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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その六百十三


「いや、弁償とかはいいわ。戦いで、かなり疲弊していたわけだし?」

「うう。マジで、すみませんですううっ。大切な謂われのある名品だったりしたら、ホント、お給料たっぷりと使って、べ、弁償させてもらいますのでっ。なにとぞ、なにとぞっ」

『ひ、ひひいいいいいん!!』

「ゆ、『ユニコーン』まで土下座とか、する必要ないからね!!むしろ、そんな真似された方が、居心地悪くてしょうがないでしょう!?」




「そ、そうですか。なんて、寛容な御方なんだっ。美人は、違いますねっ」

「ちょっと卑屈になり過ぎてるわよ。私は、怒らないし……むしろ、この不思議な力について、ワクワクしているかも」

「ワクワク、ですか?」

「うん。だって、初めて見た現象だもの。これは、いったい、何をしたの?」




「お、おそらく。錬金術を、発生させたのかなと」

「窯のなかでやるものよね?錬金術って……」

「はい。錬金術も……というか、およそこの世のあらゆる現象は、魔力を通じて起きているものですが。私たちディアロスは、『水晶の角』を通じて、おそらく『ユニコーン』に錬金術をかけ、『霊槍』へと一時的な変化を成し遂げている。たぶん!」

「おそらくとたぶんが、セットになってる。自信はないのね」




「もちろん、ない……けれど、確信めいたものはあるんですよ!」

「自信があるんじゃないの、それ」

「知的な根拠とかが、一切ないというか……とても感覚的で、私の主観なのですが、これは錬金術。『ユニコーン』に……『曙』が『霊槍』に変わるときの力を……ここに与えてみたから」

「窯の外で、錬金術がやれる……」




「ええ。逆に、考えてみて欲しいのです。もしも、錬金窯のなかでなら、このように、金属がいきなり特殊な変貌をしたとしても、何も不思議に思いはしないはず!」

「それは、そうね。錬金術は、金属の質さえ、大きく変えてしまうから」

「ぶっちゃけ、動物についても」

「……ど、動物?ああ、そうか、『ユニコーン』も……錬金術で変えている?それとも、それは、呪術なの?」




「明確な定義は、分からない。けれど、呪術も錬金術も、魔力の反応を使って、見た目や内部の質を変えたり、毒したり、成長させたりするものだから。似ている」

「……なるほど、ね。ちょっと、私には難し過ぎるけれど……呪術と、錬金術の差は、思っていたほどないのかも。窯のなかでやるか、外で起きているかぐらいで……『ゴーレム』をあやつるための『水晶』だって、私と『ゴーレム』のなかに融けた戦士の魂と、つなげてくれているものだし」

「窯の外で、私は、おそらく……錬金術を成した。この鋼が、花咲くように割れたのは、その力」

「すごい、わね」




「はい、すごい……けれど!!こ、こんな、スプーンを曲げるような手品と、ほとんど同じ力では、せ、戦闘の役には立たないような!!」

「い、いやいや!?なにも、戦闘だけで物事を考えるのは、戦士の悪いくせだからね!?」

「そう、でしょうか。ルチア・クローナー殿は、やさしいから……っ。私をはげまそうとしておられるのでは?」

「戦士以外にも、生き方はあるの。分かるわよ、戦いばかりしていても。それこそ、錬金術師たちだって、そうでしょう?」




「ええ。そうですね。ですが、彼ら彼女らだって、窯の内側でやればいいことを、わざわざ外でしないのでは?……逆立ちしながら、ゴハンを食べられる能力があったとして、それは誇りにもつながらない。普通に食べればいいだけで。つまり!『無用のヘンテコさ』は、し、失笑しか呼ばない……っ」

『ヒ、ヒヒヒヒイイイ……っ』

「もう、ふたりして落ち込まないの。まだ、この能力が戦いに使えないなんて、決めつけるには早いでしょう!?『どれぐらいの範囲』で、これをやれるの!?」

「……さあ。考えてもみなかった。触れながらなら、やれるけれど……いや。そもそも。別に、『曙』をなで回しながら『霊槍』に変化させるわけでもない。叫ぶ、心を伝える、音?ああ、うん。音でお互いを聴き取りながら……だとすれば、『音』がする方に、錬金術、呪術、とにかく、何でもいいけれど、『その力』を……『飛ばせる』かも?」




―――それは、実のところ『とんでもない大発明』だったのさ。

金属錬金術に長けた、ディアロスには秘められた力がある。

『呪術錬金術』を、窯の外で発生させるという極めて特殊な力だった。

『水晶の角』と使い、金属へと働きかける……。




―――鋼の声、鋼の記憶を読み解けるドワーフたちとも似ているけれど。

伝えるだけではなくて、より明確に一定の離れた対象物に『呪術錬金術』を送れる。

音楽的な才能をふたりのどちらかが持っていたら、周波数が秘訣だと気づいたかも。

パロムは集中力を行使して、この技巧の再現を試みていた……。




―――足もとに転がる、古びた蹄鉄を『見つめる』。

その『音』を聴きながら、『語りかけた』。

古びた蹄鉄が、ガタガタと揺れ始めると。

次の瞬間には、これも花が開いたように裂けながら割れて広がったいた……。




「す、すごいわね。蹄鉄は、かなり頑丈なはずだから。あれを、離れた位置から壊せるのなら……」

「そ、それが、果たして何の役に?嫌がらせにしか、使えそうにないっ」

「たとえば、だけど。帝国の騎兵に追われているときに、それを使えたら?」

「え、えーと。いきなり、蹄鉄が曲がるように壊れたら、『ユニコーン』ならともかく、馬では走れなくなる……そ、それ!!すごく、いいじゃないですか!?」




「ええ。戦闘にも有効活用できるわよ、その力。まあ……」

「ま、まあ?」

「魔術でも撃ち込んだ方が、そもそも早い気がするというのはあるわよね」

「た、たしかに!!魔術や矢でも撃ち込んだ方が良さそう!!ていうか、絶対に良いですよう。これ、微妙に疲れちゃいますしっ」




「でも、魔術ほどは疲れないのでは?」

「それは、はい、たしかに」

「戦闘中に、問答無用で破損させられるとすれば……それは、間違いなく使える技巧のはずだわ。戦場は、だって……金属だらけだし」

「それは……それは、すごいかも。極めれば、無数の、複数同時の標的を、いきなり、『咲かせられる』かも!」





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