ウツボカズラ
イチャラブものです。
信じてください。
僕はここに越してきてもう一ヶ月ぐらいになる普通のサラリーマンだ。
仕事の交通の不便でここに来たがなかなかに良い所だ。
自然もあって、空気も美味しくて必要な部分はほとんど開発された土地。
街並みも綺麗だ。しかも家賃も安い。
僕はここに永住するために神様に導かれたのかもしれない。
僕はサラリーマンになってもう三年経つがついに生きがいを見つけてしまった。
今までは夢もなく金をため続け、彼女も出来ずじまいだったが
好きな人を見つけてしまった・・・・・・!
恋なんていつぶりだろう。
小学校と中学校の頃を思い出す。
いやあ僕は幸せ者だ。
たとえその幸せがつかめなくても僕は前向きに生きていくぞ。
チャリンと音が鳴った。
僕の行きつけのカフェはいつもこの音と共に幸せを始めてくれる。
カフェネペンテス。僕はここが大好きだった。
もちろんカフェだからコーヒーやらも嗜むが僕の目的はそれではない。
「いらっしゃいませー。」
この美人の店長さんだ・・・・・・・・・・・!
誘導されるがままにいつもの席へ座る。
「すいません、コーヒーとワッフルください。」
「はーい。」
いつもの組み合わせも注文する。
この店はあまり客が来てないようだったが、町の人の評判はおおむね良好だった。
「はい。コーヒーとワッフルのセットでーす。」
いつものが来た。
「ありがとうございます。」
そして僕はコーヒーを飲み始めた。
「・・・・・お客さん最近毎日来てますね。」
初めて話しかけられた。嬉しい。
「はい、ここのコーヒーとワッフルがやみつきになっちゃいまして・・・・」
「うそ!ほんとに!?ありがとうございます・・・・・」
良い反応をしてくれる。
僕はコーヒーをのみながら質問をした。
「ここっていつからあるんですか?古さも新しさもある。」
「あーここは私の父が作った店なんですよ。」
「ほんとですか?どうりで古めかしさもある・・・・・」
楽しい!楽しすぎる!こんな何気ない会話はこんなに楽しいなんて!
なんて僕は幸福なのだろう。
ずっとここにいたい!彼女と話し続けていたい。
けれどもワッフルとコーヒーは少なくなっていく。
「そろそろお会計お願いします。」
「はーい。」
彼女のクールな瞳が好きだ。
「そういえば最近この町で行方不明者が出たらしいですよ。お客さんも気を付けて。」
「怖いですね。あなたも気を付けて・・・・・」
こうして僕はカフェを出た。
幸せの時間をもっと味わいたい・・・・・
だけどこれがあるから生きてられる・・・・・・・
そうして僕はカフェを後にした。
「キミ!またここの書類のここ間違えてるじゃないか!」
「すいません部長・・・・・・・・・・」
いつもの事だ。
僕は会社ではゴミみたいに扱われる。
「いいか!お前みたいなのの面倒見るのが一番めんどくさいんだ!定時で帰れるだけありがたいと思え!」
会社の方針で残業などはないが、次の日にツケがどんどん回ってくる。
いびりにいびり倒されるが仕事の量と時間がかなりカツカツだから仕方ない。
「なんで入社して三年も経つのにこんな簡単なことが出来ないんだよ!」
「すいません・・・・・・・・・・・」
これが毎日続く。
そして帰るときには
「おい、一緒に飲みにいかないか?昔は一緒に行ってくれたじゃんか。」
「ごめん、用事があって。」
「なんだよ付き合いわりーな。」
「すまない。」
飲むのに誘われて断って後から愚痴られるのもいつもの事さ。
でも僕には生きがいがある。
だからこそ幸せだ。
チャリン
この音だ。この音が僕を幸せにしてくれる。
「あ、お客さん。新しいスイーツ出来たけど試食してみません?お代はいいですから・・・・」
まじか。やった。
「良いんですか?ありがとうございます。」
「はいこれ・・・・・あとコーヒーもサービスでつけますね。」
新しいスイーツをほおばりながら話す。
「お客さんになら話してもいいかな・・・・・・・・・」
「・・・ん?なんですか??僕になんでもいってくださいよ。」
「・・・・・私、寂しいんです。父が死んでしまって、店にもあまり人が来なくて・・・・・」
・・・・・・・・・来た。チャンスの時!
「私、不安なんです・・・・・・このままじゃ寂しくて・・・・・」
勇気を出せ!僕!
「・・・・・・・・僕がいつでもここに来ますから。安心してください。」
言っちゃったああああああああ
なんかすごい恥ずかしい。
「・・・・・・・・・・ありがとう・・・・・・・・・・」
素で喜ばれた。
やばい超幸せ。
「・・・・・・・明日またここにきてください。ちょっと貴方と話がしたくて・・・・」
「いいですよ。明日仕事休みなんで・・・・・・・・・・」
彼女の表情が変わる。
「ありがとうございます!あの・・・・名前を聞かせてくれませんか?」
「・・・僕ですか?僕は凱って言います。そういうあなたは?」
「紗良って言います・・・・・・・」
「紗良さん?いい名前ですね。じゃあこれからもまたよろしくです。ご馳走様でした。」
・・・・・・・・決まった。
やった。
僕はあの子を落とすことが出来た。
しかも運がいいことに明日はちょうど休みだ。
幸せ。
夜中・・・・眠れないかも・・・・・・・・
「・・・・・・・・・」
朝のアラームとともに目が覚める。
いつもは会社だが今日は違う。
洗面台へ行き、顔を洗って歯を磨く。
そしてパンを焼いていつものように頬張る。
そして服を着替え、準備をする。
「・・・・・・・・よし!」
今日は決めてきた。
なかなかいいんじゃないかこの服装。
・・・・・・・・・・さていくか・・・・・・・・・・・・
そうして僕は歩み始めた。
「・・・・・・・・あ、凱さん。」
「おはようございます紗良さん。で御用って?」
「私の家に来てくれませんか寂しくてとてもやってられないんです。それに店も今日は休みなので。」
これはもう運命としか言いようがない。
「良いですとも!はやくいきましょう!」
「ここからあるいてすぐそこです。」
そして歩き始めると僕と手をつないでくれた。
心があたたまる。
願いが叶うってこういうことなんだ。
「・・・・・・・・・ほら着きましたよ。ほんとにすぐそこでしょ?」
「へぇここが。」
なかなかに良い所だった。
庭が広めに作られていて、ガーデニングが施してあった。
「・・・・・・・・・・この花は何ですか?」
「ああ、それはウツボカズラっていうの。」
「へえ、聞いたことありますよ。食虫植物でしたっけ?」
「そうなんです。私、食虫植物が大好きなんです!」
彼女にも趣味があるとは。これはますます探求しなくては!
そうささやいている!僕のゴーストが!
「虫を食べてくれるから刺される心配もないですし、見た目も好きでたまらなくて・・・・」
「なるほど。じゃあ有名なハエトリグサなんかも好きですか?」
「大好きです!もうほんとに・・・・・・・・」
談笑しながら家をまわった。
「・・・・・・・・・ありがとう。」
「え?」
「私の話をこんなにも聞いてくれてありがとう・・・・・・・」
そうすると彼女は泣きだした。
「ずっとずっと、寂しかったの・・・・・ほんとに・・・・・・・」
ここは思い切るしかないと思った。
「なんでも聞きますよだって僕、アナタの事が好きですから。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!」
これは成功だな。やった。
僕はなんて幸福な人間なんだ。
「あ・・・・・・ホントに・・・・・・・・・うぅ・・・・・・・・・」
僕に抱き着いてきた。
「・・・・・・・・・・大好き。凱さん・・・・・・・・・・・」
僕はもう死んでいいと思うぐらい気分が最大限まで高揚している。
そして二人は幸せに何時間も話した。
そして夜。
「・・・・・・・・・・・こんな時間まで・・・・・」
「いいんですよ・・・・・・・さ・・・・・・・・」
まさかの告白一日目でこれは・・・・・・・?
「・・・・・・・・・」
彼女は僕に体をゆだねてきた。
僕もそれに答える。
そしてきつくハグをした。
・・・・・・・・・!??!?
何言うことだろう。
彼女は僕の肩に噛みついたのだ。
全力で噛まれ、間もなく僕の肩は裂けた。
「な・・・・・・・・・・・・」
そして彼女を見ると僕の肩の肉を食べていた。
「・・・・・・・・・やめられない。この味。」
「き、きみ、なんで・・・・・・・・・・」
「ごめんなさい。私、寂しかったのは本当よ?でもね、あの味が忘れられないの。」
「え?・・・・・・・・・・・・」
「最近出た行方不明者も。そして私の父も。今は私の体の一部なのよ。」
「じゃあ君は・・・・・・・・・」
「たしかに嬉しかった。好きだった。けど我慢できないの・・・・人の肉が。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っっっ!!!。
彼女は僕の肩に食らいつき、僕の肩を貪った。
彼女は泣いていた。
「ごめんなさい・・・・ごめんなさい・・・・・・食べたくて・・・・・・・・・・美味しくて・・・」
肩はどんどんと噛み千切られ、骨も見えそうだった。
「好きな人だからなおさら食べたいの・・・・・・・・・・・・」
そして彼女は僕の耳にこう告げた。
「ネペンテスっていうのはウツボカズラの事よ。あなたはもう私に・・・・・・」
それを聞いたところで意識が途絶えた。
私は起きた。
昨日、とんでもないことをしてしまった。
でも私は好きな人を食べたかっただけ。許してくれない・・・・・?凱さん。
そして私は冷蔵庫から脂ののった肉を取り出した。
私はそれを食べながら庭へ出た。
そしてその肉を生えているウツボカズラの口に入れた。
そして私はウツボカズラに話しかけた。
「おはよう。凱さん・・・・・・」
アナタもウツボカズラにはまった虫なんですよ。
読んでくれてありがとう。