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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その六百三十六


―――プレイガストの依頼を受けて、エルフの漁師たちは北上を開始する。

沖を通るコースを通ったのは、海流を利用するためでもあり漁村の場所を隠すためだった。

帝国軍の捜索部隊も、当然ながら船をいつくも出していたからね。

遭遇すれば手あたり次第、捕らえられるかもしれなかった……。




―――だが、帝国軍が駆り出した船が狙っているのは岸が多い。

プレイガストはともかく、レビン大尉が亜人種と合流するなんて考えられないからね。

どれだけ彼が人間族第一主義の実践者なのかを、帝国兵らは理解していたから。

どんな事情があったとしても、大尉と西部の亜人種たちがつるむとは思えない……。




―――エルフの漁師たちや、ドワーフの漁師たち。

巨人族の漁師たちも、沖合では漁にいそしんでいた。

彼らの大半は帝国軍に支配されている状態であり、家族を漁業に従事させられている。

西部の帝国軍は亜人種たちに商いを許していて、その売上を税として奪っていた……。




―――漁業も西部の沿岸部では主要な産業であり、帝国軍はそれを妨害していない。

漁船に対しての支配力は、比較的小さいものだよ。

十大師団が支配したり、帝国貴族の統治が利いている土地だったりすれば。

もっと彼らの行動が制限されていたかもしれないが、意外なほどに管理が甘かった……。




「士官がそれぞれの私腹を肥やすために、『子飼い』の労働者を働かせるのを望んだからだよ」

「この土地の帝国軍は、かなり……」

「秩序を失いつつあるのさ。ユアンダートに、見捨てられた気持ちになっている。面倒見と教育熱心な、偉大な父親かのようだった皇帝ユアンダートへの愛情は、失われつつあるのさ。皇帝の理想よりも、彼らは」

「私服を肥やすために、動き始めているから」




「ユアンダートが知れば、激怒するだろう。当然だよ。必勝の戦略を、ここの帝国軍はやっていないのだから。それは、つまり」

「つまり、どういった原因なのでしょうか?」

「父親を想像するといい。支配的な父親が、権威を失うパターンを、私の残した心理学の本では、どう紹介してあったかな?」

「……愛情が、消え失せたときと……子供たちが、父親に対しての恐怖を感じなくなってしまったとき」




「その通り。辺境の帝国兵どもは、愛を失い、恐怖も失った。盲目的な忠誠を組織に強いるために必要不可欠な要素が、ふたつとも欠けてしまっているんだよ」

「それらが『自由同盟』が帝国軍に勝利できると考えられる理由にもなっていると?」

「そうだよ。組織の腐敗は、機能不全を起こさせるからね」

「……ですが、戦いには痛みを伴うものですよね」




「むろん、大勢が亡くなるだろう。しかし、その被害が大きくなるほどに……帝国軍からの離反者も増え始めるさ」

「政治的な選択肢になる。帝国兵からしても、『自由同盟』が?」

「そこで寝息を立てている大尉殿のようにね。望まなくても、法律が帝国兵を『自由同盟』に導くことにもなる。罪を犯せば、帝国軍にも居場所がなくなるんだよ」

「罪人、なんですね……」




「戦争というものは、不毛なものだ。人心を腐らせてしまいもする。レビン大尉だって、まともな兵士として生きていたはずが、腐敗があたえてくれる利益に、目がくらんでしまった」

「彼のような人物が、帝国軍には多い?」

「私は、レビン大尉の不正を暴きにきた査察官を始末したんだ。呪術を使い、間接的にだが。そのときに、彼のアタマのなかを、『覗き見した』のだよ」

「の、覗き見……」




「呪術には、視界を奪い取るものがあってね。それの、仲間みたいなものさ」

「さ、さすがは先生です」

「肝心なのは、その呪術により、得られた情報だよ。査察官は、秘密の告発文を記していたんだ。それを、私は『覗き見した』となれば?」

「不正を働いている帝国軍人を、プレイガスト先生は把握しておられると」




―――秘書ロックの聡明さは、プレイガストを十分に満足させていた。

うんうんとうなずきながら、彼はまた筆を走らせ始める。

帝国軍人の名前と、彼らの所属と階級と『金額』だった。

軍に収めるべき、統治下の民たちから徴収した金の量だよ……。




「こ、こんなに、大規模な不正が……っ」

「査察官は、彼らから賄賂をもらっていた。私がこのリストの末尾に書いたのは、軍人らが査察官を買収するために使っていた費用だよ」

「なかなか、大きな腐敗なんですね」

「レビン大尉は、不器用だったから。一見、清廉潔白に見える査察官に対して、この種の懐柔策をやれなかったんだ。愛すべき、愚かさとも言えるだろうよ。法律を逃れるために、法の執行者を買収すればいいという、古き伝統さえ知らなかった」




「……し、しかし。これらの情報があれば……」

「帝国軍内部を、さらに揺さぶってやれるだろうね。贈収賄については、ユアンダートがきびしく取り締まってもいる。『カール・メアー』の処刑対象になりかねんほどだよ。法に追われるようになったとき、帝国軍人に選択肢が現れる」

「帝国を裏切り、『自由同盟』に入れと……」

「そうだよ。英雄アインウルフや、カリスマ的な軍人メイウェイとなら、合流もしやすかろう。彼らが、拒めるほど『自由同盟』に余力がないと、不正軍人たちも分かっているんだよ」





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