表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/20

遊園地の怪人(結末)

 ナカムラ警部と、彼が率いる10人強の精鋭警官隊は、ついに、裏野ドリームランドの中へと突入した。

 廃園していたのだから、もちろん、入り口は閉まっていたのだが、管理人に頼んで、特別に、鍵を貸してもらったのだ。この鍵があれば、園内の全ての施設の内部にも入れるのである。

 真昼間の決行であった。別に、肝試しをする訳でもないのだから、日中で構わないのである。

 しかし、たとえ昼間であっても、全く、お客も従業員もいない、無人の遊園地というのは、それだけでも、十分に不気味な雰囲気を漂わせていたのであった。さすがに、屈強な警官隊であっても、ドリームランドの中に足を踏み入れた一瞬は、少しだけ、気持ちが怯んだ。

 さて、どこから捜索してやろうかと、ナカムラ警部が鼻息を荒くしていた矢先である。

 彼らの前方50メートルぐらいの場所に、突如、ピンク色のウサギのマスコットが現われた。誰か人間が中に入っている、等身大の着ぐるみである。

 だが、今のこの遊園地に、そんなものが居るはずがないのであった。

「あ、あれは!さては、ニジュウ面相め!大胆不敵にも、あんな格好をして、我々をからかって、愚弄する魂胆だな!ふざけるな!おい、皆、あのウサギを捕まえるぞ!」

 ナカムラ警部は、安直に、ウサギの挑発に乗っかってしまい、そう怒鳴った。

 ウサギは、まさに、あざ笑うかのように、おどけて跳ねてみせると、それから、警官たちの方に背を向けて、軽やかに逃げ始めたのだった。


 それから数時間後。

 アケチ探偵は、慌てて、裏野ドリームランドの中へと入っていった。幸い、入り口の門は、開きっぱなしなのである。

 彼は、ナカムラ警部一行がこの遊園地に強行捜査をしに入ったと知って、急いで、駆けつけてきたのであった。ナカムラ警部の無謀な行為をヤメさせる為だ。

 アケチ探偵が門をくぐった時点で、遊園地の入り口周辺の地面には、ナカムラ警部をはじめとする全警官が倒れていた。皆、ぐったりとしているのである。

 アケチ探偵は、当惑しながら、ナカムラ警部の元に近寄り、その体を抱き起こした。

「言わんこっちゃない。警部!なぜ、こんな勝手な真似をしたのですか。この遊園地は、ニジュウ面相のアジトなんかではありません。僕にあらかじめ相談してくれたら、その事をきちんと証明してあげたのに。自分たちだけで行動しちゃうから、こんな事になってしまうんですよ」

 アケチ探偵は、真剣な表情でナカムラ警部をたしなめたが、警部の方は、まだ意識が朦朧としていて、ウンウンと唸るだけなのであった。

 その時、アケチ探偵は、ここから10メートルほど離れた場所に、ウサギのマスコットが立っている事に気が付いた。さきほど、ナカムラ警部が追いかけたウサギの着ぐるみである。そのウサギは、すっくと立って、アケチ探偵の方をじっと直視しているのだ。

「きさま、ニジュウ面相だな」アケチ探偵は、ウサギに向けて、怒鳴りつけた。

「そうだ。久しぶりだな、アケチくん」ウサギは、野太い声で答えた。

「ここは、お前のアジトではなかったんだろう?なぜ、こんな場所にいる?」

「ああ、そうさ。この遊園地は、俺の隠れ家なんかではない。ここは、ちょっと場所が悪すぎる。最悪の方角だ。あらゆる魔が集まるパワースポットさ。俺だって、命は惜しいからね。こんな所には住み着いたりはしないよ。ところが、その警部たちが勝手に勘違いして、この遊園地の捜索なんかを始めやがった。こいつらに何かが起きた時、それを俺のせいなんかにされたら、俺だって面白くないからね」

「それで、警部たちが本当の怪現象に遭遇する前に、お前が先に誘導したって訳かい」

「その通りだ。でも、心配するな。そいつらは、クタクタになって疲れているだけだ。俺の姿を見ると、単純に、まんまと追いかけてくれたからな。だから、園内のアブなくない場所ばかりを選んで、さんざん、俺のことを追いかけさせて、引き摺り回してやった。その結果、体力を使い尽くしてしまい、そいつらは、当分は動けないはずだ。しかし、命には別条はない。少し休ませておけば、いずれ回復するだろう。あとは任せたぜ、アケチくん」

「待て、ニジュウ面相!警部たちを助けてくれた事については礼を言うが、それとは別に、僕には君を捕らえなくちゃいけない使命がある!おい、逃がさんぞ!」

 そこで、アケチ探偵とウサギの間にある敷地で、大きな砂ぼこりが舞い上がった。それは、お互いの姿が見えなくなってしまうほどの激しい強風だった。

 アケチ探偵も、思わず、目を覆って、顔をしかめた。

 ようやく、その砂煙が薄れていった時、ウサギの姿は、すでに、今いた場所には無かった。だけではなく、その着ぐるみのウサギは、もう、園内のどこにも見当たらなかったのであった。


      了

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ