表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4585/5089

第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その五百三十七


―――ロロカは、とても賢いからね。

社会が理想的な考えを許容できるとまで、素直に考えられはしない。

世界を変えるのは、賢さよりも力だとも信じている。

歴史を紐解いたとき、その考えになるのも当然だから……。




―――だからこそ、ラフォー・ドリューズのような人材は魅力的に映ったよ。

お金という力で、若者たちを教導してくれるというのなら有効だと。

ロロカ自身も教育者のはしくれだ、いくつもの大学で認められた賢者でもある。

人々が教育でどれだけ変われるかも、彼女は知っていた……。




―――自分自身もね、生まれもっての知性の高さはあった。

ディアロス族は錬金術や、冶金の技術ではずば抜けている。

それでも、極北の土地から出てから多くの学びがあったからね。

ロロカ自身も知識と学問を得て、大いに自分を高めたというわけさ……。




―――『水晶の角』に触れられそうになったからといって、もう誰かを殺そうともしない。

教育が行き届くまでは、その種の文化や価値観は絶対的なものだったのに。

ヒトは学ぶことで、先天的に獲得していた領分を越えて成長するものだ。

向き不向きはあるけれどね、ソルジェみたいにアホもいる……。




―――北方野蛮人の戦士なんて生き物は、知的な紳士とまったく逆の存在だった。

それでも、ロロカやガンダラの指導もあってね。

しっかりと成長を促進できているのも事実、交渉や政治的な理解まで覚えつつある。

ソルジェでさえ変わるのだから、誰でも変われるのが教育の利点だろうね……。




「多くの力で、変えていくべきですから」

「一朝一夕で変わるものではないと、私も考えています。悲観しているわけじゃなく、解決すべき課題として」

「戦士として、勝利を作ることで支えるといたしますわ」

「ありがたい。今日も、大戦果だったと聞いておりますよ。貴方がたも、ストラウス卿も」




「ええ。ですが……帝国の一枚岩ではない部分が、災いを招きつつもあるようで」

「女神イースを、召喚したとか」

「皇太子レヴェータも、古戦神を呼び出しました。おそらくは、共通する呪術のパターンがあるのでしょう。それが、政治的なグループを通じて広まってしまっている可能性があるのです」

「……あのような災厄をもたらす力を、帝国が得たと……」




「幸い、皇帝ユアンダートは呪術を禁じていますから。ユアンダートに反目する政治的なグループに、その種の力が伝わりつつある。ですが、女神イースを召喚した者たちは、『カール・メアー』」

「皇帝の直属の、異端審問官たちが……」

「その事実を、ユアンダートは握りつぶすでしょう。『カール・メアー』の巫女戦士たちは、帝国軍の規律を生み出すことに役立っている。政治的な陰謀を、彼女たちで執り行ってもいるはず」

「『血狩り』を行い、政治的な謀殺をした。亡命者もいると、聞き及んでいます」




「『真実』よりも、『正義』が重んじられる。アンフェアですが、この大陸の実情ではある」

「はかりごとを、正義と……」

「事実と異なっていても力を発揮する。『正義』は、権力者にとっては扱いやすい、罰する力。『カール・メアー』を手放すことはしないでしょう」

「……欺瞞がたまれば、集団は滅びゆくものです」




「ええ。私も、そう考えていますよ。ユアンダートは『カール・メアー』を庇う。ですが、すでに貴方の耳にも入っているほど、インパクトの大きな事件でしたから」

「なかったことには、できないでしょう」

「はい。私たちも、それを広めていきますから」

「情報戦、ですね」




「……帝国で『血狩り』を受けた果てに、亡命を余儀なくされた方々の耳に、是非とも伝えておきたいものです」

「有効でしょうな。没落させられた者たちの恨みは、果てしなく深い」

「情報戦の協力も、お願いしたいのですが?」

「もちろん。あらゆる戦いで、私も協力を惜しみはしません。ですが……」




「ええ。気になっているのですね。神々を顕現させる呪術より、奴隷貿易の復活を企む者たちを」

「この手で、八つ裂きにしてやりたいと願うほどです。この絶好の機運を、連中が妨げてしまうから」

「対処をしましょう。『モロー』の奴隷商らが使っていた貿易のルートに、『ストラウス商会』の社員を配置いたします。奴隷貿易の復活を試みるのであれば、そのルートにも痕跡を残すでしょうから」

「そこに、隠れているかもしれませんな」




「ええ。ユニコーン騎兵で、蹴散らしてやれます。予備的な人員しか集まってはいないでしょうから。そのためにも……」

「分かっています。『モロー』の奴隷商たちが使っていた拠点を、すぐに報告させていただきます。場合によれば、焼き払えとも指示を」

「……そう、ですね。予防措置は大きいほどいい」

「奴隷を収容する施設も、販売するための拠点も、いまだに残っている。奴隷商たちは、いつかビジネスが復活するとでも、期待しているフシがあった。市長の代行のような立場です。商人たちへの命令を、私は極力控えるべき立場ではありますが、この件については、黙ってはいられない」




―――アントニウスの遺した意志は、炎のように旧友へと伝わった。

ラフォー・ドリューズが好戦的な顔をして、威圧的になるのは奴隷貿易についてだけ。

その情熱を『モロー』の市民や商人たちが、どれだけ支持するかは不透明だ。

憎しみは根深く、かつての日々が復活するのを望む者たちもいるだろうからね……。




―――『王無き土地』の弊害で、王さまが不在だと勝利だけでは変わらない。

誰もが気高くて、前向きだとは限らないから。

王さまがいる土地は、名君の登場だけで大いに救われると言うのにね。

まあ、これも『プレイレス』という土地の特徴だから変えようもない……。




―――だから、ロロカとラフォー・ドリューズは。

奴隷商どもの拠点を、焼き払ってせん滅しておくことにしたのさ。

最初から、ラフォー・ドリューズはそれを提案したかったのだろう。

ロロカは彼の要求を聞かされたような気持ちになるし、たぶんその通りだった……。




―――とっくの昔に、拠点が記された地図が用意されていたからね。

それらをロロカに提供すれば、『ストラウス商会』のユニコーン騎兵たちの出番だ。

遠からず、せん滅が起きるだろう。

そして、運が良ければ『西』でうごめく野心の情報もつかんでくれるだろうね……。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ