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怖い夢見たから共有させてー!

作者: あろ



スマホの通知画面を見て、飛び起きた。

このコロナで半年以上会っていない彼女が、なんと私の地元まで来たと言う。

日が沈み、星が美しく瞬く夜の事だったが、私は一刻も早く彼女に会おうと駅へ駆け出した。


駅の周囲には勤めから帰って来た様子の人々が行き交い、それなりに賑わっている。

そんな中に、少しお酒を嗜んだのか、ほろ酔いの彼女を発見した。


頬を赤らめ、艶やかな瞳で「会いたかった」と言う彼女。

たまらず肩を抱き、駅前にホテルのある場所へ移動するということになった。

そのために電車に乗る。

地元駅のホームに辿り着くまで、普段絶対外ではイチャつかない彼女から、キスをしてくれたり、抱擁を求めて来たりしたのはこっそり追記しておく。


ところが、さすがは夢。

目的に沿わず、長い時間電車に乗っていた。

辺りはしっとりと暗くなり、帰宅する人々も殆どいない時間になっていた。

そんな時間まで乗って、やっと降りた先の駅のホーム。

ホーム自体は寂れた印象だが、夢の中の私達の会話によると、外に出ればそれなりに賑わっているらしい。


「何か食べたい?タピオカ??それとも居酒屋はいる?」


「うーー…ソーセージ(なんか略語だった気がするけど忘れた)食べたい。」


「うん??あー、サイゼの?サイゼ行く?」


 やってるかな…?と心配になり、チラリとホームの隙間からサイゼの看板に目をやるが、夜の繁華街に負けまいと光っている。


「そうだけど…いい。」


「じゃ、その辺のコンビニでなんかおつまみ買って、ホテルの中で食べようか」


「ん、そうする。」


夢の中ではコンビニ、と確かに言っていたけれど、実際には何故かキオスクを探して歩いた。

ホームには主に3ヶ所、纏まった売り場がある。

私たちはその1番端にある売り場の前で降りていたが、そこにあるキオスクは品揃えが悪い。

そこで、真ん中の売り場、1番奥の改札へのエスカレーターがある裏の売り場を見に行った。


「あっちも、自販機があるだけだね。」


真ん中の売り場は自販機のみだった。

そしてそこから遠巻きに見えているが、確かに自分の言葉通り飲み物の自動販売機が2台纏めて置いてあるだけだ。


仕方なく私たち2人は、品揃えの悪かった最初のキオスクに戻って来た。

キオスク特有のゴチャッとした感じはなく、品物が無機質に、整然と並べてある。

店番のお爺さんは、俯いてピクリとも動かない。


「とりあえず水分は沢山欲しいから…お茶のペットボトルとー、あとは…(彼女)ちゃんおつまみ何にする?」


彼女におつまみを選ばせている間に、私は財布を取り出し中のお札をいくらか掴む。

ふと顔を上げると、キオスクの隣にある施設に目が止まる。


あれ…、隣は随分ボロいんだな…。


元は何があったのかは見当もつかないが、エスカレーターでもあったかのようなその空間には、暗い雰囲気が漂っていた。


気味が悪くて目逸らすと、彼女が品物をカウンターに並べ終えたところだった。

手にしていたお金で会計を済まし、袋を断って、キオスクを出る。


2人でつまみを開けて食べようかと言う時、知らないおじさんに声をかけられた。


「君達…それ、どこで買って来たんだ?」


「え?どこって、そこのキオスクで…」


私は振り返り、ゾッとした。

キオスクが、無いーーー。

いや、それだけならば、ここまで薄寒い気はしなかった。

その場所は、恐らく昔はキオスクだったのだろう。

しかし、柱は木製で、カビと煤がこびりつき、燃え跡のようにボロボロと今にも崩れ去りそうだ。

光源は一切無く、ただ暗闇をそこに携えていた。

さらにその周りには、規制用のロープが巡り、立ち入り禁止とでも書いてあるのだろう紙がぶら下がっていた。


そんなバカな。


「えっ、だって今…え??」


「絶対、ここで買ったよね??」


彼女と2人で、混乱する。

どうにかこの事態を説明しようと考えるが、2人とも全くそれらしい考えは浮かばない。

おじさんが、溜息にも似た息を吐き、次いで私たちに声をかけた理由を説明する。


「何も無いはずの場所から、突然今買って来たかのように出てくる君たちが不思議でね。声をかけさせてもらったんだ…。」


それを聞いて、もう一度寒気がした。

私たちは、どこでこれを購入したのかーー。

もう一度振り返ってみるが、やはりそこには、黒い柱、黒い壁、すでに何があった場所なのかわからない、重暗い空間が不気味に佇んでいるのみだった。





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