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遊園地の怪人(ジェットコースター)


  都市伝説2 ジェットコースターで謎の事故


 僕は、ジェットコースターに乗るのを楽しみにして、その搭乗の順番を待つ列にと並んでいた。

 すると、今、ジェットコースターを降りたばかりの男の一人が、大声を出して、クレームを訴えているのが聞こえてきた。とんだ興ざめた光景なのである。

 その男は、係員になだめられながら、さんざん怒鳴り散らしていた。何やら、事故が起きたかのような事を叫んでいるのだ。それによって怖い思いでもしたのか、その男の顔は真っ青なのである。

 とは言え、はたで見た限りでは、ジェットコースターの車両には、何の異常もないようなのであった。大袈裟なのもいいところなのだ。結局、その男のせいで、ジェットコースターの次の発車は30分ほど遅れた。

 それでも、ようやく、僕が乗れる番もまわってきたのである。

 僕は、ジェットコースターが大好きだった。あちこちの遊園地のジェットコースターを制覇してきているのだ。でも、この裏野ドリームランドのジェットコースターに乗るのは、今回が初めてであった。

 ジェットコースターは、問題なく発車した。僕も、さっき見た男の不愉快なクレームの光景は忘れる事にしたのだった。

 ジェットコースターの乗り心地は、どこの遊園地のいかなるものであろうと、やはり、最高なのである。僕は、顔に満遍なく風を浴びながら、ジェットコースターの加速に酔いしれた。

 ジェットコースターが、いよいよ、クライマックスの最難関のレールに差し掛かった時である。

 いきなり、僕は、これまでに味わった事のなかった振動に襲われた。これは、どうやら、ジェットコースターの車両がレールから外れた時の感覚なのである。実際に、僕の目の前の風景は反転して、青空一色だけが広がっていた。

 僕は、たまらずに、悲鳴をあげた。その悲鳴は、周囲の搭乗者の絶叫に紛れ込んでしまい、僕自身もよく聞こえてはいなかった。

 ジェットコースターで、こんな大きな事故に遭遇するなんて、多分、よほど運が悪くないと巡りあわない出来事だろう。いくら僕がジェットコースター好きでも、全く嬉しくないサプライズなのだ。果たして、このまま、僕は、地面にでも叩き付けられて、死んでしまうのであろうか。

 頭の中が錯乱している中、気が付くと、ジェットコースターはゴールにと到着していた。

 僕はキョトンとした。今のは何だったのであろう?事故など起きてはいない。僕は、うっかり、白昼夢でも見てしまったのだろうか。

 僕は、合点のいかないまま、ジェットコースターを降りた。一緒に搭乗していた他の客たちを見ても、誰も、おかしな様子はないのである。やはり、僕一人が、体調不良で、ヘンな幻覚でも見てしまったのかもしれない。

 それ以上、深く追求するのはヤメる事にした。もし、ここで、しつこく、係員に絡んだりなどしたら、さっきの男と同じになってしまうからである。

 だが、僕の心の中では、この不思議な体験が引っかかり続けた。

 僕は、しばらく、ジェットコースターを乗り終えた客たちの様子を観察してみる事にしたのだった。すると、やはり、時たま、挙動不審な態度をとる人がいるのを確認できたのだ。それらの人々は、ジェットコースターで興奮して、態度がおかしいのではなかった。明らかに、それとは違う理由で、うろたえていたように見えたのだ。

 僕は決心して、もう一度、このジェットコースターに乗ってみる事にした。

 さて、今度も、何か、不思議な事が起こるのだろうか。

 しかし、この2度目の搭乗では、僕は、何事もなく、普通に、終着点にたどり着く事ができたのだった。

 ただし、僕の隣に乗っていた客の様子が、下車した後に、少しおかしかった。目が泳いでおり、ひどく怯えていたのである。ジェットコースターの揺れだけでは、ここまで動揺するはずはない。先ほどの僕の状況とそっくりなのだ。さらには、彼の口からは「事故、事故」という言葉が漏れていたのも、逃さずに、しっかりと聞き取った。

 これで、僕も、ようやく確信したのである。

 やはり、僕が目にしたものも、ただの幻ではなかったのだ。このジェットコースターに乗った者は、高い確率で、事故にあう疑似体験をしてしまうのである。

 なぜ、そんな事になるのかは不明だ。遭遇する事故の種類も、その度に違っていたのであろう。

 ひょっとしたら、以前、このジェットコースターで、本当に事故が起きた事があったのかもしれない。その時の記憶が、ジェットコースターが走るたびに、搭乗者の心の中で蘇るのだ。

 もしくは、毎回毎回、実際に新たな事故が起きていた可能性もある。しかし、このジェットコースターには不思議な作用が働いていて、その事故の瞬間は修正され、いつも、消えて、無くなってしまうのである。代わりに、最終的な時間帯においては、事故が起きなかった形にと落ち着くのだ。ただ、事故の映像イメージだけが、一部の搭乗者の脳の中にだけ残ってしまうのである。

 別に、推測だけで、こんな事を述べているのではない。白状すると、あのあとも、僕は、何度も、このジェットコースターには挑戦してみたのである。ずっと何も起きない搭乗が続いたが、ある時、僕は、再び事故の幻影を見る事に成功した。その内容は、前に経験したものとも違っていた。ジェットコースターが、突如、火を吹いて、僕は深紅の炎の中に包まれたのである。それは、まさに衝撃のひと時だった。

 真相が何だったのかは分からない。とにかく、裏野ドリームランドのジェットコースターは、そんな不思議な現象を体験できるアトラクションだったのだ。


      了


ナカムラ警部のコメント

「乗るたびに、事故を起こす幻覚を見てしまうジェットコースターだと?そりゃあ、あとから、ニジュウ面相に催眠術でもかけられて、そんな事を経験しちゃったように思わされただけだよ。だとしたら、その人たちは、ジェットコースターの上から、ニジュウ面相のアジトへの入り口でも見つけてしまい、それで、催眠術を使って、その記憶を無理に忘れさせられたのかもしれないな。だったら、これは、ぜひ、重点的に調べなくては!」

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