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異世界だけはご勘弁!  作者: やらい
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前触れ

初投稿です。脳内妄想を垂れ流す何かになっている。

今はやりのなろう系の流れに乗って小説を書き始めましたが、楽しいですね。

仕事の合間にでも更新頑張っていこうと思います。継続は力。


 この世には、幻想体(イリジオン)と呼ばれる存在がいる。

 幻想体は確固とした実態を持っている訳では無く特殊な方法でしか観測出来ないが、存在し続ける限り現実を改変していく。空間異常、認識災害、現実改変、エトセトラ。

 しかし、これらの現象は些細なものだ。普通の人間ならド忘れや不注意で処理してしまうほどの。

 真に恐ろしいのは現象ではない。干渉力の強い幻想体は、取り付いた存在を凶暴なものへと変質させる。道具や建物、動物、そして人間も含めて。この幻想種(イリジフォルク)と呼ばれる怪異と相対する存在が"魔術師"と呼ばれる者達だ。


 魔術師の誕生から数世紀が経過した後の現代日本。

 ここに、魔術師を擁する結社に育てられた少年がいた。


 名を、神崎伊織凜かんざきいおり

 古より魔術と共存する神崎家の現当主であり、亡き父との契約により破滅と戦い続ける事を運命付けられた哀れな忌み子。

 そして――世界から追放された男。

 彼に悲劇が起きたのは、偶然か必然か。事態は夕刻まで遡る。




 「ミスター伊織凜。君の魔力は当分戻らない」


 治癒魔術を専門とする魔術師専門の医師。その長直々の診察にも関わらず、返ってきたのは絶望的な宣告だった。


 「な、何故ですか!音無先生も仰られたでしょう!『通常なら一週間もあれば治る』と!」


 思わず、伊織凜は声を荒らげる。

 それも仕方の無い事だ。近代魔術の開祖と呼ばれた神崎家の当主が魔術を使えないと知られれば、それこそ周囲の笑い者にされるに違いない。

 音無と呼ばれた真面目な印象の青年は申し訳なさそうに言う。


 「すまない。最善は尽くしたつもりだが、ミスター伊織凜の魔力経路は些か常人の魔術師と違うようだ。この構造は今までの例にない上に、正常な構造が把握出来ていないのでどう直せば良いのかも不明だ。一から調整方法を模索していくしかない」


 魔力経路。血液のように体内を流れる、言わば第二の血管だ。魔術を使い続ければ同時に消耗するもので、時に経路の復元や成長に合わせた調整を行う必要がある。

 医者とて万能ではないのだ。人と違うものを治せと言われても無茶だろう。


 「そう、ですか...」


 「君の事情は知っていたのにな。力になれなくて本当にすまない」


 音無が頭を下げる。それは医者としての不甲斐なさではなく、長年伊織凜に付き添ってきた保護者に近い思いからの謝罪だった。


 「いやいやいや!先生は凄いですよ、本当。今までも散々お世話になりましたし」


 伊織凜ははにかんでみせる。

 音無の治癒の腕は確かだ。片腕が塵の一片も残さず消し飛んだ時も、


 「...そう言って貰えると助かるよ。ひとまず直せる箇所は処置しておいたから、二週間ほど時間を置いてまた来てくれるか?その時までには医者の名にかけて手掛かりを見つけてみせるさ」


 「はい!ありがとうございます。それでは、失礼します」


 一礼して部屋を出ると、看護師達の視線が集中していた。

 音無は医学界でも名の通った人物であり、副院長という立場だ。こんな少年を直々に診察など、さぞ周囲には不自然に映ることだろう。

 これも毎度の事だ。視線に気付かないフリをして、病院を出る。


 「まぁ、深刻に考えてもしょうがないか」


 ネガティヴな思考を変える。

 そうだ。魔力が少なくなっても魔術が使えなくなったという訳では無い。幸い病ではないのだし、幻想種との戦闘で足りない箇所は道具で補えば良いのだ。

 何かが起こらない限り家に籠るとしよう。


 そう考えた矢先の出来事であった。


「...何が起こっているんだ?」


 止まない風のように、体全体に張り付くような寒気を覚える。

 今までに感じたことがない不気味に感覚にあたりを見渡すも、人の気配がない。現在の時刻はまだ十八時を長針が半分ほど回った頃だ。都心ではないにしろ、それなりに人がいて然るべき時間帯。それが、今は虫一匹も見つけられない程に静まり返っている。閑静という言葉では片付けられない静けさ。明らかに異常である。

 

 幻想体の影響という線もあるにはある。だが、幻想体の発生、その動向については結社が厳密な調査プロトコルによって管理している。突然現れる事など有り得ない。有り得てはならないのだ。その為に魔術師は存在するのだから。


「厄介だな...。電話も圏外か。一旦音無先生のところに――」


 戻ろうと。足を退いた直後、轟音と地響きが襲い来る。噴火の如き衝撃が大地を揺らし、たまらず伊織凜は膝をついた。

 その刹那を見計らったか、地面が()()()


「っ!天翔る――」


 中空へ放り出された。咄嗟の出来事に次の魔術発動が一歩遅れ、その一瞬が生死を分けた。


「が、ぁっ...!」


 死角から瓦礫が直撃し、一瞬で意識が持っていかれる。

 地上の景色は霞み、既に遥か遠く。気を失った伊織凜は、ひとりでに闇の中へと誘われた。

ご覧いただきありがとうございます。

次回があればまたよろしくお願いします。

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