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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その六百四十八


―――ベテランの有利は、視野の広さなのは確かだ。

経験値や知識が形作る感覚というもは、常識離れした機能を帯びていくからね。

メイウェイやボクたち猟兵なら、襲撃部隊の指揮官だって見抜いただろう。

若いアーベルにはそれだけの経験値がない、これはただの慣れでもあるんだ……。




「たらればは、無意味だな。私がその場にいても救えなかったかもしれない」

「……でも、見抜けた。倒すべき相手を」

「それについてだけは自信がある。次の機会では、君もやれるだろう」

「……次の機会なんて、オレには……」




「失った仲間だけが、君のすべてではない。少なくとも、今、すでに。君は新たな立場で兵士として生きようとしている」

「……復讐の、ためにだ」

「かまわないよ。とりあえずの動機は、それで十分過ぎる。君は学んだんだ。得難い経験を仲間たちから遺してもらい、継承した。背負ったものがあるんだ。それを引きずってもいい。進め」

「……あいつらを、壊滅させてやる」




「知恵を貸してやれる。復讐の機会は、すぐに訪れるよ。国境沿いで暗殺を仕掛けるような兵士は、遠くに逃げられるものじゃない。血塗られた部隊には、受け入れ先なんて少ないものだ」

「……連中を、特定する方法は?」

「捕虜にしてから、見つけ出してやるのがいちばん安全だ」

「安全な方法なんて、求めちゃいない」




「誰しもが『ナワバリ』を持っているものだ。国境沿いの最前線であっても、いや、そういった重要かつ危険な地域だからこそ、兵士は本能的に場所に依存する。同郷の者で固まろうとしたり、同じ政治的信条を共有する者や、同じ種族で固まろうとする。君らが襲われた場所に、こちらが攻め込めば……否が応でも出会えるよ」

「……そうか。それなら……」

「何処で襲われたんだね。そろそろ、見えて来る頃じゃないか?」

「……あそこだよ。森が見えるだろ。ちいさな、つまんねえ杉ばかりの森が」




「船の素材になってくれる、良い杉なんだぞ」

「知ったコトかよ。とにかく……あの森の、向こう側だ」

「進路を変えよう。君の仇どもは逃げられはしないだろうから、すぐに会える」

「……勝手に、進路を変えてもいいのかよ……って。そりゃ、そうか」




「私がトップだからな。誰とどう戦うのか、決められるのが指揮官のいいトコロだ」

「……逃げられない、か」

「あの杉を売ろうと考えているかもしれない。なかなかいい稼ぎになる。連中にとっては資産とも言えるよ」

「腐敗か。略奪なんてマネは、騎士道が……」




「兵士としては、至極当然の行いでもある」

「……そうだろうな。そうだとしても」

「倫理観を高く保つのは、君にとっての武器になる」

「分かっている。オレは、騎士道を……継ぎたいんだよ。ようやく、分かったかもしれない」




「復讐をしよう。君らを襲った連中は、あの価値ある森からは逃げないさ。十大師団のように、給与面で優遇されているわけでもないだろし……戦争の報奨以外で稼いでおきたいと考える者も多い」

「あいつらも、そうか。エリートじゃないもんな。騎士でもない。あいつらは、ただの野良犬みたいな雑兵なんだ」

「戦場にある資産も、意識しておくといい。金のためにヒトは戦争をするんだ。行動や狙いが見えやすくなる」

「……もしかして、あの杉なんかのために、オレたちを襲った……」




「ありえる。絶対とは言わないが」

「……ちくしょうめ。どいつもこいつも、戦闘に集中していれば……もっと、強くなれただろうに……っ」

「誇り高く在れない兵士もいる。そういう相手には、容赦をしてやる必要もないだけに、気楽だろう」

「アンタも、騎士道が……いや、第六師団の流儀か」




「マルケス・アインウルフ将軍の部下としては、卑劣な裏切り者には乱暴な一撃を叩き込みたいところだよ。傭兵部隊を、襲うなんてね」

「……仕留めてやるぞ。すぐに……」

「偵察をしてやりたいところだが、森を守ろうとしているなら……ハナシが早くもある。火矢を放つとしようじゃないか」

「そうすれば、連中は……ッ」




「挑発にはなる。積極的な戦いを仕掛けてくるだろうよ」

「……金のために、戦うか。そりゃ、当然だ。当然だけど、そんな理由のために殺されたかもしれないと思うと……腹が立つ」

「復讐は、分かりやすい正義だ。やってみるがいい。矢は得意だろ?」

「もちろん。どんな装備だって、上等に使いこなしてやるよ」




―――メイウェイの命令のもとに、軍勢は動き始めた。

アーベルは数名の兵士を引き連れて、『プレイレス杉』の森に近づく。

帝国兵どもの影が見えると、アーベルは鼻を鳴らす。

不機嫌そうだ、遠くから見る敵影は想像以上に判別が困難だったから……。




「直接、対面しないかぎりは分からんか。どれが、どの部隊なのか……靴は、さすがに見抜けない距離だが……メイウェイの読みに、頼ってやる。火を、放つぞ!!」




―――選りすぐりの弓使いたちが、杉林に向けて火矢を放った。

すぐさま燃え広がりはしない、火災対策だったのか落ち葉を片付けてもいる。

森を守りに使って、待ちかまえるという布陣なのだとアーベルは理解した。

資産であるし、命を守るための武器なら……。




「こうやって挑発を仕掛けたら、すぐに反応してくれそうだ。オレが、ハーフ・エルフだって分かれば、すぐに……あいつらと会えるかもしれないな」




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