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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その五百二十一


―――犬についてキュレネイの主張が語られたとき、双子たちは真剣な分析に夢中だった。

『りゅうのほむらの』を、このふたりも不完全ながら使えるんだけれどね。

完成度はキュレネイのそれに比べれば、ずっと劣るものだよ。

とくに今しがた目撃したものとは、大きな違いがあった……。




「魔力の制御が、上手かった」

「それもあるけれど。切り替えるような感覚があったわ」

「そう、そう。それだ。主要な属性の力を使いつつも……」

「必要なタイミングで、別の属性に切り替えている」




「ソルジェ兄さんは、野生の勘みたいなのでやっているけれど」

「キュレネイさんの場合だと、知性で模倣している……いや、もちろん」

「うん。実戦レベルではないから、だけどね」

「相手との差が、あまりにもあったもの。戦闘とは、言えないから……こっちが正解なのかは、分からない」




―――達人の耳は、乙女たちの発言を聞いてしまった。

キュレネイのファンにされてしまった彼にも、守りたい自尊心がある。

ククリとククルから低い評価を受けたとあっては、この乙女たちに力を見せたい。

でも、やめていた方がいいだろうね……。




―――ククリとククルは、とてつもなく賢いから。

知性だけならキュレネイよりも上、達人の動きはかなり読まれている。

初見で戦えば、それなりに善戦できたかもしれないけれど。

もう『遅い』よ、キュレネイに翻弄された動きを記憶されていたんだ……。




―――彼女たちも『ペイルカ』の戦士たちと共闘しつつ、西側の戦いに赴いていたから。

この達人の弟子や、同門の動きをかなり把握していたからね。

慣れてしまうには十分過ぎる回数、見てしまっているんだよ。

達人は疲れているし、戦わない方が良かった……。




「いい試合だったな!あの猟兵の戦鎌から生き延びるなんて、奇跡だぜ!」

「死ぬのに賭けていたんだが、さすがにやるな!」




―――生き延びただけでも守られる名誉が、『理不尽な強者との対戦』では許される。

達人はやはり達人ではあった、『りゅうのほむらの』を相手に生き延びたんだからね。

十分な実力者だと認められ、なおかつキュレネイの株も上がった。

これ以上、恥をかくかもしれない冒険はする必要もない……。




「……オレは、これでも『ペイルカ』じゃ一番か二番の剣術家だからな」

「負け惜しみはダセーぞ、おっさん」

「うるさい。お前よりは、強い!」

「剣だけならな。でも。魔術を使えば、たぶん勝てるぜ」




―――アーベルは脅すように、手のひらに火球を生み出した。

純粋な剣術では勝てなくても、アーベルが勝る可能性は十分にある。

戦いというものは、総合的なものだから。

そもそも達人の剣はキレイ過ぎて、あまり人を殺しにかかるものじゃない……。




「オレの方が、多く殺しているだろうしな」




―――それが『名誉』となる状況を、長く生き伸びている。

達人はそうじゃないよ、あくまでも武術を伝承するのが役目の競技者だ。

傭兵や兵士のそれとは違うもので、とても上品なものだからね。

『ペイルカ』の道場が目指す武術は、殺人術ではないというのがアーベルの分析だった……。




―――間違いでもない、一対一で競り合えば倒せるだろうけれど。

アーベルほど達人が、『戦場で役に立つ兵士』にはなれない。

メイウェイもその意見には同意していた、政争の具にされないよう沈黙を保ったけれどね。

武術の達人が、有能な殺人兵士になれるとは限らなかった……。




「イエス。おそらく、そっちのハーフ・エルフが『殺せる』。勝てないだろうけど、殺せるであります」

「有能さを、そういうもので比較するべきか……」

「傭兵ってのは、敵を殺してナンボじゃあるだろ。卑怯な戦い方も、やれる。オレは騎士じゃない。戦士でもないかも。兵士だ」

「……それに、お前はなりたがっているのか、少年?」




「まあな。帝国に、刃向かう。そういう立場に、『ハーフ・エルフ』がなった。甘さは消して、生き抜かなくちゃならねえ……そういう感覚までは、おっさんには分からん。殺しまくらねえと、オレは生き抜けねえんだよ。血塗られた道を、殺し続けるしか……笑えるぜ」

「ああ。分かってはやれないな」

「分かってもらいたいわけじゃない。でも。帝国が嫌いなら、戦ってくれ。殺すのがそこまで上手じゃなくても、十二分に強いからな」

「やるよ。少しばかり……価値観を変えてくれる出会いではあったから」




―――ソルジェを代表するように、武術家という方々は基本的に純粋だったよ。

惚れ込んだ『力』に対しては、とくに従順だ。

それこそくだんの犬のように、自らを納得させてしまった『力』にはどこまで従う。

キュレネイの『ファン』として、彼は生きてくれる……。




―――とてもありがたいことだ、ムダな政争で軍事力や結束が削られては大変だから。

『ペイルカ』の議員たちは悔しがるだろうけれど、それは『自由同盟』の損害にはならない。

キュレネイは『パンジャール猟兵団』の『番犬』らしく、いい仕事をしてくれた。

『りゅうのほむらの』の『宣伝』についてもね、『素晴らしい情報操作』だよ……。




―――この場にも、帝国軍に通じる者たちが紛れ込んでいる。

その種の者を、完全に排除するのは不可能だからね。

良くも悪くも『雑多』な軍が作られているから、全員の素性を保障するのは不可能さ。

そういう場で、『りゅうのほむらの』を見せた……。




―――わざわざ『ストラウス家の奥義』と、口にしてね。

高度な分析を行えば、『ソルジェとは若干違う』んだよ。

あくまで賢さ頼みで、野生的なソルジェのものとは違う。

しかも、攻めの手の回数までもね……。




―――それこそが、正しくもある。

『りゅうのほむらの』につけ入れるほどの刺客が、ソルジェに向けて放たれたとき。

キュレネイが見せた『りゅうのほむらの』対策を完璧にするほど、安心だよ。

とても高度に集中した世界において、ふたりの奥義は別物だからね……。




―――キュレネイ版『りゅうのほむらの』対策をするほど、ソルジェには通じない。

何ならキュレネイにも、通じないだろうね。

『対人』で使うべき奥義でもないし、実戦状態ならまだまだ冴えるから。

これは高度な『囮』でもあって、『番犬』らしい守りの仕事だった……。




「傭兵の少年。武術の達人を、あまりいじめるなであります。彼は、とても役に立ったのだから」

「アーベルだ。いつか、その技を真似してみせる男だぜ、キュレネイ・ザトー」

「イエス。やってみるがいいであります」

「……おうよ。奥義とやらを、こんなに目立たせるあたり……相当な食わせ物な気がする。もしかして、お前。いい仕事、したってやつか?」




「イエス。私は、いつも完璧な仕事を成し遂げるであります」





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