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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その五百二十四


―――それは心からの言葉であって、メイウェイの率直さを表すものでもあった。

メイウェイは知っているのだ、どんな苦境に立たされても心変わりしない者。

過酷な宿命にさえも耐久してしまう者こそが、理想的な軍人であると。

優秀さよりも、それは時にずっと強い力を発揮した……。




―――兵士にとって最も必要とされる条件に、耐え忍ぶ力を上げる名将は数多いけれど。

メイウェイも、そういった物差しを持っているらしい。

カール・エッド少佐は優秀さよりも、かえって頼れる才能を持っていた。

どんな苦境に立たされても、彼は変わらなかったのだからね……。




「約束をしよう。状況に見合っただけの戦力を、送り届けるとね。あくまでも、偵察や遊撃になるだろうが……」

「正面からの戦いを望みはしないよ。あちらもだろう」

「『西』に向かった帝国軍の諸勢力は、さほど統率が取れていないようだな」

「怠惰な部隊だって出てくる。たしかに、帝国は長く戦い過ぎたし……遠くまで、足を運び過ぎた」




「疲れている、と」

「十大師団はエリートだったが、それ以外の兵力は基本的に貧しくもあった。独自の才覚で『商い』をしようと必死なだけの、小物の群れでもある」

「……そうだとしても。山岳部だ。守りは堅固なもののはず」

「山岳の攻略法は、心得ている」




「どれだけの、戦闘を起こしたいのかね?」

「流動的だ。皇帝は、命令を出そうとするだろうが……『西』の連中に反転しろと。だが、それをしても彼らは稼げない。『西』で、自分たちが主導する商売に夢中となった方が、よほど稼げるだろうから」

「だが、絶対とは言えんだろう」

「その通り。だから流動的というほかにない。私は、状況に応じることになるだろう。相手が消極的に動けば、気楽に各個撃破を。だが、もしも……大部隊となれば……」




「二万は、いるぜ。第九師団の残党と合流した者もいるし、『現地採用』の帝国兵もいる」

「『現地採用』か。帝国の市民権を求めて、軍に入った」

「人間族ならば、気楽に参加できるんだぜ。アンタでも、紛れ込めるかも。いや、アンタも、勧誘されたんじゃないか?」

「あるとも。断ったがね」




「いい条件を出されたはずだぜ。とくに、マイク・クーガーあたりは、アンタを気に入りそうだけど」

「断るに値する。私にとって、帝国に仕える理由は見つからなかった」

「愛国心とか、郷土愛ってものか」

「それを愛と呼ぶのなら、正しいだろう。『ペイルカ』のために、どんなことでもしてやりたいと思えた。だが、帝国には、そういう感情は湧かなかった…………私は、やはり。『ペイルカ』が好きだったのだ」




「故郷のために、戦いたいという感覚はとても素直なものだと思いますよ」

「だが、メイウェイ殿は帝国兵となった。いや、責めるつもりはない」

「愛されていれば、愛しやすいもんだぜ。メイウェイやオレは、元いた場所よりも、帝国軍の方が住みやすく思えたんだ。こんな、歴史ある文化的な街並みのなかでばかり、ヒトが生きているわけじゃない」

「……なるほど。それも、道理ではある」




―――恵まれていた、という言葉であらゆる評価をしてしまうのは乱暴だけれど。

カール・エッド少佐は、『ペイルカ』で出世していたからね。

豊かな『プレイレス』の土地で生まれ育っただけでも、他の地域より恵まれてはいる。

カール・エッド少佐に、祖国を裏切ってまで帝国に仕える者の気持ちは見えにくかった……。




「『西』は、荒れていると聞く。無数の種族、無数の小王国。それらがぶつかり合う、辺境だ」

「そういう土地では、若者たちが立身出世の道として、帝国軍を志してもおかしくはない」

「貴殿がその立場なら、そうしたのだろうな」

「もちろん。仕えるに値しない貧しさも、この世にはあるのだ」




「だが、そんな彼らの動機は、極めて経済的だというべきかね。戦況が帝国不利に変われば、動くものではないか?」

「オレみたいな真似をするとは、限らんぜ。オレは裏切られたから、裏切った。復讐するために……」

「全員でなくてもいい。少なくない数であれば、こちらも気楽だなと」

「それなら、まあ、ありえなくはない。若い兵士たちにも、家族や知人が故郷にはいるだろうからな。ああいうの、ぜんぶ捨て去るには、それなりの覚悟がいる」




「……『現地採用』の新兵たちを、『西』の帝国軍はどう使う?エリートの十大師団ならば、いきなり前線に出すような真似をしないだろうが……連中は、どの程度の質なのだね?」

「もちろん、低いぜ。規律も大して良くない。それが、客観的な評価だ。帝国軍も、エリート部隊以外は、やはり質が低い」

「新兵を、『盾』にするような戦術を採ると?」

「……ああ。容赦なく、しちまうだろう。全部が全部そうとは限らんが、なかにはそういう目に遭うヤツらもいる。かわいそうだが、世の中は非常なんだよ」




「そういった者たちを、説得して味方につける方法は?」

「……それをされないように、前線に出して『盾』にしている。逆らえば、背後からつぶせるようにな」

「ならば、『それ』をウワサとして流せば有効だ」

「ん。ああ、なるほど。いい考えかもな」




「情報戦もすべきだからね。私は、学んだのだよ。『コラード』にこもりながら、軍事の研究に勤しみつつも、『戦場での衝突』以外の勝ち方を模索していた」

「……『西』に、情報を流すための『人脈』をお持ちか」

「マジか。さすがは、ゲリラ屋だった男だ」

「アントニウスの遺産になる。彼は『西』から流れて来たドワーフたちも、親身に受け入れていた。彼らを通じて、『西』に情報を流すことも狙える。彼らのなかには、祖国においては優秀な軍人だった者もいた」




「ゲリラ活動を『許す』には、強すぎる手合いかよ」

「そうとも。そういう者は、遠くに追いやられる。処刑をしては恨みが遺るし、捨て置くには厄介すぎる。となれば、遠くに追いやるだけ……かつての私も、似た評価をされた。まあ、彼らの現状の立場はともかく、情報網の構築ぐらいはやれるさ」

「利用させていただきたい。勝利のために」

「もちろんだとも。だが、注意点もある」




「分かっている。関われば、見返りを求められるだろう。彼らは祖国を奪還したいと願うだろうが」

「こちらには、それに協力するだけの余力もない。過度な期待をさせれば、恨みも残りかねん」

「そのときは、私が背負うさ」

「同意したくはない。話が分かる男は、死なせるには惜しいのだ」




「それでも、やるしかない。そもそも。騙す……つもりでもないよ。敵は、たったの二万だからね」




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