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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その千六


―――単純な賢さでは逆立ちしたってソルジェは、シドニア・ジャンパーに勝てない。

だが争いごとについては、猟兵が負けるようなことはないのさ。

ノヴァークはすっかりと自分の口周りに筋肉の主導権を、奪われている。

師匠の呪術に全身くまなく侵されていることを知り、喜んでいたらしいね……。




「初めまして、と言っておこうか。オレは『逆流』を使って、お前について色々と知っているんだがね」

「『女の記憶に土足で踏む込むとは、お前はデリカシーに欠ける男のようだ』」

「すまんな。騎士道に反してもいる行いではあるが、シドニア・ジャンパー少尉。君はとてつもなく優秀な呪術師であり、凶暴な作戦を実行しているようだから」

「『手加減は、してくれないか。女には甘いと思っていたのだが』」




「甘いよ。四人の妻を娶ったほどの色男なのだ」

「イエス。まだまだ妻が増えるかもしれないであります。団長は色男。先ほどの盗み聞きのときにも知ったであろう。ライバルの女とも結果的に寝るようなレベルの色男であります」

「キュレネイ、少し恥ずかしいから、その点は掘り下げないようにしようぜ」

「『つまらんハナシを聞かせてまで、『油断している演技』だとは』」




「もともと演技派なんだぜ。帝国軍の師団を率いる将軍に化けて、潜入したことだってある」

「『聞き及んでいるよ。十大師団の中枢の親衛隊でさえも、お前からすればただの雑魚の集まりか』」

「雑魚だって?そんなはずはないぞ。強い戦士たちだった。だが、年寄りも多い。重鎮たる者たちの悪癖ではあるかもしれないな。とっくの昔に、帝国軍の十大師団は年老いてしまっているんだ。それは、オレよりも内部にいた君の方が詳しいんじゃないのか?」

「『その腐敗と堕落と老化が、『自由同盟』とやらの勝利を確たるものにすると思っているとすれば、アタマの中はお花畑と言えるだろう』」




「美しい光景がオレの赤毛のなかに広がっているのか。そいつは、嬉しいハナシだ」

「皮肉が通じねーのかよ、うが……『やれやれ。我が弟子であり部下は、意外と集中力がある。魔力で呪術の支配を瞬間的にねじ伏せてしまったぞ』」

「褒めてやれ。ノヴァークはいいヤツだ。お前を助けようとしている」

「『いい子なのは知っているよ。だからこそ助けたし、知恵を授けた』」




「ガキを軍隊相手の大規模な詐欺に引き込むなんて、可愛げがあるとは思えないが」

「『可愛げなど、もとより求めていないのさ。私の目的は……』」

「ああ。姫さまだろう。ライザ・ソナーズの復活を狙っている」

「『どこまでも土足で、私の記憶を踏み荒らしたわけだ』」




「誤解をしているわけではないだろう。君だってもう知っているはずだ。その情報収集能力があれば、ライザ・ソナーズを殺したのはオレじゃないことぐらい。レヴェータだぞ」

「『知っている。とっくにな。だが、殺意を向けた。お前自身が言ったように。その時点で、私には耐えられない行動だ。それも、私の記憶を土足で踏みにじったのなら理解できるのではないか?』」

「そうだ。恨んでくれるなとは言わん。敵同士であった時期があれば、永遠の憎悪と怒りをぶつけてくれても構わない。だがな、シドニア・ジャンパー少尉。君の目標は、叶えない方がいい」

「『姫さま無き世界に、何の価値も見いだせていない女に何をほざく』」




「そう言われると説得が難しそうになるが。ヒトの復活など、ろくな結末にはならんぞ。つい先日、見た。リヒトホーフェンの娘は、蘇ったところで蟲の化身に過ぎなかった。『面影』に過ぎん。演じているが、偽物だ」

「『たとえ『面影』であったとしても、偽物に過ぎなかったとしても、死と無の虚ろさに比べれば、ずっとマシだとは思わないのか?』」

「思わんね。偽りで満足できるほど、愛や忠誠が安っぽいものだとは思わん。迷うことは分かる。間違ってその道を選ぶのも分かる。そもそも、間違いだとか、正しいだとか、そんな尺度で測れないかもしれないな」

「『私は目標を達成する。姫さまの恩義に応えるために、彼女に再び命を取り戻させるのだ』」




「シドニア・ジャンパー殿、その種の願いは呪術師の多くが願うものだ」

「『お前がプレイガストか。ずい分と痛めつけられていたはずだが、まだ生きていたか』」

「皇帝から長きに渡って拷問を受けさせられてきたからね。生き延びられた最大の理由は、生きていることが苦痛だからだと皇帝には分かったのだろう。あの男も妻を失った。私と違って、自らの手で殺したわけだが」

「『暗殺を仕掛けてきた妻を殺す。貴族の派閥争いは、残酷ではある。ああ、彼女が皇帝を暗殺していてくれたなら、そもそもこんな事態は起きなかったかもしれない』」




「その愚痴については、私も意を同じくする者だよ。皇帝ユアンダートさえいなければ、私は妻子たちと共に、どこか大陸の片隅で楽しく暮らせただろう。子供たちがハーフ・エルフであったなら、『自由同盟』への参加を自ら志していたかもしれないね」

「『失われた者との架空の思い出か。それを思えるのならば、私が止められないことを理解しているのではないか?』」

「それでもなお、忠告するのだ。ストラウス卿の言う通り、完全な復活などこの世にはないのだ。とくに、呪術の世界においてはね」

「『完全でなくてもいい。そう断言したつもりだったが、聞こえなかったとでも?』」




「君も理解しているはずだ。偽りの愛、偽りの忠誠。それは、本物のそれらに生きた者には、満足することなど不可能なひとり遊びになってしまうことを」

「『この痛みを、手放したいのさ』」

「それもまた間違いだよ。愛と忠誠を失ったとき、永遠の痛みと同居する。それを手放すなど、考えるべきではない。苦痛と共に、生きるしかないのだ」

「『まっぴらごめんだ。説教臭い男は、昔から好かん。お前は、大嫌いなタイプの男だぞ、呪術師プレイガストよ』」




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