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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

辛口

戦争が始まった

戦争が始まった


ニュース動画の中で 険悪な国と国とが 国境を閉ざし 鉛弾の応酬を始めた


戦争に賛成する人々と 戦争に反対する人々の両方を マスコミが批判している


そして 無責任なマスコミを 無責任な大衆が批判している


そして 無責任な僕が 罵り合う人々にうんざりしている 



人殺しはよくない


敵でも?


正義のために戦え


人殺しでも?



僕が僕の信念を当たり前に思えたのは 補強してくれる誰かがいたからで


正しさは せいぜい 多数派と少数派との問題にすぎなかったのに


世の中の倫理観が ひとりひとりの主張にまで引き裂かれると


正気の置きどころが 分からなくなってしまった



戦争が始まった


戦場で振り下ろされているのは 正義の鉄槌なんかじゃない


スイッチを押すと 誰かの頭蓋骨が粉砕される


悪い奴と悪い奴とが戦っているかというと そうでもない


人間と人間とが 傷つけ合っているだけ



ふだんなら 道ですれ違っても お互い気に留めなかった人々


挨拶さえ交わしたかもしれない人々


通行人に襲いかかるような奴を 通り魔という


どっちの国の兵士達も 頭がおかしいわけじゃない



人々は口を揃えて言うだろう 「命令されたから」と


国の意向 組織の意向 世間の意向 


従ってさえいれば保証されるものは 何?


逆らうとひどいめに遭うのは 誰?



戦争が始まった


人殺しはよくないかもしれないが ともかく始まってしまったものは仕方ないと みんなが言っている


大勢の人々が言っていることは いつも おおむね正しい


だけど みんなの意見というやつは 誰かの意向で たやすく作り出せる


なにも言わなければ 反対しなかったとみなされる



自分だけは正しくあろうとして 日和見を続ける人々が


発言できない雰囲気になってから 「どうしてこんなことに」と嘆く


声を上げればよかったかというと そうでもない


賛成にせよ反対にせよ 何か主張しようものなら ナントカ主義者と決め付けられる



誰かのために戦うとき 人は強くなれる


誰かのせいにできるとき 人は残酷になる


みんな 戦争にかこつけて 日頃の鬱憤を晴らしたいだけ


そして 誰も責任は取らない



戦争が始まった


「勝った」「負けた」と言い合っているが どっちの陣営でも 要するに 人が大勢死んでいる


お腹がすいた 疲れた 眠い 家に帰りたい


指先をちょっと切っただけでも 痛いことは知っているのに


怪我をしたくない者同士が 自分がされたら困ることを 敵には なぜか やっている



死んでもいい人間なんて いないはずだが


死んだほうがよさそうな人間は すぐ何人か思いつく


人は一人では生きてゆけないが 他人は信用ならない


でも 正しさがひとつしかない世界ほど 気持ち悪いものもない



何が正しいのか分からなければ 自分を信じるほかないが


自分勝手な人々が 自分の都合で戦争を引き起こす


こんな世の中はおかしいと思うが じゃあどうしたらいいのか 僕にはさっぱり分からない


しかし 誰かが教えてくれるとしても それは しょせん その人の信念にすぎない

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