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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その五百二十


「ソルジェ・ストラウスなんて、大嫌いだ」

「知っているよ。ちょっと前に聞いたばかりかだからな」

「……おかしなハナシだ。間違っている。あいつ……だって、四人もヨメがいるとか」

「三人だな。一人は、亡くなられている」




「……え。マジか……そうか。そうだよな。そんなことも、ある」

「誰もが共感すべき点を、いくつか備えているものだ」

「かも、な。だけど……やっぱり。嫌いだ」

「好き嫌いまでは、口出しできん」




「仕事には、持ち込まねえよ。どんなに嫌いな相手でも、同じ側だ」

「そうだ。兵士であれば、それでいい」

「騎士とは違い、気高く戦う必要はないもんな!」

「魂の価値を高めるべきは、下を見ることではやしなえない」




「うっせーし。オレは、オレだ。やれるだけを、やってやるぜ」

「前向きで、よろしい」




―――アーベルは恋愛感情に気づかないフリをした、いや本気で気づいていないかも。

どちらでも、大差はないかことだよね。

そういう感情は表現して、伝わらなければ何も結びをもたらさないから。

最初からそういう生き方をしているわけじゃない、誰かとの縁を求めてはいない……。




「オレに必要なのは、もっと、強くなる。それだけだ。あいつの……技巧を、真似したい。でも……分かる。無理だな」

「時間をかければ、やれるかもしれない。私よりも適性は高いだろう」

「三つの属性の強化術を、同時に使うなんて……」

「コツが知りたいか、アーベル?」




「……知っているのかよ?あんたが……?」

「ああ。彼女自身に、君が自ら聞いてみるがいい」

「はあ?オレが、ソルジェ・ストラウスの部下に……聞けって?」

「向こうはとっくに気づいているぞ。行ってみるがいい。何かを得られるかもしれない」




―――アーベルは鼻を鳴らした、ソルジェ・ストラウスが嫌いならば。

その部下たちも、当然ながら嫌うべきである。

議論している黒髪の双子だとか、それよりも手前にいるキュレネイだとか。

嫌うべきではあるが、『強さ』を求めるのであれば……。




「たしかに、な」




―――座ったまま何かを考え込んでいる達人のとなりで、キュレネイは大鎌を構え直す。

アーベルについて、彼女は知らないからだ。

でも、くだんのメイウェイのとなりにいたのは把握済み。

しかも、『自由同盟』に参加すべき立場の『ハーフ・エルフ』であることは明白……。




「『りゅうのほむらの』について、学びたいでありますか?」

「さっきの技が、『りゅうのほむらの』というのか」

「イエス。ストラウス家の、奥義」

「……あんたは、ストラウス家じゃないだろう。そもそも、人間族じゃない……?」




―――だが、何族だろうか。

アーベルは迷ってしまう、『灰色の血』はなかなかに珍しい人種だからね。

多くの人種間のあいだの混血として生まれて、あらゆる種族的特徴が消え失せた。

とてつもなく珍しい血であり、自然の流れではあまり生まれない存在だから……。




「私は『灰色の血』であります。つまり、多くの種族間の混血」

「そんな、ことが起きるのかよ?」

「ノー。不自然かつ、作為的な『選別』で、作られた」

「作られたって……その、生み出された……って、意味かよ」




「イエス。デリカシーのない、若者よ」

「あ。そう、だな。そうだったかも。すまねえ。不愉快な気持ちに、させたいわけじゃなかったんだ」

「イエス。認めてやろう。その言い訳」

「……変な、ヤツじゃあるよな」




―――キュレネイはふたたび戦鎌を振り回しながら、視線の端で双子を見たよ。

ククリとククルとのあいだの、『共通点』を見つけていたんだ。

彼女たち三人は、誰もが人為的に生み出されたような立場だったから。

賢さや魔力的な性質だけじゃなく、そういう根っこの部分でも似ていた……。




「ハーフ・エルフとも、似ている」

「……ん。そうでありますか?」

「混じっているだろ。色々と。オレは、エルフと人間族のあいだのガキだが……あんたのトコロの家系にも、たぶん、いたんだろ。エルフとか。もちろん、人間族も……見た目は、人間族にいちばん近いから。良かったな」

「ノー。良くも悪くもない。知っておくといいであります。『灰色の血』の生まれが、清らかなはずもないと」




「どうかな。例外だって、あるだろ。少なくとも、あんたは……一流の戦士になった。どんな過酷な目に遭ったのかは、知らんけど。誰かに教えを受けただろ。おかげで、強くなっている」

「ふむ。たしかに。団長に拾ってもらえた私は、とても幸せ者でありますな」

「……ソルジェ・ストラウスに拾われたのか。だから、部下に」

「イエス。私は、ソルジェ・ストラウスの、『特別な犬』であります」




―――達人がせき込み、アーベルはドン引きしていた。

誤解を招きかねない発言ではあって、キュレネイはどこかそれを承知で使ってもいる。

女の子だからね、はしたない言葉であっても感情と知性で使いこなすよ。

それはいびつではあるが、特別な関係性をにおわせる言葉だったから……。




「犬って、何だ……そりゃ」

「そ、そうだぞ。そいつは、何やら、問題だ。いかがわしい気がするよな、少年!」

「誰だよ、おっさん」

「私と戦っていた者であります。戦いというか、演武でありますな」




「はあ。それは、分かっているが……他人だろ?」

「ま、まあ。そうだが。でも、ちょっと……いかがわしいから」

「ノー。健全な犬であります」

「そ、そういうものがあるのだろうか……っ」




「本人が健全だと言っているんだ。それでいいじゃねえか」

「イエス。物分かりのいいハーフ・エルフであります。うちのハーフ・エルフとは、かなり違う。マジメくんであります」

「マジメくん……ね。それでも、いいから。ちょっと、さっきの技のコツを、何かしら教えてくれよ」

「才能であります。これに、尽きる」




「マジメな答えだ。もっと、不真面目な欲しいね」

「では、『風』と『炎』だけ両立してみるといいであります」

「……たしかに。三つは、難しい。現状では……」

「若者は、なかなか強気だな。あれをふたつでも使いこなせれば、バケモノだぞ」




「ハーフ・エルフだからな。嫌われ者じゃあるが、魔力は使える」

「……やってみるがいい。オレは、やめておこう。ちょっと時間が、かかり過ぎそうだ」

「イエス。『りゅうのほむらの』を目指すべきかどうかは、ヒトによりけり」

「おっさんには向いていない。オレも、完璧なのはムリか……」




「ハッキリ言い過ぎで、マジメな答えであります」

「やってやるよ。あまのじゃくなんだ」

「初対面だと思うでありますが、その点についてはピンとくる。お前は、あまのじゃくそうであります」

「お互い様じゃねえの?素直さで、飯食ってるタイプじゃねえと思うが」




「ノー。犬は、とっても素直かつキュートな生き物であります」





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