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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その五百十七


―――ストラウス家の奥義、『りゅうのほむらの』。

それを修得するには、あまりにも多くの関門があった。

そもそも先天的な素養が大きくてね、それはつまり使える魔力の質による。

『炎』と『風』と『雷』、三大属性の魔力を使う資格を持っていなければ習得不可能……。




―――三大属性というものは、お互いに干渉し合う関係にある。

『炎』は『雷』を抑止するし、『雷』は『風』を妨害した。

『風』は『炎』を御する質があって、それらを同時に使うのは困難とされる。

先天的な属性の資質が無ければ、どうあがいても使うことさえ出来ない……。




―――極めて稀な、『炎』と『風』と『雷』の三大属性すべての素養を持っていること。

それらを同時に操る天才的なセンスと、たゆまぬ努力。

それらがすべてあったとしても、『まだまだ足りない』ものだ。

お手本とすべき『モデル』がれば、ようやくこの『竜騎士姫の発明』を修得可能……。




―――ソルジェに『りゅうのほむらの』を見せれた者は、人間にはいない。

ストラウス家の誰もが、それを修得可能だったわけじゃないからね。

教えてくれたのは、老竜アーレスそのひとだけ。

竜騎士姫の記憶を奪われていても、その奥義を再現して伝えてくれていたんだ……。




―――失伝寸前だった奥義は、ソルジェの孤独な研鑽によってようやく完成に至ったよ。

ストラウス家の人々が周りにいたとすれば、もう少し早めに完成したかもしれない。

これは極めて特殊な技巧であり、とても肉体に負担の大きな技巧でもある。

リエルでさえも真似するのは不可能、魔力の才能だけではやれないものだ……。




―――極めて強靭に鍛え上げられた肉体と、魔術と武術を一致させるセンスが必要。

宝石眼を有する森のエルフの姫君でさえ、その種の感覚を完璧には持ち得ないのさ。

キュレネイみたいな『ゴースト・アヴェンジャー』、あるいは『メルカ・コルン』。

そういった魔術と武術の才能と、北方野蛮人並みの体力があれば模倣もやれる……。




―――ソルジェが『お手本/モデル』として、その完成形を示したからだよ。

発明するよりも、誰かの行いを模倣する方がよほど簡単なのは当然だよね。

この三人が一緒に行動していたことで、良い交流と研鑽の機会が訪れていたんだ。

『りゅうのほむらの』を不完全ながらも、彼女たちの全員が使えるのだから……。




―――マジメなキュレネイ・ザトーが、絶好の機会を逃すはずもない。

魔術の理論的な知識において、ククリとククルはキュレネイよりも上だった。

知的な疑問に対しても、ソルジェに比べれば百倍以上の分かりやすい答えをもらえる。

ソルジェの直感的で野性的なアドバイスより、キュレネイの賢さを利用できたのさ……。




「フフフ。キュレネイさんが、やってみせてくれそう!」

「私たちとの特訓の成果を、ちゃんと披露してくれるんですね」




―――双子たちも、魔力を練り始めたキュレネイを楽しみに見ていた。

『りゅうのほむらの』を、『完璧な状態』で再現する。

それはまだ彼女たちでも、成し遂げられてはいない。

だが、キュレネイならばやれるのではないかと期待していた……。




「ソルジェ兄さんほど、完璧ではないだろうけれど……」

「『途中』の完成度であれば、私とククリも真似しやすくなりますからね」




―――ライバル的な視点もあるよ、ククリとククルも負けず嫌いだ。

『メルカ・コルン』としてのプライドもある、『ホムンクルス』は最高の戦士だから。

たとえキュレネイとの実力差が、この完成で離されたとしても。

すぐに追いついてやろうという決意を、ふたりは持っていた……。




―――いいライバル関係であり、いいチームだったわけだよ。

賢さと三大属性を使う猟兵を、ひとまとめにしていることは。

ソルジェの人材配置の能力は、本能に由来するものだろうけれど。

なかなかに、優れてはいた……。




―――天賦の才というものは、感覚で使うべきときも多い。

それに知的な努力も重ねれば、『りゅうのほむらの』さえ模倣した。

三つの種類の魔力がキュレネイの全身から、強烈にほとばしっていく。

まるで魔力の津波か、あるいは竜巻といったところか……。




「ま、魔術で、吹き飛ばしちまう気なのか……ッ」

「違うよ、アーベル。彼女は、魔力を収束させている。武術に、重ねるんだ」

「は、はあ!?そんなことが、やれるのか……いや、やれは、するだろうけど。み、三つの属性、ぜんぶを、ど、同時にだと!?」

「難易度が跳ね上がる。それを、やれるのが猟兵ということだ」




―――珍しくはあるし、間違いなく達人技以上の奥義になるけれど。

世界の各地に似たものは、もちろん存在していた。

他ならぬマルケス・アインウルフも、似た力を使えるんだからね。

『不完全な雷』の才能を使って、爆発しそうな筋力強化をギリギリで使いこなした……。




―――メイウェイも、その種の奥義に憧れてもいた時期がある。

しかし、メイウェイの魔力の才能はアインウルフよりもマシだった。

だからこそ、アインウルフの独自の奥義を真似できなかったとも言える。

嫉妬するほどの悔しさを抱くには、もうメイウェイに若さもなかった……。




「……ちく、しょうめ……ッ」

「嫉妬か。君も、いくつかの魔力の質を持つからな」

「オレにも、ああいう力が……」

「あこがれを持つがいい。そういうものを追いかけられる純粋さが、若さの特権でもある」




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