7.空気は食べずに読んでくれ
「いやぁ、この前の神様怖かったね〜!叱られたの久々だったわ」
「そうなんすか?てっきりいつも怒られてるクズかと思いました」
「優也くんやっぱり俺にきつくない?当たりきつくない?」
「気のせいっす」
「ほんと?気のせい?」
「気のせいっす」
「そっか、気のせいなら良いんだ、うん」
いやいや、義政よ
気のせいではないと思うぞ、うん
仕事がひと段落つき、少し皆の様子でも見に行こうと思った矢先
義政と優也くんが作業しながら会話しているのを目にした
あれはあれで仲の良い形かの、うん
まぁ先輩としての威厳やら信用やらは確実に無くなっておるみたいじゃが
「さ〜てと、この書類の整理が終わったら少し休憩しよっか〜!」
「そうっすね、それじゃあ待っててあげますから先輩早く終わらせて下さい」
「えっ優也くんの分もう終わった感じ?」
「はい」
「そうなの?!じゃあ俺の分を手伝ってよ〜!」
「自分の分は自分でして下さい」
「えー!手伝ってくれないの?!」
「………」
あ、優也くんの目がまるでゴミを見ているかのようじゃな
実際はゴミではなく義政…一応仕事場の先輩なんじゃがのう
仕方ないのう
「うぉっほん!」
「あ、神様!」
「神様〜どーもー!ここに来るなんてどうしたんですか?もしかして書類の不備とかありました?」
お主、最初の挨拶が無ければ完璧じゃのう
「いや、休憩がてら皆の様子を見にぶらぶらしとるだけじゃよ」
「はは、神様は暇人ですね〜」
……フォローするのやめようかの?
「そうだ、聞いてくださいよ神様〜!優也くんが仕事してくれないんですよ〜!」
「な!何言ってるんすか!違いますよ神様!自分の分の仕事は終わってますから!」
わかっておる
わかっておるから2人ともそんなに詰め寄るでないわ!
「う、うむ、わかっておる…義政の分の仕事がまだあるんじゃろ?」
「そうなんですよ〜それを手伝ってって言ったら断られまして」
「優也くん、義政はこんなじゃが仕事量は誰よりも多いんじゃ」
「ちょ、神様こんなってどういう意味ですか〜?」
「だから、手伝ってやってくれんかのう?」
「無視しないで下さいよ〜!」
「わかりました!」
なんじゃ、アッサリと聞いてくれたのう
「えっ?俺の時と優也くん反応違くない?!」
「あ、この書類の整理が終わったら休憩する予定なんですが、神様も一緒にどうですか?」
「優也くんも無視?!」
「ん?良いのか?ワシが居たら休憩し辛くないかのう?」
「そんな事ないです!この前のお詫びと言ってはなんですが、美味しいわらび餅もありますので是非!」
「それ俺のわらび餅だよね?!さも優也くんの〜的に話してるけど俺のだよね?!」
わらび餅か
ふむ、これはご馳走になるしかないのう
お詫びと言っておるし
「そうかそうか、ならご馳走になるかのう」
「黒蜜を使用したわらび餅とは初めて食べたが美味いのう」
「でしょでしょ〜?」
「あ、神様!遠慮せずにいっぱい食べて下さいね!」
「優也くん、何度も言うけどこのわらび餅は俺のだからね?!」
優也くんの手伝いもあり、義政の仕事もひと段落し
今は三人で休憩中
黒蜜のかかったわらび餅とは美味じゃな!
「そういえば、こういった和菓子とかってどこで買ってるんですか?」
「あーそっか、優也くんはまだ知らなかったね〜」
ふふん!と何やら優越感たっぷりの態度で喋り出す義政
いや、別に特別な事でもないぞ義政よ
「なんすか?買ってるんじゃないんすか?てか鬱陶しいっすよ先輩」
「なんで俺にそんな冷たいの?!ちょっとは先輩を敬うって事してくんない?!」
「先輩、敬うって言葉知ってます?」
「知ってるよ?!」
もう教えてあげない!と義政は拗ねてしまったわい
まぁ確かに優也くんはちと冷たいような…
「あ、良かったら俺の分のわらび餅も食べて下さい神様」
うん、優也くんは優しいのう
「菓子の出所じゃがな、購入しているわけでは無いんじゃよ」
「ちょっと、神様!教えるの?!俺にこんな冷たい優也くんに!」
冷たいってところが異様に強調されておるが無視じゃな
だって優也くん優しいしの
「実はの、ワシらが食べておる物は現世でいうお供え物とやらを貰ってきておるんじゃ」
「お供え物ですか??じゃあ供えた物は現世では無くなってるって事ですか??」
「いや、少し違うのう…現物はそのまま残っておる、ワシらが貰うのは供えた物の物質を貰うんじゃ」
「??」
んーなんと説明すれば良いかのう?
「神様ったらそんな説明じゃわかりにくいでしょ〜、要は供えた人の気持ちを貰ってるみたいなもんだよ〜!」
何言うとるんじゃ此奴
「そうなんですか?」
いや、違うぞ?
「義政よ、嘘はいかんぞ?」
「………」
「………」
まったく、そんな事じゃから敬ってもらえんのじゃぞ?
「生物にも無機物にもエネルギーという物が存在していての」
「はい」
「食べ物にもエネルギーがあるんじゃ、エネルギー=働きと思ってくれたら良い」
「働き…ですか?」
「うむ、例えば先ほどのわらび餅じゃが…味覚・臭覚・食感などはそのエネルギーによって天では生み出されるのじゃ」
「えっと…エネルギーが無かったらココには存在出来ないって事ですか??」
「そうじゃ、現世で食べ物が腐ったりするじゃろう?あれはそのエネルギーが無くなってくると起こる事なのじゃ」
「えっ!じゃあ食べ物が腐ったりするのってココのせいなんですか?!」
「いや、そうじゃなくての、ココで貰うエネルギーはほんの少しじゃ…エネルギーとは永遠にあるものでは無いんじゃよ」
「そうなんですか…」
そう、別に天でエネルギーを全部貰ってるから食べ物が腐るとかそんなではない
自然の摂理なのじゃ
「そのエネルギーとはどうやって貰ってるんですか?」
「貰いたい物に少し触れるだけで良いんじゃよ」
「え?それだけですか?」
「それだけじゃ」
よくわかってなさそうじゃが
まぁ触れれば感覚でわかるじゃろう
「今度義政に連れてってもらいなさい」
「えっ!また現世に行くの〜?」
「なんじゃ嫌そうじゃの」
「嫌ってゆうか〜あんまり動きたくないなぁって」
「お主それでも先輩か?ちゃんと教えてやれば優也くんも冷たくはしないとおもうが?のう?優也くん?」
「え?あ、えぇそうですね」
「ん〜しょうがないなぁ!じゃあ今度一緒に行こうか!」
その一言が余計だと気付かんのか
見ろ優也くんの目を
あれは先輩を見る目では無いぞ
「ま、まぁ義政は現世に行きなれておるから優也くん安心せい」
「はい、とりあえず今度連れてってもらいますね」
あー心の声が聞こえる!
本当は嫌ですけどって聞こえるよ優也くん!
すまんのう
こんなでも先輩だし普段はちゃんとしてるハズじゃから!
後輩が出来てちょーっと変なテンションで空回りしちゃってるだけじゃから!
たぶん!
「現世に行く時は先輩の後をちゃーんと付いてくるんだぞ〜?」
「………」
やめるんじゃ!
優也くんの顔をちゃんと見るんじゃ!
明らかにイラっとしとるから!
ワシは義政に人の顔色を伺うという言葉を抑えるべきか否か、悩みつつお茶を啜った