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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その六百五十五


「……メイウェイが、動きやがるか。ならば、オレも合流するとしよう!!」




―――馬を走らせて、アーベルはメイウェイの元へと向かった。

長らくの戦場暮らしだから、突撃の気配というものは肌が覚えている。

全力での突撃のあげくに、殺りくを行うと決めたとき。

軍勢の放つ気配というものは、あまりにも物騒であり刺々しいものだ……。




―――メイウェイの気迫の大きさを、アーベルは感じ取っている。

将のたぐいが放つそれは、人々の群れをひとつにまとめ上げてしまうものだ。

馬の上で長剣を抜き放つ動き、それらのすべてを兵士たちは見ている。

軍勢そのものが持っている気配が、大きく膨れ上がっていく感覚があった……。




―――兵士たちは理解しているよ、自分自身で認めようとしている。

自分たちは、『メイウェイの兵士である』。

『これはメイウェイのための兵隊なのであり、彼は敵の死を望んでいる』。

忠誠の芽吹きというものを、アーベルは目撃していたのさ……。




「突撃しろ!!私に続け!!逃げ行く敵を蹴散らしにかかるぞ!!!」

「サー、イエス・サー!!!」

「帝国軍どもを、一掃するぞおおおおお!!!」

「敵を、皆殺しにしてやれええええ!!!」




―――血が沸き立つ瞬間というものが、たしかにこの世には実在するんだよ。

戦闘がくれる多幸感というものを、否定し切れる者はいないだろう。

原始的な衝動性であり、これは人々の心を満たす行動でもあるのさ。

正しいとまでは断言しない、人類にはもっと美しい側面だってあるはずだからね……。




―――でも、これもまたヒトの本質なんだよ。

逃げる敵に対して残酷さを発揮しようとしたとき、記憶と感情があふれもするし。

それらさえも圧倒する、謎めいたと呼ぶには具体的過ぎる充実があった。

ヒトは戦いも好きだし、一方的な殺りくはそれよりもっと好きな動物なのは確かさ……。




「オレも、続くぜ、メイウェイ!!」

「ついて来い!!私を護衛する権利を、お前に与えてやろう!!」

「偉そうに、いや、偉いよな!!この軍の、トップなんだからよ!!」

「その通りだ!!敵を、殺しまくれ!!」




―――メイウェイの馬術は見事なものだ、立ち並ぶ杉の大樹を縫うように駆け抜けた。

速さもあるし荒々しいステップを踏む馬の背から、振り落とされないのは大変だ。

技巧の高さを見せられると、戦場では統治者になれる。

戦士的な尊敬を得た指揮官にのみ、戦士は心からの尊敬を与えてくれるものだ……。




「メイウェイ殿を、守れ!!」

「敵を打ち砕き、彼に勝利を!!」

「我々は、一丸となり!!」

「帝国兵どもを、殺すぞ!!」




―――騎兵も歩兵も、逃げていく帝国兵どもの背後から鋼を叩き込んでいく。

逃げない敵であったところで、この鋼がくれる運命からは逃れられない。

強烈な一撃が、そこら中で命を破壊していくんだよ。

悲鳴と怒声と断末魔と、ぶつかり合う鋼の甲高い叫びのなかで……。




―――メイウェイから『逃げようとしてしまった』、哀れな敵どもは死を迎えていく。

逃げなかった方が、まだマシに戦えたかもしれないが。

それでも運命は変わらなかっただろう、戦力差というものがあまりにも違っている。

不一致な軍勢が、一致した行動をする軍勢の前では相手になどならないものさ……。




―――血まみれにされた帝国兵どもの死体が、杉の根元に横たわる。

アーベルも馬上から振り下ろす剣と、弓を使った攻撃を交互に繰り出して死を作った。

討つべき仇を探しているが、確認する余裕もない。

次から次に殺していくのみ、メイウェイからの要求は厳しいものがあったからだ……。




「誰よりも殺せよ、アーベル!!私よりもだ!!一番槍の名誉を、よりかがやかせてみろ!!我らが軍勢は、ハーフ・エルフの戦士が活躍することを望んでいるのだ!!」

「アリーチェのおかげで、ずいぶんと、期待されてしまっている!!」

「見せたまえ、見せつけるために殺すんだ!!我らが軍勢に、人種差別はない!!すべての種族が融け合う、強靭無比な、破壊力の化身であると!!」

「やってやるよ、バハルさま、セリーヌさま……みんな……力を、貸してくれ!!」




―――ハーフ・エルフの身軽さと、傭兵として生きてきた人生が彼に力をくれる。

剣を口に咥えながら、弓を撃つ。

それが命中していくんだからね、技巧を見せつけられると戦士は尊敬されるものだ。

そして、戦士というものは基本的に負けず嫌いがとても多くいるものだよ……。




「負けるかよ!オレたちだって、仕留めてやるぞ!!」

「帝国兵どもに殺された仲間は、多いんだから!!」

「正義を示す!!『自由同盟』は、帝国軍などに負けないのだ!!」

「殺せ!!殺せ!!殺しまくれええええ!!」




―――圧倒的な破壊力が、そこに生まれていた。

メイウェイによる巧みな軍勢の誘導も、この結果を招いている。

メイウェイは突撃していく仲間たちを、まっすぐ闇雲に走らせたわけではない。

北西に向かって軍勢を走らせている、これで逃げ行く敵の背後を斜めに攻められる……。




―――先頭の強兵部隊で敵を蹴散らしながらも、後続の戦士たちで戦列の壁を作る。

背後から追いついてくれた仲間のおかげで、敵は先頭部隊に集中出来ない。

敵が先頭部隊を包囲できない以上、力の差で各個撃破の連鎖が起きていく。

そのあげく、速度と突破力のあるメイウェイ直下の部隊は……。




「敵を大外から包囲してやれるぞ!!後続部隊と連携して、二つの角度から挟み込みながら駆逐してやれるというわけだ!!」

「本当に、包囲しちまってやがる……」

「ところどころに、敵兵を『逃がす穴』をあけておけ!!戦闘意欲がない敵は、そこから抜けさせろ!!走らせて、疲れさせてやれば、後から楽に狩れるから問題にするな!!」

「イエス・サー!!帝国軍ども、みじめに逃げ回れよ!!」




「武器を捨てるなら、見逃してやれ!!殺す者に、素手の者がいてはならん!!帝国兵よ、私の、このメイウェイの捕虜となる権利も、諸君らには許してやるのだ!!」




―――戦場では、名誉が大きな威力を発揮してくれたよ。

メイウェイの高潔さや知名度に、帝国兵どもさえ期待しているんだ。

捕虜になる者が、そこら中で頻発していく。

戦闘せずに武装解除してやれるのなら、とてつもなく楽な勝利と言えるさ……。




―――戦闘が起きていたのは、けっきょくのところ三十分弱。

たったそれだけの時間で、こちらの死傷者は数えるほどだったというのに。

帝国兵どもの死体と、捕虜となった連中がこの杉林には無数にいた。

地面に伏せて震える降伏者と、血まみれの死者が……。




「……楽勝だったな。アンタは、マジで、大天才だ」

「まだまださ。もっと、殺しにかかるぞ」

「本気かよ。まあ、たしかに……疲れているのは、敵の方だよな」

「進むぞ。逃げ出した敵を、さらに削るために」




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