、その事を知らないのか?」

「知ってるよ。でも、河の中を本格的に捜索してみても、結局、主は見つからなかったらしい。それで、今では、主を捕まえるのもヤメて、そのまま放置している。まあ、ネス湖のネッシーみたいなものだと思えばいいさ」

「おいおい、恐竜って感じではなかったよ。沼の主って事は、むしろ、カ・・・」

 私が、そこまで言いかけた時、船の中で激しいどよめきが起こった。

 船の他の乗客たちは、うろたえた様子で、河の少し遠くの場所を眺めている。そこでは、幼稚園児ぐらいの子供が溺れていた。私たちの船にいた客ではない。どうやら、道に迷って、立入禁止区域から、この河のふちにと近づいてしまい、そのまま、河に落ちてしまったようなのだ。その子の体は、河の流れに巻き込まれて、どんどん河辺から離れだしていた。

 陸地の方では、まだ、この事故については、気が付いていないようである。かと言って、この船で助けに行くには、あまりにも距離が離れていた。また、船で近づけば、船体を溺れている子供にぶつけてしまう危険性もある。この船のガイドも、どうすればいいか、困っている様子なのだ。このまま、あまりモタモタしていたら、子供は完全に溺れ沈んでしまうだろう。

 私と友人は、お互いの顔を見て、頷きあった。ここは、若者である私たちが一肌脱いで、河に飛び込み、子供を助けに行くべきなのだ。

 しかし、その時だった。

 溺れていた子供の全身が、突然、水面まで浮かび上がったのだ。何とも不思議な光景だった。我々だけではなく、当の浮かび上がった子供も、呆気にとられていたみたいなのである。

 その子の体は、水面に浮かんだまま、素早く、軽やかに、近くの河辺の方に向かって移動していった。そして、河辺の前まで着くと、その子は、ポンと河辺の上へと放り出されたのである。無事に助かったのだ。

 その一瞬、それまで、その子がいた水面の水が、またピシャッとはねたのだった。そこに潜っていた奴が、幼い命を救ってくれたようなのだ。

 裏野ドリームランドのアクアツアーには、やはり、主がいるのである。そして、その主は、きっと、裏野ドリームランドが廃園になった今でも、放置されたままのアクアツアーの河にと潜み続けているのだ。


      了


ナカムラ警部のコメント

「アクアツアーの河に住んでいる主とは、さては、ニジュウ面相だな。ニジュウ面相は、これまでも、怪物のたぐいに扮装して、皆を驚かせて、喜んでいたからな。毎回毎回、よく、いろんな化け物の仮装を思いつくもんだよ。まさに、奴こそは、世紀の怪人だ。しかし、自分のアジトで、それをやっちまうとは、ニジュウ面相も、とうとうヤキが回ったな」

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