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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その千二十六


「手帳、発見。キュレネイ、速読」

「イエス。私に任せるであります」

「……器用なもんだぜ。連携も、バッチリってか」

「装備品から見て、こいつは近くの町まで逃げられる余力は用意していたみたいだね。そこに、荷物もある。食料品と、夜間用の燃料もある。あと、帝国軍の軍票もたくさん」




「ん。そいつは、あれだな」

「偽装品だね。シドニア・ジャンパーの詐欺の一環かな?」

「ああ。会計将校ってのは、便利な立場なんだよ……」

「コソコソ卑劣な詐欺で、帝国軍を弱らせていたんだね。まあ、敵軍だから別にいいけれど。あまり好きにはなれないや」




「それでいい。好きになれない部分も、多い相手ではあるからな」

「うん。あまり不正に近づくと、いっしょに堕落しちゃうもの。戦場での堕落は、怖いから。正義を背負えなくなると、本物のリーダーにはなれない」

「心に留めておく。さすがはオレの妹だぜ、ミア」

「そうだよ。さあ、キュレネイ。情報は得られたかな?」




「作戦行動についての情報はなかった。こいつは組織内での小銭専用の金貸しをしていたようであります。借金相手については、事細かく情報を記していた。あとは、いくつかの都市国家に対しての攻城作戦についてのまとめ書きばかり」

「それらはそれらで、保持しておいても良さそうだな」

「イエス。借金情報があれば、脅せる相手も出てくるかもしれない。こいつはなかなかの金策上手ではあったようであります。士官も、かなり金を借りていた」

「き、器用なことをするんですね。戦場で、か、金貸しなんて。ボクには、とてもやれません」




「先に進もう。オレが先頭を行く。ジャン、罠のニオイがすれば、言ってくれ」

「は、はい」

「ノヴァーク、騒がないようにな」

「分かっている。さっさと、行こうぜ」




―――ソルジェはナイフを構えたまま、チームを引き連れて古びた地下通路を進む。

暗がりと地下を流れる水の音、隠遁をするには適した場所だ。

待ち伏せと罠に気をつけながらも、若干の急ぎ足を選ぶ。

ジャンの嗅覚を頼りに出来るから、それもまた正しい……。




「ソルジェ兄さんたちの魔力が、遠くになっていくね」

「シドニア・ジャンパーを追いかけ始めたのね。こっちも、がんばらなくちゃ」

『てきを、ちかづけさせないぞー!!』

「片っ端から、矢を放つ……という作戦でいいんだね?」




「うん。プレイガストさんは、敵の中心か先頭を狙うようにして。外しても、進軍速度を遅くするように」

「私とククリは、敵の身体能力の高いヤツから仕留めていきますので」

「それが、猟兵の戦い方ということかね」

『うん!つよいやつから、ころしていけばいいんだ。そうすれば、なかまがしななくてすむでしょう!』




「やさしいね。苛烈なルールでもあるが。いいだろう。私も、矢を放とう」




―――ゼファーに対して、傭兵どもは積極的な動きを見せなかった。

可能な限り無視して、あの裂け目へと向かっているようだ。

だから、三人の射撃はかなり楽になる。

嫌がらせに過ぎなくても、敵の矢が放たれれば邪魔にはなったからね……。




―――プレイガストは、五人ばかりで徒党を組んで走る者たちの先頭を狙った。

長年の監禁生活で弱ってはいる体だが、彼は高度な呪術師でもある。

肉体を強化する呪術も、それなりには使えるのさ。

骨を動かすような呪術のおかげで、射撃姿勢は若かりし頃のそれになる……。




―――神速ではないが、十分な速さの矢だったね。

数学者でもあるせいだろう、放物線を意識した軌道だったよ。

竜の背から放ったにしては、なかなかに美しい軌道。

それゆえに、ベテランの傭兵は反応されてしまったのだが……。




―――剣により、プレイガストの放った矢は叩き落とされる。

ガッカリはしない、狩りをしていたころは昔のハナシだ。

弓術は亡き妻のほうが、ずっと上手だったのだし。

それに、足止めには成功している……。




―――ククリは、その傭兵を『それなりの戦力』と判断した。

殺す価値のある敵であり、すでに矢を放っている。

敵は避けられなかった、プレイガストの矢を防ぐために動いた直後であるし。

こいつもまた呪術『影枷』で、手足の動きが完全ではないからだ……。




「ぐ、ふう!?」

「ちくしょう!!竜から、矢を放って……こんな、精度に!?」

「さ、サイアクだぜ。このまま、進むべきなのか!?」

「他に、手などあるか。せめて、少尉と合流すれば―――」




―――ククルの放った矢が、二人目の傭兵の頭部を射抜いていた。

太陽の角度を意識した射撃であり、日光に隠されたそれを読み切るのは難しい。

傭兵たちも空の高みから射られるなど、未経験のことだったからね。

三人目は、プレイガストの矢が右腕に当たっていた……。




「ち、ちくしょうっ。オレは、こ、降参するぞ!!」

「ふ、ふざけるな!?」

「死にたく、ねえ。戦っても、ムダだ。逃げられないなら……せめて」

「情けない。だ、だが……」




「武装を、解除していくぞ。どうするべきかな?私は、あまりあの種の態度を取る者を殺したくはないが……」

「殺さなくていいよ。武器を手放したヤツは、大ケガしているしね」

「無事なヤツは、私が脚を射ますので…………はい、当たりました」




「ふむ。いい判断だと思うよ。彼らは傭兵だ。状況次第ではあるが、対帝国の戦力として雇える日もあるかもしれない」

「そうかな。ちょっと、そこまでは甘い考えじゃないかな?」

「『メルカ・コルン』としては、考えにくいんですけれど」

「戦況など、日で変わるものだよ。しかし、こうもあっさり降伏してくれるなら、説得してみるのも良さそうだ」




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