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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その九百九十七


―――我らがロロカはとても賢い、詐欺も欺瞞も嫌っているけれど使いこなせるんだよ。

これについては、ガンダラよりもはるかに『上』だと認めざるを得ないね。

具体的なフォロー策も、出来上がりつつあるのさ。

我らがルード王国の用意したダミー会社、それを使うのだとね……。




―――ああ、ボクたちルード王国は『帝国内に会社を持っている』のさ。

表立ってはルード王国という形ではなく、帝国市民を偽って経営している会社。

リンゴ酒の貿易会社の演技をしているけれど、リンゴ酒なんて一本も売ってない。

ただの諜報用の拠点であるものの、帳簿上はかなりの儲けを出す高額納税企業だ……。




「ルード王国のダミー会社を使い、生存していた皇太子レヴェータが発行した債券を買わせるのです。そうすれば、帝国のビジネス界は信じるでしょうね。とてつもなく高額で売り買いされる皇太子債券を買い求めてくれる」

「……なかなか、鋭い作戦だね」

「ドン引きしないでくださいね。私だって、あまり好ましい作戦だとは思ってはいないのです。しかし、有効ではある以上、選ぶことで、帝国軍との戦いで死ぬ戦士の数が減ります。若い学生兵たちを見ていると、帝国との戦いで死亡する者を減らしたくもなるの」

「同意見だぜ。オレからすれば、あのガキたちは……子供みたいなもんだ」




「学生たちは戦後にこそ、その頭脳を使って欲しいのです」

「そーだよな。オレみたいな、乱暴者の傭兵ごときが死ぬべきだ」

「あら、アーベルくん。いじけているんですか?」

「そうじゃないよ、副社長さん。オレはいつだって、ただの傭兵でありたいだけなんだよ」




「ガルーナ王国軍で騎士にだってなれるでしょう。十分な腕前と、その長い従軍経験があれば、メイウェイさんがそうしたように、ソルジェさんも重用するに決まっているもの」

「だから、どうしてそう勧誘したがるんだ?」

「有能だからですよ。帝国軍の戦い方を熟知している、傭兵。お金を多く出せば雇えるのなら、ストラウス商会がたくさん出してあげますけれど」

「今は、私と契約している身だ。引き抜き工作は、また後日にしてくれたまえ」




「そうですね。すみません。この子、何だか可愛らしいので」

「美人の人妻に褒められちまったよ。ああ、光栄なことだな……あいた!?」

「すまんなあ、手がすべっちまった」

「いいジャブ入れてくれるな、大尉……こういうの、良くないよ。若手が離反する」




「悪かった。だが、レディーに対して品がない。それが、お前の騎士道でいいとでも?」

「うっ。それは、そう、だな……すみませんでした、ロロカ・シャーネルお姉さん殿」

「お姉さん殿だなんて、ほんとうに可愛い子」

「うるせえ。バカにするなっての。それで、その詐欺作戦について、もっと教えてくれよ。傭兵として備えておきたいし、将来的にも、覚えていれば対抗できるかもしれない」




「勉強熱心な若者は好ましいものです。私がフォローするための策としては、地図を用意するというのもありますね。『皇太子が建国する予定の王国の地図』です。具体的に、何処かに存在するかのように見せかければ、人は大なり小なり期待を強くしてくれますから」

「……たしかにな。地図があれば、それだけで『本当にあるかのような気がする』もんな」

「そういうことです。幸いというか、得意なんですよね、『パンジャール猟兵団』は地図作りにかけては大陸随一ですよ。はい、これをご覧ください」

「お、おお。なんだ、こいつは。スゲーな……帝国軍より、精密なんだじゃないか?」




「ソルジェさんの竜騎士の測量法と、ガルフさん直伝の傭兵地図術の合体したものです。オットーさんの、冒険家としての注釈や、サージャーの特殊な観測術も混じっていますが。大陸でも屈指の地図であるのは、間違いがありません」

「このレベルで『ニセモノの地図』を描かれたら、オレやメイウェイだって信じるかもしれないぞ。ロロカ・シャーネル殿、これはとんでもない力だ」

「ええ。あまり他人様に見せたくはありません。猟兵の戦略の要となるアイテムの一つですからね。友情と信頼のために、見せているんです」

「ありがたいことだね。私を、もう少し警戒しているかと心配していたよ」




「メイウェイさんは『今回に関して』は、絶対に大丈夫だと思いますので」

「読まれているようだ。賢さというものは、多くを見抜いてくれる」

「まあ、そいつはいいじゃないか。とにかく、ロロカ・シャーネル殿。この地図は、絶対に有効だぞ。帝国人に『皇太子が国作りをしている』と確実に信じ込ませられるリアリティがある」

「あとは現地の特産品でも、送り込むことも有効でしょう。まるで、占領予定の土地が順調に掌握されているかのように見えますからね」




「その特産品も、つまりは、適当ってことか?」

「もちろん。一から十まで、嘘ですよ。だって、実在しないのですから。でも、その種の作戦と、帝国軍の会計将校の知識や情報ルートを使えるのならば、合わせ技で、ほぼ確実に騙せるでしょう。帝国から資金や物資、武器や馬車さえも、吸い上げられるます。戦で、二、三回、勝ったのと同じか、それ以上のダメージを帝国に与えられるでしょうね」

「そこまで、有効なのかよ」

「最低限で、それぐらいのダメージですよ。もっと、策を合わせて行けば、猛毒のように帝国軍のお金や物資の流れを、腐らせるでしょうね。こちらの戦士の一人として、血を流さないうちに……そう考えると、哲学に反してでも、やる価値は確かにあるんです」




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