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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その六百二十


―――ボクだったら、こいつの言葉を鵜呑みにしなかっただろう。

ただの駆け引きで口にしているんだろうなと、考えていたはずだ。

『ルードの狐』は、あまり悲観的な思考回路をしていないものだからね。

それにこの種の言葉もよく使うから、騙されちゃいけない……。




―――レビン大尉を操るためにこそ、プレイガストは発言しているだけかもしれない。

少なくとも、そう考えて方がこのおぞましい相手と渡り合えるだろう。

戦場で直接、鋼をぶつけ合わせるだけが戦いじゃないというのに。

帝国軍人の訓練は、その種の合戦よりもときに壮絶な戦術を教えないからね……。




―――軍隊同士の戦い以外を、プレイガストはして来た男だと忘れてはならない。

呪術師で数学者だったような男は、それほど戦場には足を運ばないはずだ。

例外はあるだろうが、あくまでも例外に過ぎないからね。

レビン大尉にアドバイスするとしたら、『敵が何かをよく考えろ』という言葉に尽きる……。




「……何人、殺したって言うんだ」

「君は、その質問でいいと思っているのかね?」

「どういう意味だ。お前、何か、おかしいぞ!」

「何人殺そうが、別に問題じゃないだろう」




「ば、バカを言うな!!」

「たくさんヒトなんて、死にまくっているじゃないか。君だって、その立場を勝ち取るために、大勢を殺したはずだよ。それなのに、何だね、今さら。潔癖症を主張するには、君は魂の髄まで血に染まっているのに。笑わせてくれるね」

「お、お前は……おかしい。やっぱり、アタマが壊れちまっているんだ!」

「壊れてなどいないさ。だから、呪術を使いこなせる。わざとじゃない。何人かを呪術で殺したのは……ああ、君の依頼で、君のために……君のせいで、何人かを呪術で殺してしまったのは、わざとじゃないんだ」




「お前……オレを、破滅させようと……っ」

「どうかな。むしろ、その逆かもしれない。君は、まだ確認していないよね。何人か、などはどうでもいい。必要なのは、私に対して……『誰』を殺したのか、ちゃんと確認すべきだろう」

「そ、それは……」

「私は、『誰』と『誰』を殺してしまったと思うんだね。聞いてみるといい。愚か者に、説明してやるのは得意だし、その種の行為に、ちゃんと優越感を覚えられる。いい数学の指導者だったと思うよ。皇帝に迫害されるまでは、有名な大学にいたのを、君だって知っているだろう。バカでは、その地位を勝ち取れないんだよ」




―――レビン大尉は、圧倒されつつある。

もちろん良くない態度だ、こんな高圧的で傲慢な呪術に対して下手に出るべきじゃない。

そういった『ガイドライン』か何かが、あったはずなのに。

だからこそ彼は、つい数分前まで呪術師に対して強気でいたはずだった……。




―――今では、その守るべき『ガイドライン』から逸脱してしまっている。

恐怖のせいで、レビン大尉は気づけちゃいないようだ。

プレイガストがしたいのは、レビン大尉を脅迫することだとね。

まばたきもせずにうす暗い檻の中から自分をにらむ呪術師に、彼は訊いてしまう……。




「お、教えてくれ。『誰』と、『誰』を殺したんだ、お前……っ」

「プレイガスト先生、その敬称を使いこなしながら訊きたまえ。礼儀だろう」

「……プレイガスト先生、『誰』と『誰』を、殺したんだ……殺したんですか」

「ああ。ようやく帝国軍人らしい水準に、戻れたようだね。教えてあげよう。君の部下たちのうち、この牢を守っている者たち全員だよ」




「は、はあ!?何を……お前、そんな……バカな!?」

「確認してくればいい。この牢を見張っている予定の連中だ。彼らは、全員、今頃、仮眠室で冷たくなり始めている。君が渡した酒を、飲んでいるのか……飲む前に死んだのか」

「ふざけるな!!そんなのは、嘘だろ!!」

「私を君が信じられないのは、分かるよ。こんな檻をはさんでいては、信頼関係なんて構築できやしないじゃないか。だから、私は理性的なアドバイスをしてあげている。見てきなさい。遠くないんだ。すぐそこまで、走ってみるべきだろう、レビン大尉」




「ま、待ってろ!」

「私は、待っていてあげるよ」

「お、お前じゃない!」

「意外と部下を想っているんだねえ。いいヤツじゃないか。気に入ったよ、レビン大尉」




―――恐怖に駆られて、レビン大尉は走ったんだ。

そして、兵士たちの詰め所にたどり着く。

そこには答えがあったよ、呪術師は残念ながら嘘をついちゃいなかったよ。

全員が血を吐いて、床に転がっていた……。




「そ、そんな……っ!?お、おい、お前ら……」

「れ、レビン大尉……っ」

「い、生きているんだな。生きて―――」

「―――どうして、酒に、ど、毒を……っ。う、裏切り、ですか……っ」




―――レビン大尉も、乱世を生きる軍人だからね。

何かを察したようだ、『自分はいつからあやつられていたのだろうか』。

よい疑問だったし、あまりにも破滅的な自己認識だった。

プレイガストは呪術を使っていたらしい、多くではないかもしれないね……。




―――少なくとも、プレイガストのターゲットはずいぶん前から。

レビン大尉だったらしい、レビン大尉は怒りよりも恐怖のせいで嘔吐した。

生き残っていた唯一の兵士も、そのころには死んでいたよ。

レビン大尉は自分の人生が破滅したことを知り、兵士から槍を奪い取ると歩いた……。




「お帰り、大尉。どうだったかね。おしゃべりな兵士たちを、看取ってやれたかい?」

「……オレを、呪術に……い、いつから!?」

「初めて会ったその日から、ゆっくり、ゆっくりと……狙ったんだ。君は、弱点が多い。利己的であり、不勉強だ。私の取り扱い方には、もっと気をつけるべきだったよ。ああ、教えてやろう。朗報があるよ。査察官は、ちゃんと呪術で殺している。つまり、君は……」

「これだけ、こ、殺したら……オレのせいだと、ばれる!」




「死にたくないだろ、レビン大尉。君は、そういう男だから。家族だって、守りたいはずだ。裏切り者の息子を持った父親を、罰されたくない。だから、考えたまえよ。つまらん復讐じゃなくて……生きるための努力をしよう。鍵を開けなさい。いっしょに、私が逃げてやろう。君は被害者だと思ってもらえるよ。そして、『亡命』できるんだ。私は有能なんだからね。ユアンダートだって、暗殺できるかもしれない。『蛮族連合』に……いやいや、『自由同盟』に合流しようじゃないかね」





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