表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4700/5090

第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その六百五十二


―――貴重な馬を回収したアーベルは、『仲間』を呼んだ。

アーベルの突出を心配していた友軍兵が、馬に近づくとその背に乗っていく。

馬を回収してくれるのさ、ついでと言わんばかりに捕虜も回収させた。

いい勝利ではある、メイウェイがどんなに天才でも褒めてくれるだろう……。




「……ろくな死に方を、しないと思うぜ」

「オレに言ってるのか?だとすれば、そんなことはとっくの昔に理解している」

「……ちくしょうめ。腹立たしい敗北だ」

「捕虜として、丁寧にあつかってやれ。オレの捕虜だ!」




「分かっているよ。これだけ馬も回収出来るなんて。まだ、両軍がぶつかる前だぞ?」

「才能があるんだ。不運な人生を、実力で価値あるものに変えられるほど」

「そうらしい。気をつけろよ。無理せずに、下がるんだぞ」

「……もう少し、挑発をつづけたあとでな」




―――アーベルは下がらなかった、無理するつもりはない。

敵の動きから、まだ『挑発できる』と判断しただけだった。

林は絶対的な境界線のようになってしまい、帝国兵どもは一歩も出て来ない。

怒号は飛び交っていたが、アーベルの『強さ』に敵は戸惑っていたんだ……。




「飛び出すから、返り討ちにされるんだ!!」

「いいや!!突撃した者への連携が、まったくなかったせいだろ!!どうして、援護射撃のひとつもしてくれないんだ!?」

「命令は、待機だったはず!!」

「臨機応変に動けなければ、指揮官のいる意味がないんだぞ!?」





―――責任の押し付け合いになっていた、不仲な軍勢はこれだからいけない。

アーベルは堂々と林に近づいていき、敵の視線を自分一人に集めてみせる。

矢を射れば当たるかもしれない距離だったが、帝国軍の指示は『待機』のままだ。

ハーフ・エルフのことを、心の底から憎んでいる連中だというのにね……。




「お前ら、オレが嫌いだろ!!ハーフ・エルフに、何人も殺されて、馬まで奪われているのに!!どうして、指をくわえたまま、やられていやがるんだ!!ちょっとは、勇気ってものを見せてみろよ!!」




―――なかなかのあおり上手だった、これもまた戦場ではときに必要とされる技巧だ。

アーベルへの悪感情が高まっているおかげで、無駄に集中しているおかげで。

メイウェイは、密かに作戦を命令することが出来るのだからね。

彼ほどの男が何もしないはずがない、絶好の機会は活かすべきだよ……。




「少数でいい。森の北側に回り込め。静かにだ。気取られないように背を低くして進んでくれ」

「了解です、ただちに行動を開始します」




―――少数ではある、だが少数だからいい点もあるのさ。

敵から見つかりにくいという利点が、この種の行動には大切だからね。

ほふく前進だとか、自軍の影に隠れながら。

メイウェイの命令を受けた戦士たちが、こっそりと移動を完了させていく……。




「『プレイレス杉』は、偵察には向かないからな。見張りを登らせるには、ややすべりすぎる」




―――戦場で大きな力を発揮するのは、『高さ』だった。

物見やぐらを組めれば、敵の陣形のすべてがしっかりと把握できもする。

坂道を駆け上るのは、それだけで体力も時間も消費してしまうし。

頭上からの攻撃というものに、ヒトは基本的に反応しにくもあった……。




―――『プレイレス杉』は最高の建材ではあるけれど、物見やぐらの代役としては不適だ。

枝打ちの時期は、まだ二か月以上先だったからね。

夏の日差しを受け止めるように大量の枝が元気に生えていて、とげとげしくて登れない。

帝国兵どもがこちらの動きを把握できないのを、メイウェイは悟っていた……。




―――植物の状況だけが、判断材料の全てではないとも付け加えておこう。

馬で駆け抜けたアーベルの動きに対しての反応も、考慮してのことだ。

高い位置から矢を放つ者もいなければ、適切な命令さえやれていない。

帝国軍が内部対立で荒れているとは言え、ああもコケにされるのは実力以下だ……。




「やぐらを組めなかった。疲れすぎているのか、離反者が多かったのか。あるいは、前線に兵力を置きたくないという意志の果てに、後方に兵力を移動させるので必死だっただけか。読めることは、かなりあるぞ。アーベルは、いい働きをしてくれているんだ」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ