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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その六百四十三


―――軍人らしい野心だったし、メイウェイほど有能な軍人なら当然の願望だ。

誰しもが成功したいと願い、その種の努力をするのはいつだって正しいものさ。

世の中を新しい方向に動かすのは、良くも悪くもこういった野心だから。

メイウェイが西部地方に自分の国を作ったとしても、ソルジェも許すだろう……。




―――不謹慎だけど、乱世の『面白いところ』じゃあるないか。

貴族でも王族でもない、ただの一般市民ごときだったとしても。

軍事的な才能ひとつで、国を築き上げられるのだから。

ある意味では、とても夢がある時代と言えるだろう……。




―――乱世でもなければ、なかなかこんなチャンスはないものだよ。

メイウェイは国盗りを考えつつあるし、それは決してメイウェイだけに限らない。

皇帝ユアンダートへの忠誠心が陰れば、その種の感情を持つ帝国軍人も増えるさ。

『自分が好き放題にやれる土地』を持ちたがるのは、ヒトの本能だと思う……。




「……最前線で指揮を執る者は、裏切りを心配しない者が必要だ」

「オレが、それの一人にはなる」

「そうすれば、戦後に報奨も期待していい」

「戦の後まで、考えているのか?」




「そちらの方が、兵士が強くなるからね。勝利し、生き残れば。君にも大きなチャンスとなるだろう」

「……オレは、仲間の仇が取れれば……」

「それだけの感情で戦えば、弱さとなる。より先を見るんだ。君は、ソナーズ侯爵家への忠誠も失ったのだから」

「……姫さまが、生きていれば今だって……」




「死者に、想いを奪われ過ぎるな。それで長生き出来た者は、多くいない。誰しもが、復讐心に身も心も焼かれ、それを成就する前に朽ち果てて行ったんだ。若者が、やるべきじゃない」




―――祖国の復讐のためにバルモア連邦や、ファリス帝国と戦える赤毛の男だとか。

愛する夫の復讐のために、帝国と戦い続けている人魚の踊り子だとか。

猟兵並みに強い復讐者ならば問題なく乱世も生き抜けるけれど、普通はムリだった。

誰しもが誰かを失う乱世の時代で復讐心は乱造されているけれど、成就者は皆無……。




―――自分より強い相手が、自分の大切な者を殺す場合がほとんどだから。

そうなれば、その復讐が成功する確率なんて知れてくるわけだ。

メイウェイの言葉は真実で、若いアーベルの危うさを心配してのことさ。

『未来』を思い描けている復讐者ならば、少しは生きる力を帯びれる……。




―――いつか天幕の下に戻ると誓ったレイチェルは、かつてよりも強い。

ガルーナを復興させる意志に燃えるソルジェも、ただの復讐者より強くなった。

アーベルにも、大きな夢を抱いて欲しがっているメイウェイがいる。

それはおそらく、かつての失敗もあってのことだろう……。




―――若手の人心掌握に、イルカルラで失敗したから。

いい軍人だが、政治力で負けた。

『外交』の攻撃性だとか、『内政』の弱さがもたらす組織の崩壊だとか。

メイウェイなら本が何冊か書けそうなほど、豊かで強い経験値を持っている……。




「……何か、考えておく。褒美の使い方ぐらい、オレにだって、見つかるさ」

「それでいい。なければ、私とつるめ」

「損すると思うぞ。ファリス騎士の、義理の息子で……『狭間』ってのはあつかいにくい」

「私なら、どうにかしてやれるだろう」




「自信満々だな。しばらく、干されていただろ」

「怖がられていたからね。名誉なことでもある。だが、見捨てられなかった。君も、私を訪ねてくれだろう。ソルジェ・ストラウスに頼りにくかっただけかもしれないが」

「……あの赤毛野郎には、頼りたくねえ。姫さまの敵だったし、バハルさまとセリーヌさまとも戦った。死んだあとのお二人だとしても……お二人を、倒したから」

「十分な動機だ。戦術諸々を、伝えたくなる健気さがある」




―――アーベルも、傭兵だからね。

あのメイウェイから、戦術が伝授される機会には食いついた。

けっきょくのところ、若い傭兵だ。

彼には『戦略』や『内政』や『外交』まで、想像がつきにくいんだよ……。




―――たとえ、説明されればアタマで理解出来たとしてもね。

兵士に必要なのは、戦術理解だけでいいと思い込んでもいる。

それでも、メイウェイが第六師団流の『戦闘』の概念を教え込んだのはムダじゃない。

メイウェイの語る戦術論にも、より豊かな解釈を付け加えられるだろうから……。




―――そう考えれば、メイウェイはなかなか上手な話術の使い手だったかも。

戦術論に興味深々なアーベルは、まるで友人のような距離感で馬を寄せてくる。

その馬術の巧みさを、メイウェイに見られながらね。

ああ成長中なのは、お互い様だってことさ……。




―――メイウェイはアーベルで、若手の人心掌握を学びたがっているし。

ファリス騎士流の馬術や武術だって、覚えておこうと考えていた。

アーベルの見せる動きから、それらを見抜いてしまえるからね。

第六師団の騎兵訓練も、メイウェイの仕事のひとつだった……。




―――ファリス騎士の流れを組む敵と、西部では遭わないだろうけれど。

マルケス・アインウルフは、別だからね。

かつての上司にアドバイスを送るためにも、アーベルはいい観察対象だった。

お互いに実りのある濃密な時間ではあるから、いいコンビだと断言していいよ……。




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