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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その五百三十五


「……『彼らだけ』で構成された部隊を、作るというのは?」

「……ああ。それは、いいかもしれない。戦闘意欲が高い部隊は、かなり強いと思うから。でも……」

「でも、どうかした?」

「激戦地に、送るってことだよね。だとすれば、それは性格のせいってだけで、死ぬリスクを多めに背負わせるということにもなる。たとえ、本人たちが望んでいたとしても……それは、それって。どこか、アンフェアなようにも思うんだ」




―――『王無き土地』の人々らしく、命を平等にあつかおうとする哲学は美しい。

大陸のほとんどの土地では、ここまで平等さにはこだわらないよ。

そういった価値観を醸成するために必要なものは、高度な学問なのかもしれない。

インテリにだけしか通じない美徳というものも、機能不全なのかもしれないけれど……。




―――教育を広げなくてはならないと、痛感する日々をボクたちは送っている。

ルードは比較的、教育熱心な王国ではあるけれど。

それでも、『プレイレス』の学問のレベルには及びつかない。

もっと賢ければ、より魅力的な理論武装を『自由同盟』に与えられるのにね……。




―――まあ、理解しているよ。

こうやって、すぐに学問を政治的および軍事的な『道具』に使おうとする傾向が。

ボクたちの一種の限界でもあるのはね、もっと高尚な行いに使いたいものだけれど。

困ったことに、今は乱世だったのさ……。




―――リサ・ステイシーの心に、カイの言葉は波紋を投げかけていたよ。

彼女は、自分が『学生たちを兵器のように利用したがっている悪魔』に見えた。

第三者であるボクからすれば、そんなことはないと思うけどね。

『命の選別』をしなくちゃならないときも、上の立場の者にはある……。




―――『王無き土地』以外は、たとえばルード王国であったなら。

クラリスが決めるんだ、誰が死ぬのかをね。

クラリスを含め、王族や貴族という地位にある者は幼い頃から知っている。

生殺与奪の権利というものが、この世には実在することを……。




―――戦になれば、危険な場所も生まれるものだ。

そこで戦う役目を背負わされた者たちの多くが、もちろん生きて戻れない。

王族や貴族だって、ヒトだからね。

血も通っていれば、涙だって流す日もある……。




―――それでもね、誰かがやらなくちゃならない。

世界というものはアンフェアだし、戦場はとっても理不尽な空間なのだから。

生殺与奪の権利を、クラリスは幼い頃から理解させられている。

『王国のために死んでください』、その言葉を最適な態度で伝えるために……。




―――ルードのために死ぬなら、ボクは本望だよ。

多くの戦士たちが、それを心から望んでいる。

至極当然なことで、戦士という立場は女王陛下から命じられる日を待っているんだ。

ありふれているのに、どこか過酷で恐ろしさもある現実だね……。




―――それが正しいか、それとも間違いだと思えるのかは。

所属している価値観のなかで、それぞれの答えを見つけるだろう。

ボクはクラリスを信じるよ、ルードのために死ねと言える毅然なる女王陛下を。

『王無き土地』の人々に、この幸福な充足がないことに同情も覚える……。




―――命の選別をするのには、慣れが必要だ。

クラリスが幼い頃から生殺与奪の権利の使い方を、その人生で学んだように。

リサは賢いから、数時間前にちゃんと理解していた。

ソルジェたち騎士や貴族は、命に対しての考えが極めてシャープなものだ……。




―――戦場で死ぬために、生まれて来たような命だからね。

ストラウス家の気高さは、『王無き土地』の人々にはあまりに苛烈に見えるはずだ。

リサは思い知らされているよ、王たる者の責任の重みをね。

この種の痛苦に対して有効な方法は、幼い頃からの慣れのほかにない……。




「……それでも。アンフェアでも。適材適所だわ」

「……それは、たしかに。誰かが、危険な場所で戦わないといけない。でも、それを、オレたちが決める権利って、あるんだろうか……」

「志願制に、するしかないわね」

「それは……性格に、オレたちがつけ込んだような気もする」




「ええ。つけ込もうとしている。でも、オレたち、じゃない。私の責任だから。私が、立案者になる」

「いいや。そういうのはね……ほんと、ぶっちゃけると、ちょっと前のオレなら、乗っちゃう案かもしれないんだけど。今は、ムリだ。オレは、責任ある男になりたい。一人前の男って、そうだと思う」

「結婚したからって、急に大人びる必要はないわ」

「あるよ。あるんだ。オレが、それを望んじまうから。そういう部隊を、作ったとしたら。ちゃんと、オレも責任を取る。背負うよ。背負って、恨まれる覚悟だって、するんだ。『飼い慣らす』だとか、言い始めたのは、オレだ」




―――何でもかんでも、責任なんて取ろうとするべきじゃない。

生殺与奪の権利なんてものは、思いのほか重たいものだからね。

不慣れな者たちが、それをやろうとするのは感心しない。

耐えられはしないから、ボクがこの場にいれば忠告していたところだよ……。




―――このふたりに、釘を刺してあげられたのにね。

クラリスがその言葉を、誰もが正しいと納得してくれる態度で使うために。

どれだけの努力をしたことか、この『王無き土地』の人々に伝えてあげた。

そうすれば、きっと背負うなんて言葉は軽々しくて吐けなかっただろう……。




―――だが、これもまた運命なんだ。

リサ・ステイシーも、カイ・レブラートも。

『牧羊犬』たちで構成された特殊部隊の計画は、動き出す。

悲しい運命の気配が漂っているように感じられたとすれば、それは正解だった……。





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