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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その六百三十八


―――漁師たちはその任務を成し遂げようとしていたよ、北上したあげくに船を見つける。

武装したエルフがマストの上に乗っている軍船で、それが帝国の軍船とは思えない。

エルフという同族の姿を見つけられたから、漁師たちも安心したようだ。

ゆっくりと近づいていく、多少の警戒心で出迎えられながらね……。




「お前たちは、何だ?漁師が魚でも、売りつけに来たのか?」

「我々は『トゥ・リオーネの民』だ。『プレイレス』の端より、さらに西に住むエルフだ」

「帝国軍に、制圧されているはずだぞ」

「すべてが制圧されているわけではない。我々は、隠れ里からやって来たのだ」




「聞いたことはある。ウワサというよりも、さらに嘘くさい……伝説という形でな」

「信じてくれるとありがたい。我々は、漁師なんだぞ。我々の隠れ里ということは、帝国軍に制圧されていない港を、持っているという意味だ」

「……まさか、本当に?」

「有益な港になるかもしれない。ちいさいものだろうが、君らには有効だろう」




「もちろんだ。そのハナシが、すべて真実だとすれば……『自由同盟』の大きな武器になってくれるだろう」

「これが、手紙だ。呪術が込められている手紙。これを、君らの上司に渡してほしい」

「……ふむ。そう、だな……中身を、確認させてもらっていもいいだろうか?」

「別に構わない。どうせ、君らの上司が見るよりも先に、誰かが中身をチェックするだろうからね」




「その通りだ、隠れ里のエルフよ」

「読んでみてくれていい。悪意がないなら、呪術はかからないはずだ」

「悪意など、ないさ。功名心よりも、組織への貢献に私個人は価値を持つ」

「それが真実だと、信じているよ」




―――エルフの戦士は、その手紙の内容を確認した。

プレイガストの呪術が戦士に働きかける、『メイウェイのもとへつなげろ』と。

魅力的かつ有益な情報以上に、その呪術は戦士に使命感をあたえたようだ。

戦士は船の上の仲間たちに、大きな声で命令を放つ……。




「これより港に戻るぞ!!『ペイルカ』に近づくんだ!!」

「了解した。だが。いったい、どんな内容なんだ?」

「西部の帝国軍を攻略できそうだ。そんな気がする」

「そこまでの情報なら、一秒でも早く届けなくてはな」




「……隠れ里のエルフよ。君らは知っていたのか?こちらの動きを?」

「隠れ里にいたとしても、新聞ぐらい仕入れられるものだからね。それに……」

「それに、何だと言うんだ?」

「……うちの隠れ里に、隠遁の呪術を施してくれた男は、凄腕なんだよ。我々を憎む因縁深い敵たちが、すっかり弱り切るまで、漁村を隠してくれたのだ。そんな彼は、恐ろしく賢い男だ。プレイガスト、君らは知らないだろうが……畏怖すべき大呪術師ではある」




「そうか。では、我々は手紙を届けよう。メイウェイという男のもとに、届くだろう」

「イルカルラ砂漠の太守だった帝国兵。今は、帝国を裏切り……」

「『自由同盟』の強力な戦士であり、指揮官だよ。彼が、君らの土地を帝国軍から解放しようと動くだろう」

「十大師団の将軍の、副官だった男」




「詳しいな。いい新聞を、選んでいるようだ」

「まあね。貴方は……『プレイレス』のエルフなのか?」

「『コラード』組だよ。帝国への抵抗運動を、中海でやってきた。長い間ね」

「そのような肌の色となっている。赤く潮焼けした、信頼していい肌になっている。頼むよ。我々の故郷を……解放するんだ。戦いのために。届けてくれ。優秀な軍人殿に」




―――エルフの戦士はうなずいて、軍船は進み始める。

漁師は彼らを見送りながら、故郷へと向かい船の進路をあらためた。

帝国軍に見つからないための旅路は、今が半分だ。

まだまだこれから半分を、過ごさなければならない……。




「見つからないように、戻るとしよう。敵を招くわけには、いかない。招いていいのは、『自由同盟』の戦士だけだ」




―――閉鎖的な隠れ里であっても、彼らは新聞で知った『自由同盟』へ期待していた。

地上を覆い尽くしそうな勢いで、侵略を完了させつつあったファリス帝国。

それをことごとく、各地の戦いで勝利している『自由同盟』。

その一員となりたいと願うのは、きわめて自然な流れだったろう……。




―――家族を守るためには、選択が必要なときもあるものさ。

過去の考えから解放されて、新しい生き方をしなければならない。

愛着ある日々を捨てるのは苦しさもあるが、生きるための力を獲得するのは心が安らぐ。

隠れ里の者たちは、そもそもが弱者だった……。




―――強者であれば、隠れる必要はないからね。

弱いからこそ、見つからないように隠れる必要があるものさ。

その事実にも、漁師のような血の気の荒い生き方をする者たちは不満を抱く。

この漁師は期待しているんだ、自分たちが弱者の座から脱出すべきだと……。




「……戦に勝てる男を、連れてきてくれよ。プレイガストの手紙よ。生き残るためには、その男が必要なんだ。生き残って、もっと……我々が豊かになるためにも。隠れたままでは、たまったものじゃない。うちにいは、子供が三人もいるんだ。四人目だって……もうすぐ。あの子たちに、良い暮らしをさせてやりたい。さっきのエルフは、軍船を指揮していたぞ。見張りじゃなかった。あれだけの船の船長なんだ。まったくもって……うらやましいよ」




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