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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その五百十三


―――キュレネイの態度はボクたちとしては好ましいものだが、万事に有効とは限らない。

傭兵という立場はね、じつのところ過小評価されがちなんだよ。

戦争においては、傭兵たちはいつだって消耗品あつかいにされる。

『挽き肉機のなかにぶち込まれる存在』と、表現した者もいた……。




―――戦死する確率は、正規軍より多いなんてことも少なくない。

歩合制が採用されることだってあるからね、激しく戦わなければ稼げないんだ。

国家に対して忠誠心を持っている正規軍とは異なり、『捨て駒』として使われやすい。

軽んじられやすく、猟兵の場合も例外には漏れないものだった……。




―――『パンジャール猟兵団』の『番犬』として、キュレネイは考えている。

舐められるべきではない、ソルジェが英雄扱いされるのであれば。

『パンジャール猟兵団』も、スペシャルな存在であるべきだ。

ククリとククルは気づけないが、キュレネイは理解している……。




―――『ぺイルカ』の市民たちからなる市民軍は、どうやら傭兵を舐めていると。

ソルジェを将軍として評価していても、傭兵として見なしてはいない。

『番犬』からすれば、由々しき事態ではある。

商品価値を保つ必要を感じるのさ、評価は適切にしてもらうべきだからね……。




―――『ぺイルカ』の市民たちよりも、猟兵の指揮能力の方が高い。

政治家たちが軍事に口出しないように、分からせてやりたがっていた。

どこか威圧的な態度を取ったことで、罠にかかった間抜けがいる。

カール・エッド少佐も英雄扱いされているが、やはり政治的な闘争は粘りつく……。




―――議員たちの息のかかった戦士たちも、この会議の場に多数見受けられた。

『王無き土地』は知的かもしれないし、先進的かもしれない。

でもね、どんな政治体制であったとしても。

権力の取り合いというものは、絶対に起きるのがヒトの社会というものさ……。




「キュレネイ・ザトー殿。武器の携帯を所持してはいますが……その巨大な鎌は、どうにも挑発的な気がしてなりませんな」




―――若くて偉そうな男だったよ、かなりの筋肉質な人物。

議員たちが送り込んだ男であり、カール・エッド少佐の首につけられた鈴だ。

議員たちは危機感を募らせてはいてね、少佐の支配権が心配なんだよ。

臨時の首長も兼任しているけど、本来の支配者は議会であるべきだったから……。




「ふむ。そうでありますかな。大した武装では、ないつもりでありますが」

「まるで、戦場で用いる装備だ」

「……武器を持ち込むコトが、そんなに悪いかな。あちこちで戦闘をしているだけなのに」

「仲間同士なのだから、不安がる必要もないのに」




―――ククリとククルは、まだ世慣れはしていない。

悪意や侮蔑を、偽りの態度の下に隠してしまう者も多いものさ。

とくに権力者の手下には、よくいる。

この男が『キュレネイに挑みたがっている』とも、理解できないんだ……。




―――すべてはキュレネイの計算だよ、議員たちの勢いを折っておきたい。

議員たちは政治のエキスパートかもしれないが、我々に必要なのは軍事力だ。

『王無き土地』の軍人であるカール・エッド少佐は、議会に刃向かいたがらない。

それが悪いとは言えないけれど、軍事力だけに着目すれば弱体化してしまう……。




「警備に対して、ご不満でもおありかな。そうでなければ、それほどの武装をしないでしょう」

「ノー。悪くはない警備。完璧とまでは、言いがたいけれど。まあ、及第点と言ったところであります」

「ほう!及第点と。音に聞こえた、猟兵殿に評価されるとは……」

「皮肉のつもりではないであります。ただの客観的な評価。及第点であります。それ以下でも、それ以上でもない」




―――ケンカを売り合っているのは、お互いにだった。

この男は間違いを犯そうとしているんだよ、猟兵の能力を見誤っている。

キュレネイたちはね、『あまりにも活躍し過ぎている』からさ。

『戦果を水増しして報告している』、彼はそう信じてしまっていたんだ……。




―――しかも、キュレネイは『魔力を抑えていた』。

武術の腕も『弱く見せるように』、鋼の重さに体の動きが乱されるように演技している。

ククリとククルにも、自分を真似るように指示を出していたからね。

この男ほどの『ちょっとした武術の達人』なら、誤解させられる……。




「我々の腕前を、疑っておられるようですな!『パンジャール猟兵団』の猟兵殿よ、それはあまりにも失礼ではないでしょうかね!」

「ふむ。本当に悪気はないのでありますよ。ただの、事実を述べている。あなた方は、及第点止まりだと」




―――挑発すれば、ケンカを買ってくれる者も出てくれる。

この男は、議員たちの勢力拡大のために命令を下されていたからね。

隙があれば、カール・エッド少佐に『恥をかかせろ』というものさ。

猟兵が失態を見せたなら、猟兵を重用する少佐に対しても注文を出しやすくなる……。




―――組織内の権力争いというものは、どこか滑稽じみていて陰湿なものさ。

達人殿はキュレネイの罠を、半ば知りながらも自ら飛び込んでくれる。

自分ならば勝てるだろうと、大きな誤解をしたままね。

キュレネイはそこまで計算し、弱さを演じていた……。




「少佐。彼女たちは、私たちの腕前を、過小評価しておられるようだ!『ぺイルカ』の正規軍として、黙っておられませんよ!!」

「弱い犬ほど、よく吼えるでありますな」

「……っ!!小娘め……っ!!」

「上司にチクるのではなく、戦士であるのなら、その鋼で私に示してみればいいであります。評価が不服なら、力で、私に示すといい」




―――カール・エッド少佐も、ため息を吐いてはいたけれど。

キュレネイの計算については、しっかりと見抜いてくれていた。

『練習試合』を求めて来た達人殿に対して、あっさりと承諾を出す。

少佐は権力志向ではないものの、メイウェイが動く現状では軍事に集中したかった……。




「恥を、かかせてやるぞ、小娘」

「こちらのセリフでありますよ。及第点」




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