6.ワシの説教
「本当に何を考えておるのじゃ!この馬鹿たれが!」
ミカエルという者
実際はワシのよく知る者であった
「あはは、すみません」
「笑い事じゃないぞ!馬鹿者!」
「そんなバカバカ言わないで下さいよ〜、ちょっとした悪戯心じゃないっすか〜」
何が悪戯心じゃ!
見ろ!少年が話について行けず困惑しとるではないか!
「えっと…ミカエル先輩?」
「あー、ごめんねぇ?俺の言った事ぜーんぶ嘘なんだ〜」
「えっ?!あ、もしかして神様の前だからそんな事言うんですか?!そうですよね?!」
いやいや、違うからね
そやつの言ってる今の話は本当じゃからね?
「すまんのう、此奴の下に就かせたのが間違いじゃった」
本当に
「えー、神様酷くない?俺に対して酷くない?」
黙れ、先輩としてちゃんと働け
「じゃあ異世界の話は…」
「此奴のでまかせじゃ」
「そんな!」
少年はよほどショックだったのか
膝をついて何やらブツブツと言っている
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だウソダウソダウソダウソダ」
うん、今は近づかん方が良いな
「して、ミカエルとやらは何故こんな事したのかのう?ん?」
「や、やめて下さいよ神様、ミカエルだなんて!それにさっきも言ったじゃないすか「悪戯心とな?」う、そうです」
馬鹿か
そうか馬鹿じゃったの
「皆が忙しいとわかっておるよのう?ミカエルよ?」
「あ、はい」
「忙しいとわかっておりながら、更に仕事を増やすような事をお主はしたくて仕方なかったのかの?ミカエルよ」
「い、いえ、そんな事は」
「そうかそうか、そうよな?そんな事はないよな?お主とてそんな愚か者なハズないよのう?ミカエルよ」
「あの、そのミカエルってのやめ「なんじゃミカエル?お主はミカエルなのじゃろ?ん?どうなのじゃミカエル」
「ほんっとうに!すみませんでした!」
ふむ、まぁワシの怒りが伝わったみたいで良かった良かった
「本当に反省しとるのか?ん?」
「反省します、すみませんでした!」
「そうかそうか、ならあの少年に今すぐ謝ってこい」
そう言い未だに念仏…あ、いや何やら呪文……何やらブツブツ言っておる少年の方へ誘導する
「ちょちょちょ!待って下さい!アレに近づけと?!なんかブツブツ言ってて怖い!」
「何を言っておる元凶が、さっさと行かんか」
半ば無理矢理に少年に近づかせる
「か、神様!押さないで下さい!」
「お主が動こうとせんから、ワシがこうして背中を押してやってるんじゃろ?」
「物理的より出来れば精神的な方で背中押してほしいです!」
「自業自得という言葉は知っとるかの?」
「神様が俺に冷たい!」
というようなやり取りをしているうちに
少年がすぐ側まで来ていた
「………先輩」
「ひぇ!……ごごご、ごめんね?本当にごめん!」
「はぁ……もう良いっすよ」
少年は冷静になったようで、謝罪を受け取り許したようだ
そしてこちらを見つめ
「神様、迷惑をお掛けしすみませんでした」
「良い良い、お主は先輩の事を信じただけじゃろ?悪いのはその先輩じゃから気にせんで良い」
そう気にせんで良い
水ようかんが犠牲になっただけじゃ
そう水ようかんが…
「まぁこの件は良いとしてじゃ、お主ら改めて自己紹介をしたらどうじゃ?」
「自己紹介…ですか??」
何故??というような顔をする少年
それとは逆にバツが悪そうな顔をしている少年の先輩
「改めて自己紹介させてね、俺の名はミカエルじゃなくて義政ってゆうんだ宜しくね」
「あ、どうも優也です……て、えぇ?!名前も嘘だったんすか?!」
「あはは、そうなんだ〜」
「まじかよ!俺本物のミカエル様に会ったと思ってテンション上がってたのに!」
ん?本物??
「そのミカエル様とはなんじゃ??」
「何言ってるんですか神様、ミカエル様って言ったら大天使の1人に決まってるじゃないですか〜!」
えぇ何それワシ知らない
「あー…義政は知っておるのか?そのミカエル様とやらを」
「知ってますよ〜!現世の本に載ってますから」
そうなのか
ん?もしかして…
「もしや、異世界というのもその本に載っておるのか?」
「あ〜優也くんの言う異世界の話はまた別の本ですね〜」
そ、そうなのか
ややこしいのう
「えっと、もしかしてミカエル様も居ないんですか?」
優也くんがこちらを伺う
ワシと義政は苦笑いをし
「ワシの知る限りでは居ないのう」
「俺も本でしか知らないよ〜」
おっと、ショックを受けてるようだの
「まぁワシは日本國専門じゃから、もしかしたら他国に居るかもしれんが…」
「え?専門??」
なんじゃ?
おかしな事言ったかの?
「あ、説明するの忘れてた〜」
おいこら先輩仕事しろ先輩
「えっとね〜、国ごとに専属の神様がいてそれぞれが国民の管理をしてる感じ?」
感じ?じゃないわい!
そんなんでわかるわけなかろうに
「あ、そうなんですね!」
わかるんかい!
いやいや、ざっくばらんすぎるじゃろ
「んでココは日本の天国?みたいな?天も現世同様に国ごとに別れてるんだよ〜!だからココには日本人しか居ないんだ〜」
「そうなんですね!ん?でも義政先輩も日本人なんすか??」
「あぁ、義政は国が出来る前からの者じゃから日本人というかは微妙なところじゃの」
「えっ!?国が出来る前?!」
「そうそう、ちなみに義政って名前は日本國が出来てから神様が俺に付けてくれたんだよ〜」
「えっ?…えっ??と、とりあえず……義政先輩は物凄く先輩なんすね?」
あ、困惑しとるのう
まぁ一気に説明したところで混乱するじゃろうて
「……少し話がズレたが、此奴はミカエルではなく義政という適当な奴じゃが、こんな奴でも一応先輩じゃから何かあれば頼ると良い」
「こんな奴って酷いですよ神様〜」
「わかりました!一応先輩ですもんね!一応!頼りにします!」
「あれ?優也くんもなんか俺に辛辣じゃない?気のせい?」
「そうじゃ、義政よ」
「え、はい何ですか?」
「ワシの水ようかんがのうなってしもうてのう」
「あ、はい」
「本当ならもう食べ終わりゆっくり茶を飲んでるハズじゃったんじゃが…」
誰かさんのせいで予定が狂ったのう、と義政に視線を送る
「あ、もし良かったら俺のロールケーキを…」
「水ようかんが食べたいのう」
「すみません、俺のは洋菓子しか」
「水ようかんが食べたいのう」
「………」
「………」
「水ようかん用意してきます」
「いやぁ悪いのう」
こうしてワシの水ようかんを取り戻し
誤解を解き
義政と優也くんは仲良くしとるようじゃ
「うむ、やはり甘味は良い」