表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/70

21話:伝統と格式と、ボトラークの双子。

 平日の朝の首都は、現世の東京と同じだ。

 駅から吐き出された数万ものスーツ姿の老若男女が列をなし、それぞれの目的地に向っている。


(この辺も現世と一緒なのね)


 違うところを探す方が難しい。

 ついこの間まで自分もあの人々に紛れて通勤していたのだと思うと感慨深い。


(デジャブ感にちょっと死にそう。でも……)


 やはりここは前世。現世とは違うのだとも改めてしみじみ思う。


 私はこの世界で生きていくのだ。

 そして今日が新たな第一歩。

 エルネスティが側に居ないのはたまらなく不安だけど、きっと大丈夫だ。

 何せ高校生活は二度目なんだから(異世界だけど)


 私とボトラーク家の双子は他愛も無いことをしゃべりながら学校に向う。


 三人とも制服だ。

 黒に近いグレーのブレザーに男女供ストライプのネクタイ。女子はスカート。この世界の人々の髪が鮮やかであるのを考慮してか、制服の色もデザインもとてもシンプルだ。

 現世では中高6年間セーラー服であったので、ブレザーに憧れていた。

 こんな形で叶うとは思いも寄らなかったが、それなりにうれしい。



 駅から十五分ほど歩くと、近代的な高層ビルが途絶え、突然、前が開けた。


 現世のルネッサンス建築様式に良く似た建物が立ち並び、歳月を重ねた石造りの建物が圧倒的な開放感の青空の下に映える。


「ついたよ。ここが俺達の学校。ヒュビンガー学院へようこそ、我らが姫君」


 イーヴァルが舞台俳優のように腕を差し出した。

 私は差し出された手をとり、導かれるまま敷地の境に設けられた赤レンガの塀沿いを歩く。


 目指すは正門。

 だが、ツタのからむ塀は数ブロック先まで続いているようで、未だ門の気配すらなかった。


「すごいね……!」


 私は敷地の広さに驚嘆の声を上げた。


 駅近物件!! っていうわけではない。

 が、首都の中心近くにこれだけの敷地を確保できるっていうのは、やっぱり数ある私立学校のなかで別格なんだろなって感じだ。


「そうでもないですわ」


 リンネアは大したことではないという風に首を振る。


「ボトラーク侯爵領の本邸はこれ以上の敷地がありますわ。シ……シグネは訪れたらびっくりすると思う」


 名前の呼び捨てに慣れない公爵令嬢が戸惑いながらも呼びかける様子は、可愛すぎて胸熱だ。


「今いるユヴァスのお屋敷もすごく広いけど、あれ本邸ではないの?」

「大きさが手ごろだし景色もいいから、家族は好んで使うけど本邸ではないの。別邸ね。ボトラーク家(うち)の所有している屋敷の一つよ」


 あれで手ごろとか。

 居候させてもらってるあのお屋敷。

 エルネスティから『カギのかかってない所はどこでもどうぞ』とお許しが出ているので、たまに散歩したりしてるけど、ぜんぜん回りきれていない。

 部屋数は優に100は越えてるような。


 しかも全ての部屋に、家具も調度品も素人目でも一流って分かる物が据えられている。

 どれだけ途方も無いお金がかかっているんだろう。


「めっちゃお金持ちじゃん」


 私は思わず呟いた。

 私の発言がイーヴァルの関心を引いたようで、エルネスティよりも濃い藍の瞳にあふれんばかりの好奇心をたたえ私を見つめる。


「そりゃあ、侯爵家だからね。事業もしてるし。てか、ほんとに記憶がないんだな。ロヴァニエニ(この)国のことも、俺達のことも」


 こんなことを俺らボトラーク家の人間に面と向って言うヤツなんかいない、と何故か愉しそうに笑った。


「……物知らずでごめんなさい」

「いや、シグネが謝ることじゃないから。記憶が無いのは仕方が無い。……ちょっと新鮮だったんだ。そんな反応する人なんて初めてだからさ。俺らボトラーク侯爵家は昔から()()()()()()()()()()だから、『ボトラークの赤毛』は知らない人はいないくらい有名なんだよ」


 当たり前すぎて誰も口にしない、ということだろう。


 だから改めて言われると新鮮なのか。

 けれども裏を返せば、私はこの世界においての常識がないんだと宣言しているようなもの。

 腐ってもアラサー。身につまされる。


「兄さんも言ってると思うんだけどさ。少しずつ思い出していけばいいんだよ?」


 イーヴァルがやっちまったという表情で必死に取り繕った。

 見た目はウェイ系でチャラいのに、気遣いができる良い子っぷり。なんだか慌てぶりが気の毒になってきた。

 うーん、私が若い子を苛めてるっぽくない?


「分かってるよ。こんな状態になっちゃってる私が悪いんだから、イーヴァルは気にしないで?」

「そうだわ、シグネ殿……じゃなかったシグネ」


 私とのやり取りを聞いていたリンネアが、あまりにしょんぼりする双子の兄に助け舟を出した。


「学校の生活に慣れるまで、私かイーヴァと必ず一緒にいるようにしてくださいね。離れてるとフォローできないので」

「分かった」


 リンネアの言葉が嬉しい。

 この双子がいれば、エルネスティがいなくても何とかなりそうだ。


 私達が話している間にも、学院の制服を着た生徒達がイーヴァルとリンネアに挨拶をしながら通り過ぎていく。

 どうやら赤毛の双子は推測どおりの人気者らしい。

 確かに二人とも美人さんだし、人に好かれるいい子たちだ。


 ちらりちらりと私とボトラーク家の双子を見比べ、慄いた表情を浮かべてそそくさと足早に去っていくのがなんとなく癪に障るが、イーヴァルもリンネアも全く気にしていない。


 エルネスティもそうであるように、この双子達も幼い頃から数々の洗礼をうけてきたのだろう。

 恐るべし上流階級。



 そうこうするうちに、ようやく正門らしき門楼が見えてきた。


「ちなみに」


 石造りの門楼をくぐり、水平のラインとアーチ型の窓が印象的な校舎に向かいながら、イーヴァルはこれから向うべき場所を指差した。


「シグネとリンネアが同じクラスでそこの棟ね。俺は隣の棟だよ。休み時間には様子見にいくから。昼は一緒に食べよう」

「シグネ。全力でサポートしますわ。お任せくださいね」


 私はまっすぐに二人を見据え、


「イーヴァル、リンネア。よろしくお願いします」


 と決意をこめて頭を下げる。


 よし! 緊張するけど、頑張ろう。

 全力でがんばります!

読んでいただきましてありがとうございます!


シグネと双子たちの高校生活始まりました。

学校は日本の学校というよりも、イギリスのボーディングスクールをイメージしています。

上流階級やお金持ちのセレブが良い教育と人脈を求めて通わせる、そんな学校です。


昨日の更新、とてもたくさんのPVとブックマークを頂きました!

ありがとうございます!


さらに誤字報告も!

読んでいただいた上に、報告もいただけるなんて!

めちゃくちゃうれしいです。

宮平、誤変換や脱字が多いので見かけたら是非報告してやってくださいね。


明日は更新をお休みします。

夕方に「きみに光を。あなたに愛を。」を更新する予定です。


次回もお会いできることを祈って。


↓こちらもどうぞ。

[連載中]

「きみに光を。あなたに愛を。」

異世界後宮物語です。そろそろ佳境にはいります。

https://ncode.syosetu.com/n3833fw/


[完結済]

「アイのある人生は異世界で。」

ただひたすら幼馴染が甘い異世界恋愛物語です。

https://ncode.syosetu.com/n1461ft/


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ