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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その五百二十三


―――ひねくれ者ではあるけれど、覚えておいて欲しいようだね。

「覚えておきやがれ」という言葉には、相応の態度が与えられるときがある。

記憶力のいい三人の猟兵たちから、アーベルという少年は覚えられたんだ。

メイウェイのかたわらにいる、ハーフ・エルフの少年としてね……。




「出撃は、いつになるんだ?」

「上官に対しての言葉か、それが?」

「……いつ出陣になるんでしょうかね、メイウェイさん」

「可能ならば、今宵のうちに」




「フットワークが軽いんだな。あちこちに、連絡係を配置しているらしい」

「その通り。基本だろう」

「さすがは、帝国軍クオリティってトコロだ」

「それ以上を、作る。そうでなければ、長い目での戦に勝てない。帝国を倒す。それが、『自由同盟』の勝利だ」




「……ゾッとするね。やるよ、やるけれど」

「それでいい。現実的な者も必要だ」

「あんたは、それでも勝てると……」

「もちろん。どれだけ結集できるかが、肝心ではあるが……」




―――メイウェイの想像力は、ボクたちが描いた帝国に勝つシナリオを見抜きつつある。

軍事的な天才にとって、それは朝飯前でもあるから。

だから、メイウェイは考えつつある。

『自分が意外性のある駒』として、機能するべきだと……。




―――メイウェイは、カール・エッド少佐のもとに向かう。

アーベルを連れて行くべきか迷ったけれど、社会勉強させてやる気になったらしい。

ハーフ・エルフという立場を、政治的に利用したくもあった。

アリーチェの幻を見せられたおかげで、カール・エッド少佐自身も価値観が歪んだ……。




―――『自由同盟』にとっては、とても好ましい方向に対してね。

亜人種のゲリラたちと行動を共にして、『海賊』の真似事をしていたから。

亜人種たちへの偏見も減りつつあったが、やはり保守的な人物ではある。

印象的なキッカケは必要であり、アリーチェはその引き金にはなった……。




「ハーフ・エルフを、従者にしたのか」

「従者だって?ただの、手下に過ぎないぜ、オレは」

「……護衛のようなものだ。年齢に不相応なほど、軍才はあるからね」

「鍛えあげてみたいと。なるほど、メイウェイ殿も、後進の育成に興味があると」




「私がいつ戦場で死んだとしてもいいように、力を引き継げる人材を用意しておきたいのだ」

「そう、理想的な人材は見つけられないものだよ。私も、『コラード』時代の相棒を失った。ドワーフの戦士アントニウス。勇猛果敢でね、恐れを知らなかったよ。『ペイルカ』の元・兵士だって、彼になら預けられたのだが……」

「勇敢な者は、よく死んでしまう。アントニウス殿の冥福を」

「……ああ。ありがとう」




―――ヒトの死が、周囲にどれほどの影響をもたらすものか。

カール・エッド少佐は、アリーチェが見せた幻のなかで。

アントニウスも見ていたよ、義理堅い男だったから。

悪神と死んだ少女が戦うのなら、あの世からでも駆けつける……。




「誰もが、献身的であるべきだ。キュレネイ・ザトーは、いいデモンストレーションをしてくれたよ。議員たちも、文句が言えなくなる」

「自由に動けるな。我々、軍人が」

「……そうだ。『ペイルカ』は『王無き土地』、私は、議会に従うべきだとは理解している。しかし、時代にそれほどの余裕はない。出し尽くしても、五分だろう」

「帝国と五分だってか?……やっぱり、ちょっとは現実的な男がいた方がいいな」




「若者にしてはベテランじみた洞察をする。褒めてあげよう、アーベルくん」

「帝国を舐めるなよ。寝首かかれっぞ」

「舐めちゃいないさ。悲観し続ける時間を、卒業しただけ。相棒は教えてくれたよ。『正しく戦って死ねばいい』と」

「……どいつもこいつも、死にたがりかよ」




「生き恥を味わったら、多少なりとも度胸がつくものだ」

「第九師団に蹴散らされた。それが、ちょっと前までのアンタの評価」

「そうとも。屈辱的だった。野に下り、海賊あつかいされたからな。自分を押し殺すことを、覚えなくてはならなかった。羞恥心と責任に押しつぶされて、何度、海に飛び込もうとしたか……若者には、そういう屈辱は理解できんだろう」

「まあな。恥を感じられるほど、名誉もしれない。オレは、ただの傭兵だ」




「ただの傭兵でも、ないだろう。素性を明かすつもりはないのか?」

「……オレは、バハル様の、養子だ」

「呪われ、『死貴族』となった男の……つまり、あの少女の……義理の兄弟」

「アリーチェは、義姉になる。ハーフ・エルフだから、代わりに……育ててもらえたのかもしれない」




「『ペイルカ』を襲ったんだが。恨まれても文句は言えない」

「恨みはしないよ。こうして、仲間になってくれたなら」

「そうかい?……仲間に対して、アンタは冷たいような気もする。メイウェイを……うちの上司を冷遇していた。才能に嫉妬してか、恐怖を抱いて」

「認めよう。劣等感を抱いてはいるよ。彼は戦場では負けなしのままだ。私と違ってね」




「……運が良かっただけだ。貴方のほうが、今では評価も高いだろう。野に下った身から、見事に故郷を奪還した」

「ストラウス卿や、多くの仲間たちのおかげではある。だが……勝つための努力はした。マイク・クーガーに……」

「強かっただろう。アレも、天才だった。帝国軍の登用システムが生んだ、最高の軍人のひとり。グラム・シェアが『外様』でなければ、私より階級が上だったかもしれない」

「政争は、どこにでも起きるものだね」




「そういうことになる。だが、我々はその呪わしい足かせを、またひとつ外せた」

「乾杯したくなるが、それはまた後日となりそうだ」

「当然だよ。カール・エッド少佐、私は……『西』に向かいたい。可能な限り、すみやかに。後発で部隊を送ってくれるのなら、今からでもいい」

「……じつは、『ツイスト』の学長殿からも連絡があってね」




「大学の、学長が?」

「ケットシーのばあさんとも、知り合いだってのかよ?」

「メイウェイと私がよく知っている男が、君の『西』への動きを察したらしい。協力したがっているようだよ。この展開を、読み切っていたらしい」

「……まさか。レイ・ロッドマン大尉」




「そうだ。連携していたのかと思ったが……違うか」

「ストラウス卿が『オルテガ』を陥落させたと聞く。それに対して、帝国軍の次の動きを読んだ結果だろう。『暇そうにしている私』が、どうせ動くだろうと。彼もまた、元・帝国軍人。東の最前線に、出て欲しくないと考える『プレイレス』人も多かろう」

「超がつくほど有能な人材たちが、ヒマだってよ。仲が悪いって、本当に良くないもんだ」

「耳が痛いが、少しは改善されつつある。私は……君らに後発で援軍を送ると約束しよう」




「ありがたい。それならば、すぐにも発てる」

「前線で戦力再編成するのは、かなり困難だろうが……」

「問題はない。私は……いわば、『控え』でね」

「ふむ。『控え』?」




「アインウルフ将軍に、もしものときがあったとき。臨時で指揮を執るという役割だった。崩れた陣容を、素早く再編成してまとめ上げる。それが、私の役割だ」

「慣れている、というわけか」

「その通り。編成や管理は得意だ。問題はないよ」

「嫉妬したくなる才能だ。私や、マイク・クーガーも、軍事的な師匠はいなかった」




「独力で、その力を得たのなら。私よりも、ずっと才能がある。不撓不屈の男には、あこがれを抱くよ」




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