5.ワシの憤怒
ふぅ
今日はこれくらいで切り上げようかのう
「確かまだ茶菓子が残ってたはず…」
おぉ、あったあった!
ふふふ、仕事の後の熱い茶と甘味は最高じゃ
な
機嫌良く茶と菓子をお盆に乗せ、テーブルに運ぼうとしたその時
ドドドドドドドドッ
ん?何やら人影が近づいてき「神様!!」
「ぐはぁっ!!」
猛スピードで近づいて来た影がワシの腹に攻撃
あ、いや突進してきおった
その衝撃のせいで手からお盆が離れ
諸々が周りに散乱する
「ワ、ワシの水ようかんーーー!!」
ワシの至福のひと時が!
甘味が!
「なんなのじゃ一体!」
少しだけ
ほんのちょーっとだけ腹が立ったワシは
腹に激突してきた者を
すこーしだけ睨みながら見やる
「神様!どうゆう事ですか?!」
「何が?!」
「説明して下さい!」
「だから何が?!」
最近なんか話聞いてくれない子増えてない?
気のせい?
ねぇ気のせい??
「ん?お主…確かこの前の」
異世界がどうのとか言っておった少年では…
「ファンタジー脳の子ではないか」
「えっ!俺そんな風に思われてたの?!」
あ、しまった
ついうっかり言葉に出てもうたわい
「ひどいよ神様!もしかして第一印象のせいで俺は異世界行けなかったの?!」
「ん?何を言っておるんじゃ??」
「とぼけないで下さい!」
いや、とぼけるも何も
異世界なぞ無いとあの時説明したハズなんじゃが…
「俺、神様の事信じて此処で働こうと決めたのに!」
うんうん
そうじゃな、此処で働く事になったのう
「でも先輩に聞いたんです!異世界は本当は実在するって!」
………
何じゃと?!
誰じゃ!
そんな嘘を言ってる先輩とやらは!
「先輩が言ってました、異世界へ行く人は神様が選んだ人だけだと…それならば仕方ないとわかります、ですが!神様は異世界は無いと俺に嘘を付いたんですよね?!酷くないですか?!」
心底傷付きました!
と言わんばかりに目の前で泣き崩れてるのだが、ワシは嘘は言っておらんし
そもそも、その先輩とやらの話は信じるとか全然ワシの事信じてなくない?
逆に酷くない?
「あー…その先輩とやらは誰かのう?」
会って説教
あ、いや少しばかり話をしなければのう
「ミカエル先輩です!」
「ミカエル…じゃと?」
……えっ!誰それ?!
まさかの知らない名前が出て来て
ワシ驚愕
そんなワシを見て何を思ったのか少年は
「ミカエル先輩の名を聞いて驚いたという事は、やっぱりそうなんですね!異世界の事は神様とその使者しか知らないって先輩は言ってたし」
ちっがーう!
変な勘違いやめなさい!
「落ち着きなさい、その先輩とやらをワシのところに連れて来てはくれんかね?」
「……神様が呼べば良いじゃないですか」
すんごい拗ねてる
初めて会った時はこんな感じの子じゃなかったと思うのじゃが
「そのミカエルとやらにワシは心当たりが無いのでな、お主に呼んできて貰えると助かるのじゃが」
「またそんな嘘を!わかりましたよ!呼んできますよ!」
えぇー
全然ワシの事信用してないー
でもまぁ呼んできてくれるなら良いか
少しして少年は戻って来た
「言われた通り連れて来ましたよ」
「………」
「………」
見つめ合うワシとミカエルと名乗る者
「お主がミカエルとな?」
思わず眉間にシワが寄る
「えーっと…あー…」
「お主がミ・カ・エ・ルとな?」
相手にワシの怒りが伝わったのか
顔が青ざめ汗をかいている
「この馬鹿者が!!」
この日1番の怒号が天中に響いたとか