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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その四百八十三


 女メダルドの持つ複雑さを、パロムは考えないようにした。いい判断なのかもしれん。少なくとも、美味い菓子を食べるときには、深みのある謎になんて、関わる必要はないかもな。


「チーズクリームのスイーツですよ!!」


「フルーツが、いっぱい!!」


「ドライフルーツをチーズクリームに混ぜているんですよ。この屋敷、氷室があったので、社員たちが作ったんです!!」


 パロムはチーズクリームのケーキを切り分けていく。その所作は、手慣れたものだったな。『ストラウス商会』に参加したディアロスの戦士たちは、冒険心に満ちた者が多い。とくに、こんな最前線までやってくる者たちは、蛮勇なまでの猛者たちばかり。


 意外な特技というかね。


 このアイスケーキを作ったのが、最高の戦士たちの一員とは……。


 パロムもスイーツへの愛情を感じさせる手つきだった。刃物を使うとき、ヒトはそれに哲学を込めるものだ。どれだけ対象を大切にしているかが、よく伝わってくる。彼女はこのアイスケーキを愛していた。


「フフフ!!ディアロスの伝統的な夏のスイーツなのですが、こんなに南下しても作れたのには感動です!!まあ、私が作ったのではないですが……味は、保証できますよ!!何せ、チーズは、ユニコーンの背で発酵させたのですからね!!」


「なるほど、伝統がありそうだ」


「はい!!間違いのない味が、ここにあるのです!!社長から、どうぞ!!支配者から、食べるべきですからね!!」


「みんな同時でも構わんよ」


「いえいえ!!そういうわけには。支配者が、最初に口するのも伝統なのですっ!!」


「伝統なら、しょうがないか」


「お兄ちゃん、早く食べて!!私たちが、食べられないから!!」


「了解だ」


 小皿に美しく切り分けられたアイスケーキ。ニコニコとした顔のパロムから手渡された銀のフォークで裂いていくと、柔らかなクリームチーズに混じり、ドライベリーとナッツの感触と出会えたよ。


「フォークからでも、感触を楽しんでいただけるはずです!!」


「そうだな。形を壊さないように、ゆっくりと切り分けないと……」


「はい!ゆっくりと切っていくと、感触が明瞭になりますので!!このケーキの楽しみなんですよ!!どんなフルーツが入っているか……ドライフルーツだけでなく、チョコレートの欠片も混ぜてみたり、生のフルーツも混ぜたりと……」


「どんなのが入っているのか、探って当てるのも楽しみなんだね……っ!!」


「そうです!!」


「楽しみ!!」


 楽しみにされているなら、オレは推理を口にしない方がいいかも。妹の楽しみを奪ってはいけないからね。ミアの目がワクワクしている方が、お兄ちゃんには幸せなんだよ。上手に切れたケーキの一部に、フォークを突き刺した。


「やわらかそうっ!」


「ああ、やわらかいぞ」


 フワフワだったよ。底にいるクッキー生地以外は、雲のようにやわらかだった。口に運ぶ前に、こぼれちまいそうなほどに。それはみっともないから、大魔王になる男としてはしくじらないように一気に大きな口へとほおばった。


「入った!」


「うむ。入ったな!」


「入りましたね!!」


 乙女たちの声が重なって、耳を楽しませてくれる。氷室で冷やされたおかげで、クリームチーズたちはとても冷たくて、舌の体温が伝わると馴染むように融けていく。甘味がしっかりと利いていて、しぼってから時間が経っていないレモンのさわやかな香りと酸味が会っていたよ。


「すごく、美味い」


「ですよね!!ディアロスの伝統ケーキですから!!」


「お兄ちゃんが食べたから、私たちも食べていいよね?」


「もちろんです!!さあ、皆さんにも切り分けますからね!!どんどん、食べてみてください!!」


 たくさんの言葉で、解説したかったけれど。それは、ミアに任せるとしよう。お兄ちゃんよりも、よっぽどグルメさんだからね。


「いただきまーす!」


「では、いだきまーす……」


「フフフ。ディアロスの伝統を、思い知るといいのですよ!!」


 ミアとフリジアは、すぐに思い知っていた。


「うんまあああいいい!!」


「美味い……ッ」


「でしょうとも!!」


 夏の暑さのなか、このアイスケーキは本当にありがたいね。我々は、長時間の戦いをしていたから……こういう甘味に飢えてもいた。


「ドライフルーツと、砕いたナッツの食感が……もぐもぐ。とってもおいしくて、しかも!面白い……っ!!ベリーがね、たくさん……っ。ブルーベリーも、赤い甘味のあるベリーも……チーズとレモンの酸味と合わさって、甘酸っぱくて……おいしいが過ぎるっ!!」


「たくさんの乾燥ベリーを使うのも、特徴なのですよ!!」


「すごくいい特徴だと思う!!……もぐもぐ……土台の焼いたケーキも……もぐもぐ……酸味を受け止めてくれるような、香ばしさがあって……一気に、もぐもぐすると……すっごく、幸せな感触っ!!」


「そうです!!さすがは、社長の妹さまですね!!ディアロスのアイスケーキの楽しみ方を、とても理解しておられる!!」


「あちこち旅をして、鍛えたもん!」


「すばらしい……っ!!」


「ふ、ふむ。リアクションは大げさな気がするが、とても美味しいぞー」


「もっと感激していると顔と声に出してもいいんですよ、フリジア・ノーベル!!」


「わ、わかった……すごく、お・い・し・いッッッ!!!」


「ですよね!!」


「くうっ。ものすごく気持ち良さそうなドヤ顔を見せつけおって……ッ。そ、そのうち、『カール・メアー』式のケーキでも感動させてやるからな!!すごく、あれは、もちもちしているのだ!!」


「もちもち!……楽しみだよ、フリジア。もちもちのケーキ……ウフフ。でも、今は、こっちのケーキを……もんぐもぐ!!」



 


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