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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その五百


―――叩き上げの士官は、けっきょくのところ支配者には向かないだろうけれど。

若い兵士たちの上官として、適している美徳を多く持っていたのかもしれない。

メイウェイはその典型的な人物であり、アーベルにはいい手本にも見えた。

騎士に憧れてはいた少年であるが、彼もまた騎士には向いていないからね……。




―――それでも戦闘能力は十分であり、経験値もなかなかのものだ。

豪胆にバハルたちに従い、騎士道と泥臭い傭兵のどちらも学んでいる。

自己判断をやれたのさ、ある意味では自分が騎士に向いていないとあきらめた。

人生において、前向きなあきらめは人を成長させもするものだよ……。




―――アーベルは理解しつつある、自分が目指すべきは兵士だったとね。

それが最終的なゴールとして正しいかは、彼の資質と運命が決めることになるだろう。

どうあれ、今この瞬間はメイウェイに共感を覚えていた。

バハルの騎士道を継げない、ならば上等な力を得るための新しいモデルにすればいい……。




「『西』に向かったとき、帝国軍から攻撃された。オレがいたのが、理由だ」

「第九師団の生き残りに、襲われたというのか?」

「違う。あいつらは、まだ、オレたちを襲いはしなかった。助けてはくれなかったが、ただ見捨てただけだ。あいつらは、疲弊もしていたから、しょうがない」

「グラム・シェアは、良き兵を育てた。マイク・クーガーの方かもしれないが」




「ライザ・ソナーズさまだって、素晴らしいお方だぞ」

「亜人種を奴隷にして、あちこちに売り払っていたのに?」

「視野がせまいぜ。『ハーフ・エルフ』のアリーチェを、認めた。公的には、やれなかったとしても。どれだけの、覚悟が要ることだったのか……あれだけの覚悟は、きっと、あんたにもやれないだろうよ」

「痛い点を、突いてくれるね」




「強さや、力には、種類があるんだ。オレと、あんたみたいなヤツは、貴族にはなれない。本当の意味での、騎士道もな……雑兵でありたいと、願っている」

「私は、そこまで野心が枯れ果てたわけじゃない」

「なら、良かったよ。『西』に行きたくなる情報を、告げる価値があるってもんだ」

「君たちが襲撃された以上の、理由があると」




「オレだって、ガキじゃない。こんな時代で生き抜いていると、早めにガキを卒業しちまう」

「不幸にしてね。多感な時代を、乱世が消費した」

「『ハーフ・エルフ』に、そもそも幸せな時代なんてねえよ」

「それを創ろうと、『自由同盟』は戦おうとしている」




「勝てるとでも?……いや、勝てるのかもな。第九師団も、けっきょくつぶしやがった」

「それで。私を刺激するための情報は?」

「腕利きの帝国兵を、『西』に派遣されていた帝国軍の士官どもが、スカウトしまくっているぞ。そいつらは、『ぺイルカ』だろうが『トルス』だろうが、第九師団が支配してた都市国家を知り尽くしているんだ。そこまで言えば、分かるだろ」

「『ぺイルカ』を襲うための戦力を、編成しつつあるわけだ」




「その通り。興味が湧くんじゃないか?……オレはともかく。あんたや、あんたが今、お仕えしている上官殿だとか、『蛮族連合』にとって、無視すべき話題じゃないぞ。都市国家の連中は、かつての戦でもそうだったように。攻められると、自分の都市だけを守ろうとしてしまう。まともな兵力の運用なんて、やれやしないさ」

「それは『プレイレス』の市民たちを侮っているよ。彼らは学んだ。帝国軍に勝つためには、強調するしかないと」

「それでも、あんたは、こんな荒野にいやがるんだ。オレたちにも、手配書が来ているぞ。あんたを殺せば、ソルジェ・ストラウスの三分の一の金貨に化ける」

「三分の一か、軽んじられているね」




「油断し過ぎだし、さほど守れていない。オレに見つけられたのが、その証拠だ。ここの兵士どもは、たるんでいる。『ハーフ・エルフ』が、帝国軍の暗殺者になる可能性がゼロだとでも言うのかよ?オレたちは、ほとんどの場合で食うに困った貧乏人だぞ」

「金のためなら、何だってするか」

「そうだ。見てきたはずだろうに。たるんでいるのかな……アリーチェの、夢のせいで」

「悪くない夢だったがね。君が気に入っていないはずもない」




「決めつけるなよ、雇い主」

「評価をしてやるのも、雇い主の仕事だと思っているのでね」

「余計なお世話だ。あんたは……こうやって、オレを探っているんだろう」

「もちろん、それもある。私はね、部下と話し合いをするのが好きだ。多くを知れば、それだけ、頼り方も分かるからね」

「命令の仕方だろうが。そういう、甘さが……あんたの限界だ」




「ほら、話し合いの効果が出ただろう。私について、またひとつ学んだ。私は、兵士に対して同情的になる。貧しい者にもね。元々が、そういった出身だからだ。人間族に生まれただけで、毎晩のパンに困らないというわけではない。故郷は、領主の圧政により枯れた農地が広がっていた」

「小作農のせがれが、帝国市民権を求めて軍隊に。アインウルフに会えたのは、ついていたな。グラム・シェアの下に流れ着いていたら、きっと、あの『ぺイルカ』でソルジェ・ストラウスに斬られている」

「マイク・クーガーとは、似通っていたからね。またひとつ、君のことが分かったよ。バハル殿は、君に軍事的なセンスを見抜き、公的にはないにしろ……部隊を継承させたかったんだ。跡取りだな」

「軽々しく、そんな言葉で表現するなよ。オレは……バハルさまたちの養子に過ぎない。死んじまったアリーチェの、代わりだ」




「そうかな。教育を授けるという行いは、なかなかに高度な行いでね。伝統的な武術をしっかりと教え込まれている。武術には特有の哲学が組み込まれるものだが、君は自分に合った形へと変化できるほどに理解している。君は、かなり愛されていた。それゆえに、見事な忠誠心を獲得している。苛立つのは、自分にまだ自信を持てていないからだ」

「うるさい。わかったような口を……ッ」

「分かるさ。誰もが若い時分を過ごす。君は、証明したかったんだ。義理の両親たちに、期待してもらうのではなく、本当の意味で自分の力を認めてもらいたかった。証明する必要がある。だが、現実はそうならなかった。君は仲間を失った。それは継承した君の部隊。夢を見たはずだ。プライドとエゴを満たす、英雄譚を。私もそうだった。それなりに上手く行ったが、挫折をしている最中だ。共鳴すべき点はある。君よりも痛ましい点もな。どれだけの仲間を死なせたのか。長く生きた分だけ、背負わされる失望も重たくなるのだよ」

「……共鳴なんて、してやるものか。ただ、兵士らしく、脅威に備えろよ。今よりも、失望されたくないだろう。もっと仲間を死なせるハメになるのは、嫌だろうからな」




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