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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その千三


「『呪いの赤い糸』は、明確だ。シドニア・ジャンパーを追いかけられるはず」

「は、はい。でも。何でしょうか。か、賢い人たちって、めちゃくちゃすごいですからねっ」

「そうだ。オレとジャンは、呪術師としての歴が浅い。そして、悲しいかなあまりアタマの出来ってものが良くないんだよ。そこは自信を持って主張していいことだ。つまり、策にはめられてしまうリスクもある」

「イエス。団長やジャンの能力を、敵が知っているリスクは否めないであります」




「あちこちの戦場で、お兄ちゃんの呪術も見せちゃってるしね」

「有名になるもんじゃないな。ガルフが叱るかもしれん。恐れられるつもりで、いくらか偽情報は撒いてるんだが……戦闘の場では、どうにも手の内を出さんわけにはいかなくなる。とくに、レヴェータだ」

「は、はい。『プレイレス』の戦闘では、て、帝国軍の前でも呪術を使いました」

「呪術研究が盛んでもある土地だ。レヴェータと、ヤツの呪術との戦いで、オレも魔眼を酷使しまくっている。見られたはずだ。帝国兵にも」




―――普段なら『とっておきの能力』は、情報を隠蔽したいものだ。

だが、皇太子レヴェータとの戦いではそう上手くはいかなかったからね。

帝国兵と協調する状況さえあったし、帝国軍が大勢いる戦場で呪術の全てを使った。

ソルジェの呪術を、いくらか研究されていたとしてもおかしくはない……。




―――帝国軍の分析力だって、バカには出来ないものだよ。

戦闘に関するプロは、大陸のどの組織よりも当然ながら多いんだから。

呪術を公式に禁止していたとしても、研究者や呪術師はあちこちにいる。

対策のための研究だって、かなりしているわけだからね……。




「竜にまつわる文献は、かなり希少なものでしょう。しかし、見たことがないというわけにはいかない」

「あるんだね、プレイガストさんは」

「一体、どんな内容だったのでしょうか?」

「生態についてのものだったよ。強力な魔術や、そして、呪術の持ち主でもあると記述されていた。大学半島の大学の一つ、『マシーズ』の学者だけが閲覧可能な深層図書館で見たものだ。帝国に接収されていなければ、いまだに保管されているのだろうが……」




「竜対策には、帝国軍もかなり力を入れていたであります。竜についての情報は、かなりかき集めたはず」

「うむ。懸念される学術破壊だね」

「竜についての本は、我がストラウス家が独占しておきたいところだな」

「それで、竜についてはどんなことが書いてあったのかな、プレイガストのおっちゃん?」




「現状の脅威となり得るとすれば、やはり竜の呪術の研究だろう。にらみつけるだけで、相手を石に変えてしまう『竜の呪術師』もいたとか?」

「ああ、いたぞ。死んじまったがな。アーレスの子の一頭、つまり、このゼファーの叔父さんだな」

『おじさん、すごいじゅじゅつし』

「ぜ、ゼファーも、そんな呪術を覚えられるんでしょうか?」




「『竜の呪術』は、『個性が強い』との記述もありました。生まれ持った特性が、その力を決めてしまうのかもしれません」

「ガルーナの竜は、そもそも呪術をあまり好まなかったからな。ゼファーの叔父竜も、魔力自体はゼファーよりは高くないはずだ。『グレート・ドラゴン/耐久卵の仔』ではないからな」

「つ、つまり。強いとか弱いとかじゃなく、そもそも使えるタイプの呪術が決まってる?」

「その可能性は十分にあるでしょう。そして、それには不味さもあります」




「パターン化が、あるかもってことだね?」

「竜の呪術は強すぎるし、先天的な決定であるとすれば、バリエーションは少ないかもしれません」

「左様。『グレート・ドラゴン』による、種内の強制淘汰も経れば、多様性は失われがちかもしれません。強いとは、最適解に近しい。最適解の数は、多くはないものです」

「『過去の竜たちと比べられる』というわけでありますな。つまり、魔眼の使い手である竜についての記述を調べれば、団長やゼファーの能力も探り当てられるかもしれない」




「アーレスも、魔眼の使い手だった。となれば、アーレスが暴れ回っていた時代の研究があれば、オレたちの手の内も、少しは分かってしまうだろう」

「懸念すべきことですが、あり得ます。その情報を、帝国軍や……さらには呪術師であるシドニア・ジャンパーならば、集めている可能性は拭いきれません」

「少尉は、ソルジェ・ストラウスを嫌っていたんだよ。だって、アンタが来なかったら、姫さまは死なずに済んだかもしれないし」

「彼女について色々と知っちまった今では、殺すべきではないとさえ思う人物だ。だが、あのときは殺すつもりだったのも確かだ。レヴェータが殺したんだが、家臣に恨まれても、まあ、しょうがない。受けて立つべき因縁ではあるが」




「生産的に、振る舞うべきでしょう。誰もが所属した勢力には縛られるものですが、絶対というものはないものですから。とくに、極めて優秀な詐欺師ならば、帝国への攻撃には使える」

「オレの少尉を、使い捨ての道具みたいにしようとするなら、オレだって根性を出すかもしれない」

「ククク!そんな真似はしないさ。一生、つるめるようなヤツかは自信がない。だが、少なくとも、使い捨てにしていいような才能じゃないぜ。ユアンダートと帝国を潰すための、強烈な戦術を担えるヤツだ」

「イエス。無理やりにでも、生かして協力を強いるであります。団長がやりにくい場合は、私と双子たちの出番であります」





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